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脳梗塞の神経学的症状は、突発完成するものから、緩徐に進行するものまで多彩である。したがって、どのような神経学的症状がいつから出現し、現在までの症状の増強・減弱に関して聴取する必要がある。さらに脳梗塞発症前には[一過性脳虚血発作]]([[TIA]]:transient ischemic attack)が先行していることがあり、TIAの把握も必要である。 | 脳梗塞の神経学的症状は、突発完成するものから、緩徐に進行するものまで多彩である。したがって、どのような神経学的症状がいつから出現し、現在までの症状の増強・減弱に関して聴取する必要がある。さらに脳梗塞発症前には[一過性脳虚血発作]]([[TIA]]:transient ischemic attack)が先行していることがあり、TIAの把握も必要である。 | ||
脳梗塞の診断には神経学的診察に基づく身体所見の検出が必要である。脳梗塞は[[片麻痺]]・[[感覚障害]]・[[運動失調]]・[[顔面麻痺]]・[[眼球運動障害]]・[[視野障害]]・[[嚥下障害]]・[[失語]]・[[構音障害]]など多彩な症状を示す。脳卒中の早期検出にむけて、“Act FAST”というキャンペーンが推進されている。これは脳卒中の主要症状が前述の顔面麻痺、片麻痺、[[ | 脳梗塞の診断には神経学的診察に基づく身体所見の検出が必要である。脳梗塞は[[片麻痺]]・[[感覚障害]]・[[運動失調]]・[[顔面麻痺]]・[[眼球運動障害]]・[[視野障害]]・[[嚥下障害]]・[[失語]]・[[構音障害]]など多彩な症状を示す。脳卒中の早期検出にむけて、“Act FAST”というキャンペーンが推進されている。これは脳卒中の主要症状が前述の顔面麻痺、片麻痺、[[言語障害]](構音障害や失語をふくむ)であり、これらのうちの一つでもその症状が確認できた場合には脳卒中である可能性が72%あり、[[シンシナティ病院前脳卒中スケール]](CPSS)として脳卒中病院前救護に活用されている。 | ||
脳梗塞の重症度は[[National Institutes of Health Stroke | 脳梗塞の重症度は[[National Institutes of Health Stroke Scale]](NIHSS)スコア(表1)や[[Japan Stroke Scale]](JSS)スコアによって評価される。NIHSSスコアは神経学的診察の簡易版とも考えられ、コメディカルによるスコアも専門医によるものと強い相関が得られることが示されている。したがって、非専門医には是非とも習得されることを推奨したい。NIHSSは各地で開催されているImmediate Stroke Life Support(ISLS)コースでも実地練習を行っており、さらに詳しくは[https://learn.heart.org/nihss.aspx American Stroke Association]のサイトにてe-learningで学ぶことができる。 | ||
{| class="wikitable" | {| class="wikitable" | ||
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|1a.意識水準 | |1a.意識水準 | ||
| | |□0:完全覚醒 □1:簡単な刺激で覚醒<br>□2:繰り返し刺激、強い刺激で覚醒 □3:完全に無反応 | ||
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|1b.意識障害ー質問<br>(今月の月名及び年齢) | |1b.意識障害ー質問<br>(今月の月名及び年齢) | ||
| | |□0:両方正解 □1:片方正解 □2:両方不正解 | ||
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|1c.意識障害ー従命<br>(開閉眼、「手を握る・開く」) | |1c.意識障害ー従命<br>(開閉眼、「手を握る・開く」) | ||
| | |□︎0:両方正解 □︎1:片方正解 □︎2:両方不可能 | ||
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|2.最良の注視 | |2.最良の注視 | ||
| | |□︎0:正常 □︎1:部分的注視視野 □︎2:完全注視麻痺 | ||
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|3.視野 | |3.視野 | ||
| | |□︎0:視野欠損なし □︎1:部分的半盲<br>□︎2:完全半盲 □︎3:両側性半盲 | ||
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|4.顔面麻痺 | |4.顔面麻痺 | ||
| | |□︎0:正常 □︎1:軽度の麻痺<br>□︎2:部分的麻痺 □︎3:完全麻痺 | ||
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|5.上肢の運動(右)<br> *仰臥位のときは45度右上肢<br> | |5.上肢の運動(右)<br> *仰臥位のときは45度右上肢<br> □︎9:切断、関節癒合 | ||
| | |□︎0:90度*を10秒保持可能(下垂なし)<br>□︎1:90度*を保持できるが、10秒以内に下垂<br>□︎2:90度*の拳上または保持ができない<br>□︎3:重力に抗して動かない<br>□︎4:全く動きがみられない | ||
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|上肢の運動(左)<br> *仰臥位のときは45度左上肢<br> | |上肢の運動(左)<br> *仰臥位のときは45度左上肢<br> □︎9:切断、関節癒合 | ||
| | |□︎0:90度*を10秒保持可能(下垂なし)<br>□︎1:90度*を保持できるが、10秒以内に下垂<br>□︎2:90度*の拳上または保持ができない<br>□︎3:重力に抗して動かない<br>□︎4:全く動きがみられない | ||
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|6.下肢の運動(右)<br> | |6.下肢の運動(右)<br> □︎9:切断、関節癒合 | ||
| | |□︎0:30度を5秒間保持できる(下垂なし)<br>□︎1:30度を保持できるが、5秒以内に下垂<br>□︎2:重力に抗して動きがみられる<br>□︎3:重力に抗して動かない<br>□︎4:全く動きがみられない | ||
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|下肢の運動(左)<br> | |下肢の運動(左)<br> □︎9:切断、関節癒合 | ||
| | |□︎0:30度を5秒間保持できる(下垂なし)<br>□︎1:30度を保持できるが、5秒以内に下垂<br>□︎2:重力に抗して動きがみられる<br>□︎3:重力に抗して動かない<br>□︎4:全く動きがみられない | ||
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|7.運動失調<br> | |7.運動失調<br> □︎9:切断、関節癒合 | ||
| | |□︎0:なし □︎1:1肢 □︎2:2肢 | ||
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|8.感覚 | |8.感覚 | ||
| | |□︎0:障害なし □︎1:軽度から中等度 □︎2:重度から完全 | ||
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|9.最良の言語 | |9.最良の言語 | ||
| | |□︎0:失語なし □︎1:軽度から中等度<br>□︎2:重度の失語 □︎3:無言、全失語 | ||
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|10.構音障害<br> | |10.構音障害<br> □︎9:挿管または身体的障壁 | ||
| | |□︎0:正常 □︎1:軽度から中等度 □︎2:重度 | ||
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|11.消去現象と注意障害 | |11.消去現象と注意障害 | ||
| | |□︎0:異常なし<br>□︎1:視覚、触覚、聴覚、視空間、または自己身体に対する不注意、<br> あるいは1つの感覚様式で2点同時刺激に対する消去現象<br>□︎2:重度の半側不注意あるいは2つ以上の感覚様式に対する半側不注意 | ||
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