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''京都大学''<br> | ''京都大学''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年3月3日 原稿完成日:2016年月日<br> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年3月3日 原稿完成日:2016年月日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/ | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0048432 定藤 規弘](自然科学研究機構生理学研究所 大脳皮質機能研究系)<br> | ||
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==生後初期における他者の視線への感受性== | ==生後初期における他者の視線への感受性== | ||
視線への感受性は生後かなり初期から見られ、たとえば平均生後72時間の乳児が対提示された2つの顔写真のうち、こちらを向いている顔を、左右のどちらかを見ている顔より選好したという報告がある<ref name=ref2 />。さらに平均生後36.6時間の乳児は、目を開いている大人の女性の写真と、同じ女性が目を閉じている写真を別々に見せられた場合、前者を長く見たことも報告されている<ref name=ref4>'''Batki, A., Baron-Cohen, S., Wheelwright, S., Connellan, J., & Ahluwalia, J.'''<br>Is there an innate gaze module? Evidence from human neonates. <br>''Infant Behavior and Development'', 23, 223-229. 2000</ref>。 | |||
==相互注視== | ==相互注視== | ||
互いの目と目を見つめ合うこと、あるいはアイコンタクトを取り合うことを[[相互注視]](mutual gaze)と呼ぶ。生後4週齢ごろから母子のアイコンタクトは増加し、生後2ヶ月目から、単純な母子間のアイコンタクトは、よりアクティブなもの(表情の動きなどを含んだもの)に変化していく<ref name=ref11><pubmed>11881763</pubmed></ref> <ref name=ref20 />。こうした社会性の芽生えの時期を「[[2ヶ月革命]]」または「[[微笑み革命]]」と呼び、乳児はこのころ、それまで見せていた[[生理的微笑]]から、他者との関わりの中で産出される[[社会的微笑]]を見せるようになる<ref name=ref15>'''Rochat, P.'''<br>The infant's world. <br>Cambridge, MA: ''Harvard University Press''. 2001</ref>。 | |||
==社会的随伴性における見つめ合い== | ==社会的随伴性における見つめ合い== | ||
乳児は生後2ヶ月ごろから、相互交渉中の他者からの社会的随伴性に感受性を示し始めると言われている。乳児の社会的随伴性を調べる方法として、主なものは[[スティルフェイスパラダイム|スティルフェイス(Still Face)パラダイム]]と[[ダブルビデオパラダイム|ダブルビデオ(DV Live-Replay)パラダイム]]である。いずれのパラダイムにおいても、非随伴的な働きかけを行う相互交渉相手に対し、乳児の視線が著しく減少することが知られている。 | |||
===スティルフェイスパラダイム=== | ===スティルフェイスパラダイム=== | ||
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==ヒト以外の種における見つめ合い== | ==ヒト以外の種における見つめ合い== | ||
2000年から[[wikipedia:ja:京都大学霊長類研究所|京都大学霊長類研究所]]において、[[チンパンジー]]認知発達研究プロジェクトが進められた。このプロジェクトでは3組のチンパンジー母子を対象にさまざまな縦断的な観察と実験が行われてきた。母親に育てられ、チンパンジーの社会で暮らすチンパンジーの子どもの認知発達が、ヒトと直接的に比較できる発達心理学的手法を用いることによって明らかにされている。 | |||
第一に、チンパンジー新生児は、ヒト新生児と同様に、母親の顔とそれ以外のチンパンジーの顔(平均顔のチンパンジーと他個体の顔)を区別することが可能であることが報告された。この研究では、生後0ヶ月から、チンパンジー乳児にこれらの顔写真をとりつけたCCD[[カメ]]ラを左右に動かして見せ、追従反応が起きるか調べた。その結果、生後1ヶ月の時点で母親に対する追従反応が増加することが分かった<ref name=ref17>'''Tomonaga, M., Tanaka, M., Matsuzawa, T., Myowa-Yamakoshi, M., Kosugi, D., Mizuno, Y. U. U., et al. ''' <br>Development of social cognition in infant chimpanzees (Pan troglodytes): Face recognition, smiling, gaze, and the lack of triadic interactions<br>''Blackwell Publishing Asia Pty Ltd.'' 2004</ref>。 | |||
また、生後10~32週齢のチンパンジー乳児に、こちらを見ているヒトの顔と見ていないヒトの顔を対提示すると、チンパンジー乳児は前者を見るというヒト乳児と同じ結果を示した<ref name=ref17 />。さらにチンパンジー乳児においても、生後2ヶ月ごろから生理的微笑が消え、社会的微笑が見られ始めることも報告された。また、見つめ合いはヒトの母子に見られるだけでなく、チンパンジーの母子間でも見られ、たとえばTomonaga et al. (2004)では生後0~2ヶ月の間に母子間の見つめ合いは増加し、母親による揺らしてあやすような身体的な関わりの増加とともに減少するこことが報告されている<ref name=ref2><pubmed>16060808</pubmed></ref>。 | |||
==参考文献== | ==参考文献== | ||
<REFERENCES /> | <REFERENCES /> |