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例えば、シナプス前終末における[[カリウムチャネル]]の発現増加と活性化速度の上昇によって、シナプス前終末の活動電位幅が短縮し(図2)、高頻度での活動電位発生が可能となる<ref name=ref33><pubmed> 23633571 </pubmed></ref>。活動電位幅の短縮はCa<sup>2+</sup>流入のタイミングを早めシナプス応答の立ち上がりを早くするが、一方でカルシウムチャネルの開口数の減少と開口時間の短縮をもたらし、シナプス前末端へのCa<sup>2+</sup>流入量の減少によって小胞放出確率を低下させる。しかし、この[[放出確率]]の減少は、生後発達に伴ってCa<sup>2+</sup>センサーがカルシウムチャネルクラスターに接近して、より高濃度のCa<sup>2+</sup>を感知することによって部分的に補償される<ref name=ref18/><ref name=ref34><pubmed> 15843616 </pubmed></ref>。シナプス強度は、更に[[アクティブゾーン]]の個数<ref name=ref9/>と即時[[放出可能プール]]サイズが増大することによって維持される<ref name=ref35><pubmed> 11483715 </pubmed></ref>。放出確率の減少と放出可能プールの増大は、1回のシナプス伝達で消費されるシナプス小胞の割合を低く抑え、高頻度でのシナプス伝達の持続を可能とする。 | 例えば、シナプス前終末における[[カリウムチャネル]]の発現増加と活性化速度の上昇によって、シナプス前終末の活動電位幅が短縮し(図2)、高頻度での活動電位発生が可能となる<ref name=ref33><pubmed> 23633571 </pubmed></ref>。活動電位幅の短縮はCa<sup>2+</sup>流入のタイミングを早めシナプス応答の立ち上がりを早くするが、一方でカルシウムチャネルの開口数の減少と開口時間の短縮をもたらし、シナプス前末端へのCa<sup>2+</sup>流入量の減少によって小胞放出確率を低下させる。しかし、この[[放出確率]]の減少は、生後発達に伴ってCa<sup>2+</sup>センサーがカルシウムチャネルクラスターに接近して、より高濃度のCa<sup>2+</sup>を感知することによって部分的に補償される<ref name=ref18/><ref name=ref34><pubmed> 15843616 </pubmed></ref>。シナプス強度は、更に[[アクティブゾーン]]の個数<ref name=ref9/>と即時[[放出可能プール]]サイズが増大することによって維持される<ref name=ref35><pubmed> 11483715 </pubmed></ref>。放出確率の減少と放出可能プールの増大は、1回のシナプス伝達で消費されるシナプス小胞の割合を低く抑え、高頻度でのシナプス伝達の持続を可能とする。 | ||
聴覚獲得時期前後でシナプス小胞の開口放出を担う電位依存性[[カルシウムチャネル]]サブタイプの構成にも変化が生じる。生後7日齢シナプス前終末では[[Cav2.1]](P/Q型)、[[Cav2.2]](N型)、[[Cav2.3]](R型)が共存してシナプス伝達を担っているが、生後2週齢までにCav2.2とCav2.3は消失しCav2.1だけが残る<ref name=ref36><pubmed> 10627581 </pubmed></ref>。またシナプス前終末内の[[ | 聴覚獲得時期前後でシナプス小胞の開口放出を担う電位依存性[[カルシウムチャネル]]サブタイプの構成にも変化が生じる。生後7日齢シナプス前終末では[[Cav2.1]](P/Q型)、[[Cav2.2]](N型)、[[Cav2.3]](R型)が共存してシナプス伝達を担っているが、生後2週齢までにCav2.2とCav2.3は消失しCav2.1だけが残る<ref name=ref36><pubmed> 10627581 </pubmed></ref>。またシナプス前終末内の[[カルシウム結合タンパク質]] calretininの発現が増加して、シナプスの短期可塑性に影響を与える<ref name=ref37><pubmed> 15355314 </pubmed></ref>。 | ||
さらに、シナプス小胞の回収・充填機構でも生後発達変化が生じる。生後7日齢ではCa<sup>2+</sup>依存性エンドサイトーシスに[[カルモジュリン]]が関与するが<ref name=ref38><pubmed> 19633667 </pubmed></ref>、生後14日齢ではカルモジュリンは関与しなくなり、より低親和性のCa<sup>2+</sup>センサーによる機構に置換される<ref name=ref28/>。また小胞型グルタミン酸トランスポーター[[VGLUT1|VGluT1]]の発現が増加して<ref name=ref29/>、小胞へのグルタミン酸充填が加速される<ref name=ref30/>。 | さらに、シナプス小胞の回収・充填機構でも生後発達変化が生じる。生後7日齢ではCa<sup>2+</sup>依存性エンドサイトーシスに[[カルモジュリン]]が関与するが<ref name=ref38><pubmed> 19633667 </pubmed></ref>、生後14日齢ではカルモジュリンは関与しなくなり、より低親和性のCa<sup>2+</sup>センサーによる機構に置換される<ref name=ref28/>。また小胞型グルタミン酸トランスポーター[[VGLUT1|VGluT1]]の発現が増加して<ref name=ref29/>、小胞へのグルタミン酸充填が加速される<ref name=ref30/>。 | ||
一方、シナプス後細胞においては、[[NMDA型受容体]]の発現がシナプス入力依存的に減少し<ref name=ref39><pubmed> 11331363 </pubmed></ref>、シナプス後電流は主としてAMPA型受容体によって担われるようになる。またAMPA型受容体サブタイプのうちGluA1が減少し、開閉キネティクスの速いGluA4の比率が上昇する<ref name=ref22/>。また単一シナプス小胞の伝達物質によって生じる微小シナプス電流の振幅も増大する<ref name=ref23/>。これらの生後発達変化はいずれも高速・高信頼性のシナプス伝達の達成に向けられている。 | 一方、シナプス後細胞においては、[[NMDA型受容体]]の発現がシナプス入力依存的に減少し<ref name=ref39><pubmed> 11331363 </pubmed></ref>、シナプス後電流は主としてAMPA型受容体によって担われるようになる。またAMPA型受容体サブタイプのうちGluA1が減少し、開閉キネティクスの速いGluA4の比率が上昇する<ref name=ref22/>。また単一シナプス小胞の伝達物質によって生じる微小シナプス電流の振幅も増大する<ref name=ref23/>。これらの生後発達変化はいずれも高速・高信頼性のシナプス伝達の達成に向けられている。 | ||
== シナプス伝達の調節機構 == | == シナプス伝達の調節機構 == | ||