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|良性家族性新生児発作<br>早期ミオクロニー脳症<br>大田原症候群 | |良性家族性新生児発作<br>早期ミオクロニー脳症<br>大田原症候群 | ||
|若年欠神てんかん<br>若年ミオクロニーてんかん<br>進行性ミオクローヌスてんかん | |||
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| style="background-color:#d3d3d3" |乳児期 | | style="background-color:#d3d3d3" |乳児期 | ||
| style="background-color:#d3d3d3" |年齢と相関が低いもの | |||
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|早期乳児遊走性部分発作<br>West症候群<br>乳児ミオクロニーてんかん<br>良性乳児発作<br>Dravet症候群<br>非進行性ミオクロニー脳症 | |早期乳児遊走性部分発作<br>West症候群<br>乳児ミオクロニーてんかん<br>良性乳児発作<br>Dravet症候群<br>非進行性ミオクロニー脳症 | ||
|常染色体優性夜間前頭葉てんかん<br>家族性側頭葉てんかん<br>海馬硬化による内側側頭葉てんかん<br>Rasmussen症候群<br>視床下部過誤腫による笑い発作 | |||
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| style="background-color:#d3d3d3" |小児期 | | style="background-color:#d3d3d3" |小児期 | ||
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===診断=== | ===診断=== | ||
てんかんの診断に脳波検査は欠かせない。同じパターンを示す発作の確認と発作間歇期に発作波([[棘⋯徐波結合]]、[[鋭波―徐破結合]]、[[棘波]]、[[鋭波]]、[[徐波]]の群発などが記録されるとてんかんと考えられるが、てんかんであっても脳波異常が記録されないときもあるため、発作症状からてんかんが疑われる場合には時間をおいて繰り返し、脳波を記録する必要がある。24時間連続して記録するビデオ脳波同時記録は服薬をしない状態で記録するため、発作時脳波を記録できる可能性が高く、鑑別診断の有力な手段である。 | |||
てんかんの原因として[[脳奇形]]、[[脳腫瘍]]、[[脳出血]]、[[脳萎縮]]など脳の器質性疾患を見出すには MRI検査が有力であり,[[PET]]あるいは[[SPECT]]を併用し代謝、血流の変化する部位同定も焦点部位決定に役立つ。一部のてんかん類型では遺伝子検査が行われる。特に生後間もない時に発病するてんかん類型(表3)では鑑別診断に有力な検査手段となる。てんかんの発病を防止しようとする動きがあり、これには発病前の治療が必要性であり、ハイリスク児同定に遺伝子検査が有力な手段となる<ref name=ref11>'''兼子直、他'''<br>新しい抗てんかん薬の開発とてんかんの発病防止戦略<br>''最新医学'' 70;1044-1050, 2015.</ref>。 | |||
==病態生理== | ==病態生理== | ||
てんかんの原因には遺伝性、脳血管性、外傷性、腫瘍性、変性、感染症性などがあるが、これにより神経細胞の抑制の低下または[[興奮性]] | てんかんの原因には遺伝性、脳血管性、外傷性、腫瘍性、変性、感染症性などがあるが、これにより神経細胞の抑制の低下または[[興奮性]]の亢進により神経細胞が興奮し、てんかん発作を起こす。てんかんを起こすようになる脳内の変化を[[てんかん原性]](epileptogenesis)といい、発作を繰り返し起こすようになる変化を[[発作原性]](ictogenesis)というが、それぞれの過程が脳内に成立する時期と期間が存在することが分かってきた<ref name=ref22><pubmed>24045013</pubmed></ref> <ref name=ref23><pubmed>19020039</pubmed></ref>。神経細胞自体の興奮性は細胞内外の[[イオン]]濃度の変化、[[グリア細胞]]からの影響を受ける。 | ||
遺伝子変異などにより、種々の変化が[[シナプス]]を中心にダイナミックな変化が起こる。神経[[細胞膜]] | 遺伝子変異などにより、種々の変化が[[シナプス]]を中心にダイナミックな変化が起こる。神経[[細胞膜]]の各種チャネルの機能異常が起こり、神経細胞内外のイオン濃度が変化し、神経細胞は脱分極する。その結果、細胞外の[[wikipedia:ja:|カリウム]]イオン濃度上昇と[[カルシウム]]イオン濃度の減少を引き起こすが、[[カルシウム]]イオンの減少は[[アストロサイト]]のカルシウムシグナリングを活性化、グルタミン酸の遊離を誘発する。また、興奮したシナプスからあふれ出たグルタミン酸もアストロサイトの[[グルタミン酸受容体]]と結合し、カルシウムシグナリングを活性化させる。結果として[[突発的脱分極シフト]](paroxysmal deporalization shift)が起こり、それが周囲の神経細胞群の興奮を引き起こし、発作発射にいたる。この領域の研究の進展は目覚しく、新たな知見が集積されつつある<ref name=ref20><pubmed>25047565</pubmed></ref>。 | ||
