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 Ser97、Ser130のリン酸化は、DARPP-32分子内メカニズムによりThr34リン酸化・脱リン酸化のカイネティクスを調節している。CK2によるSer97のリン酸化はThr34のPKAによるリン酸化を促進し<ref><pubmed> 2557337 </pubmed></ref>、CK1によるSer130のリン酸化はThr34のPP2B(カルシニューリン)による脱リン酸化を抑制する<ref><pubmed> 9461512 </pubmed></ref>。その結果、Ser97、Ser130のリン酸化により、ドパミンD1受容体/PKA/DARPP-32シグナルは促進される。
 Ser97、Ser130のリン酸化は、DARPP-32分子内メカニズムによりThr34リン酸化・脱リン酸化のカイネティクスを調節している。CK2によるSer97のリン酸化はThr34のPKAによるリン酸化を促進し<ref><pubmed> 2557337 </pubmed></ref>、CK1によるSer130のリン酸化はThr34のPP2B(カルシニューリン)による脱リン酸化を抑制する<ref><pubmed> 9461512 </pubmed></ref>。その結果、Ser97、Ser130のリン酸化により、ドパミンD1受容体/PKA/DARPP-32シグナルは促進される。
 Ser97のCK2によるリン酸化は、DARPP-32の細胞質—核内シャトリングの調節に重要である。P-Ser97 DARPP-32は核外に輸送されるが、Ser97が脱リン酸化されるとNESが機能しないためDARPP-32が核内に蓄積する<ref name=ref3 />。
 Ser97のCK2によるリン酸化は、DARPP-32の細胞質—核内シャトリングの調節に重要である。P-Ser97 DARPP-32は核外に輸送されるが、Ser97が脱リン酸化されるとNESが機能しないためDARPP-32が核内に蓄積する<ref name=ref3 />。
DARPP-32の脱リン酸化調節
 DARPP-32のリン酸化レベルは、プロテインキナーゼによるリン酸化とプロテインホスファターゼによる脱リン酸化のバランスによって決定される。特に、P-Thr34 DARPP-32を脱リン酸化するPP2Bは、グルタミン酸によるNMDA受容体やAMPA受容体の刺激に伴うCa2+シグナルによって活性化される。ドパミンD1受容体やアデノシンA2A受容体によって活性化されるPKAシグナルはThr34をリン酸化し、グルタミン酸により活性化されるPP2BはP−Thr34を脱リン酸化する。拮抗的なドパミンD1受容体シグナルとNMDA受容体・AMPA受容体シグナルは、P-Thr34 DARPP-32のリン酸化を介して統合される<ref name=ref6><pubmed> 9334390 </pubmed></ref>。P-Thr34 DARPP-32は、PP2Bに加え、PKAにより活性化されるPP2A/B56δによっても脱リン酸化される。
 P-Thr75 DARPP-32な主にPP2Aにより脱リン酸化される。PKAにより活性化されるPP2A/B56δとCa2+により活性化されるPP2A/PR72の両者により脱リン酸化される。P-Ser97 DARPP-32は主にPP2A/B56δとPP2A/PR72により脱リン酸化される。P-Ser130 DARPP-32はPP2AとPP2Cにより脱リン酸化される。このように、脱リン酸化に関わるプロテインホスファターゼはリン酸化サイト毎に異なり、Ca2+やPKAにより活性が調節されている<ref><pubmed> 26979514 </pubmed></ref>。


ドパミンによるPKA/DARPP-32/PP1シグナル調節
ドパミンによるPKA/DARPP-32/PP1シグナル調節
 ドパミンD1受容体刺激はGs/olf蛋白を介してアデニル酸シクラーゼを活性化し、cAMP/PKA/P-Thr34 DARPP-32シグナルを促進してPP1を抑制する。一方、ドパミンD2受容体はGi蛋白を介してアデニル酸シクラーゼを抑制するため、cAMP/PKA/P-Thr34 DARPP-32シグナルは抑制されてPP1は活性化する<ref name=ref6><pubmed> 9334390 </pubmed></ref>。
 ドパミンD1受容体刺激はGs/olf蛋白を介してアデニル酸シクラーゼを活性化し、cAMP/PKA/P-Thr34 DARPP-32シグナルを促進してPP1を抑制する。一方、ドパミンD2受容体はGi蛋白を介してアデニル酸シクラーゼを抑制するため、cAMP/PKA/P-Thr34 DARPP-32シグナルは抑制されてPP1は活性化する<ref name=ref6 />。
 ドパミンD1受容体刺激はPKAを介してPP2A/B56δを活性化し、P-Thr75を脱リン酸化する<ref><pubmed> 17301223 </pubmed></ref>。P-Thr75 DARPP-32によるPKAの抑制がはずれるため、cAMP/PKA/P-Thr34 DARPP-32シグナルは効率よく伝達されるようになる<ref name=ref7><pubmed> 11050161 </pubmed></ref>。また、活性化されたPP2A/B56δはP-Ser97も脱リン酸化するため、P-Thr34/dephospho-Ser97 DARPP-32が核内に蓄積して核内PP1を抑制する<ref name=ref3 />。
 ドパミンD1受容体刺激はPKAを介してPP2A/B56δを活性化し、P-Thr75を脱リン酸化する<ref><pubmed> 17301223 </pubmed></ref>。P-Thr75 DARPP-32によるPKAの抑制がはずれるため、cAMP/PKA/P-Thr34 DARPP-32シグナルは効率よく伝達されるようになる<ref name=ref7><pubmed> 11050161 </pubmed></ref>。また、活性化されたPP2A/B56δはP-Ser97も脱リン酸化するため、P-Thr34/dephospho-Ser97 DARPP-32が核内に蓄積して核内PP1を抑制する<ref name=ref3 />。


神経伝達物質シグナルを統合するDARPP-32
神経伝達物質シグナルを統合するDARPP-32
 DARPP-32はドパミン作用増幅因子であるとともに、複数の神経伝達物質シグナルの統合分子としても重要である。線条体は、大脳皮質と視床からの[[興奮性]]グルタミン酸作動性入力を受け、グルタミン酸はNMDA受容体、AMPA受容体、代謝型[[グルタミン酸受容体]](mGluR)を介するDARPP-32リン酸化調節を受ける。その結果、グルタミン酸シグナルはドパミン/PKA/DARPP-32/PP1シグナルと複雑な相互作用を示す<ref><pubmed> 15657149 </pubmed></ref>。さらに、線条体におけるDARPP-32リン酸化は、アセチルコリンを神経伝達物質とする介在神経や、アデノシン、エンケファリン、[[サブスタンスP]]、ニューロテンシンなどにより調節を受けている<ref name=ref2 />。
 DARPP-32はドパミン作用増幅因子であるとともに、複数の神経伝達物質シグナルの統合分子としても重要である。線条体は、大脳皮質と視床からの興奮性グルタミン酸作動性入力を受ける。グルタミン酸は、NMDA受容体およびAMPA受容体を介するCa2+シグナルの活性化に加え、代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)シグナルを活性化してDARPP-32リン酸化を調節する。その結果、グルタミン酸シグナルはドパミン/PKA/DARPP-32/PP1シグナルと複雑な相互作用を示す<ref><pubmed> 15657149 </pubmed></ref>。さらに、線条体におけるDARPP-32リン酸化は、アセチルコリンを神経伝達物質とする介在神経や、アデノシン、セロトニン、GABA、エンケファリン、ニューロテンシンなどにより調節を受けている<ref name=ref2 />。


直接路と間接路におけるDARPP-32機能の違い  
直接路と間接路におけるDARPP-32機能の違い  
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