「外国語学習」の版間の差分

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== 展望:外国語学習への脳科学的アプローチ ==
== 展望:外国語学習への脳科学的アプローチ ==


==== 繰り返し接触による潜在学習 ====
=== 繰り返し接触による潜在学習 ===
 外国語学習においては,'''繰り返し(repetition)'''が言語習得に重要であるということは昔から言われていることである。反復接触が,上で述べた統語的プライミングに及ぼす影響について調査した実験がある。Kaschak, Loney, and Borreggine (2006) は,Pickering and Branigan (1998) の文完成課題を用いて,刺激文への接触回数が[[プライミング効果]]に与える影響を調査した<ref>'''Pickering, M. J., & Branigan, H. P.'''<br>The representation of verbs: Evidence from syntactic priming in language production<br>''Journal of Memory and Language, 39, 633–651'': 1998 </ref>。その結果,英語母語話者の場合,刺激への接触回数が増えにつれてプライミング率が高くなった。また,Morishita and Yokokawa (2012) <ref>'''Morishita, M., & Yokokawa, H.'''<br>The cumulative effects of syntactic priming in written sentence production by Japanese EFL learners<br>''Poster session presented at the annual conference of the American Association for Applied Linguistics (AAAL), Boston, MA'': 2012</ref>も日本人英語学習者を対象に同様の実験を行ったところ,全体として,母語話者と同様の結果得られ,自動的 (automatic) で無意識的 (implicit) なプロセスであるというPickering and Branigan (1999) の主張を支持する結果となった<ref>'''Pickering, M. J., & Branigan, H. P.'''<br>Syntactic priming in language production<br>''Trends in Cognitive Sciences, 3(4), 136–141'': 1999 </ref>。しかし,20回程度の接触では,低熟達度群には大きな影響は見られなかったと報告しており,学習者の熟達度が統語表象の内在化に影響することが示唆される。
 外国語学習においては,'''繰り返し(repetition)'''が言語習得に重要であるということは昔から言われていることである。反復接触が,上で述べた統語的プライミングに及ぼす影響について調査した実験がある。Kaschak, Loney, and Borreggine (2006) は,Pickering and Branigan (1998) の文完成課題を用いて,刺激文への接触回数が[[プライミング効果]]に与える影響を調査した<ref>'''Pickering, M. J., & Branigan, H. P.'''<br>The representation of verbs: Evidence from syntactic priming in language production<br>''Journal of Memory and Language, 39, 633–651'': 1998 </ref>。その結果,英語母語話者の場合,刺激への接触回数が増えにつれてプライミング率が高くなった。また,Morishita and Yokokawa (2012) <ref>'''Morishita, M., & Yokokawa, H.'''<br>The cumulative effects of syntactic priming in written sentence production by Japanese EFL learners<br>''Poster session presented at the annual conference of the American Association for Applied Linguistics (AAAL), Boston, MA'': 2012</ref>も日本人英語学習者を対象に同様の実験を行ったところ,全体として,母語話者と同様の結果得られ,自動的 (automatic) で無意識的 (implicit) なプロセスであるというPickering and Branigan (1999) の主張を支持する結果となった<ref>'''Pickering, M. J., & Branigan, H. P.'''<br>Syntactic priming in language production<br>''Trends in Cognitive Sciences, 3(4), 136–141'': 1999 </ref>。しかし,20回程度の接触では,低熟達度群には大きな影響は見られなかったと報告しており,学習者の熟達度が統語表象の内在化に影響することが示唆される。


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