==治療== | ==治療== | ||
治療は[[抗てんかん薬]]による薬物療法が主流で、薬剤で発作抑制が困難な場合、外科治療の可能性が探られる。小児では食餌療法([[ケトン食療法]]など)なども試みられ、外科治療困難例に対しては迷走神経刺激療法も開始されている。 | |||
===治療薬選択=== | ===治療薬選択=== | ||
治療薬は発作型により選択されるが、全般発作に対しては[[バルプロ酸]] | 治療薬は発作型により選択されるが、全般発作に対しては[[バルプロ酸]](VPS)、[[エトサクシミド]](ETS)、[[ラモトリジン]](LTG)、[[レベチラセタム]](LEV)、[[ソニサミド]](ZNS)などが選択され、部分発作に対しては[[カルバマゼピン]](CBZ)、[[トピラメート]](TPM)、レベチラセタム、ソニサミドなどが選択される。[[ドラヴェー症候群]]に[[スティリペントール]]が、[[レノックス・ガストー症候群]]には[[ルフイナミド]]が使用できるようになった。[[ガバペンチン]]は小児難治てんかんに効果を示すときがあり、[[クロバザム]]は全般、部分の両方に付加投与として処方されることが多い。 | ||
薬剤選択には副作用も考慮すべき要因である。容量依存性服作用はすべての抗てんかん薬で存在するため、投与量、血中濃度に留意する必要があるが、各薬剤特有の副作用が薬剤選択に重要である。[[フェニトイン]]は歯肉増殖、[[wikipedia:ja:|多毛症]]のゆえに女性には避けるべきで、ソニサミド、トピラメートでうつ症状が出現することがあり、レベチラセタムでは行動異常が、ラモトリジンでは重篤な発疹が出現することがある。 | |||
抗てんかん薬には[[発心]]を起こすものがあるが、[[HLA]]領域の[[遺伝子多型]]によることが明らかとなり、予測可能性が出てきた<ref name=ref21>'''吉田秀一、ら'''<br>遺伝情報に基づいた個別化治療<br>''医学のあゆみ'' 322;951-955, 2010.</ref>。 | |||
===個別化治療=== | ===個別化治療=== | ||
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NはN端をCはC端を示し、数字は変異の位置を示す。<ref name=ref10><pubmed>24422737</pubmed></ref>。]] | NはN端をCはC端を示し、数字は変異の位置を示す。<ref name=ref10><pubmed>24422737</pubmed></ref>。]] | ||
てんかんの遺伝情報に基づいた個別化治療の戦略はてんかんの病態(例えば、[[イオンチャネル]]の異常)、その異常に対応する抗てんかん薬、その抗てんかん薬の副作用を考慮し薬剤を選択する。一方、薬物代謝酵素、薬剤排泄トランスポーターの遺伝子多型からその個人の適量を決定する、という個別化治が示されている<ref name=ref21 /> | てんかんの遺伝情報に基づいた個別化治療の戦略はてんかんの病態(例えば、[[イオンチャネル]]の異常)、その異常に対応する抗てんかん薬、その抗てんかん薬の副作用を考慮し薬剤を選択する。一方、薬物代謝酵素、薬剤排泄トランスポーターの遺伝子多型からその個人の適量を決定する、という個別化治が示されている<ref name=ref21 />。 | ||
表4は抗てんかん薬が基質となる代謝酵素([[シトクロムP450]];CYPs)分子種を示しているが、CYP3A4、CYP2C9、CYP2C19が抗てんかん薬の代謝に重要であり、各CYPには遺伝的多型が存在し代謝能力が異なる(extensive、intermediate、poor metabolizer)。日本人ではCYP2C19のpoor metabolizerは約18%、CYP2C9は約7%がpoor metabolizerである。 | |||
薬剤選択に関してその一例として図1に[[GABA受容体]]の膜展開図を示す<ref name=ref10 />。膜の上は細胞外、下は細胞内を示す。BABRA1遺伝子上の4の位置(A322D)に変異があるとバルプロ酸が第一選択役となり、GABRG2の1の位置(R43Q)に変異があるとバルプロ酸、トピナ、バルビツール剤が選択される。GABRG2の変異位置がK289Mの場合、トピナ、バルビツール剤、[[ベンゾジアゼピン]]、ガバペンチンなどが選択され、Q351X変異を持つ症例では抗てんかん薬に抵抗性を示し、変異がR139Gの症例は熱性けいれんの可能性があり、抗てんかん薬が不要かもしれない<ref name=ref10 />。 | 薬剤選択に関してその一例として図1に[[GABA受容体]]の膜展開図を示す<ref name=ref10 />。膜の上は細胞外、下は細胞内を示す。BABRA1遺伝子上の4の位置(A322D)に変異があるとバルプロ酸が第一選択役となり、GABRG2の1の位置(R43Q)に変異があるとバルプロ酸、トピナ、バルビツール剤が選択される。GABRG2の変異位置がK289Mの場合、トピナ、バルビツール剤、[[ベンゾジアゼピン]]、ガバペンチンなどが選択され、Q351X変異を持つ症例では抗てんかん薬に抵抗性を示し、変異がR139Gの症例は熱性けいれんの可能性があり、抗てんかん薬が不要かもしれない<ref name=ref10 />。 |