「嗅覚経路」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
15行目: 15行目:


===鋤鼻器===
===鋤鼻器===
 フェロモン受容体を発現する鋤鼻神経は、鼻中隔底部にある鋤鼻器に位置する。鋤鼻神経も嗅神経同様に双極性の細胞であり、細胞体から鋤鼻腔へと伸びる樹状突起、および、基底部さらには副嗅球へと向かう軸索を有している。鋤鼻神経は嗅神経とは異なり微絨毛を持ち、微絨毛上に存在するフェロモン受容体によって、鋤鼻腔に入ってきたフェロモンが受容される。フェロモン受容体にはV1RとV2Rの2つのファミリーがあり、両者ともGタンパク質共役7回膜貫通型であるが、互いの相同性は低い。鋤鼻神経においても、個々の神経は一種類のフェロモン受容体のみを発現している(但しV2Rのうちc-familyに属するものは他のV2Rと共発現する<ref><pubmed> 11157070 </pubmed></ref><ref><pubmed> 21112400 </pubmed></ref>)。V1RはGタンパク質Gai2、V2RはGoとそれぞれ共役しており、フェロモンのシグナル伝達に関わっている。また、一部の鋤鼻神経はホルミルペプチド受容体(Fpr)を発現している<ref><pubmed> 19497865 </pubmed></ref><ref><pubmed> 19387439 </pubmed></ref>。鋤鼻器ではこれまで5つのFpr遺伝子の発現が知られているが、いずれも互いに排他的(一神経に一遺伝子のみ)に発現している。また、哺乳類の嗅覚受容体とは全く異なる構造の嗅覚受容体を持つショウジョウバエの嗅覚系においても、個々の嗅神経は一種類の受容体のみを発現する。両嗅覚系は独立して発生してきたことから、一神経に一受容体遺伝子のみが発現する様式は、収斂進化による匂い感知の機構であると考えられる。
 フェロモン受容体を発現する鋤鼻神経は、鼻中隔底部にある鋤鼻器に位置する。鋤鼻神経も嗅神経同様に双極性の細胞であり、細胞体から鋤鼻腔へと伸びる樹状突起、および、基底部さらには副嗅球へと向かう軸索を有している。鋤鼻神経は嗅神経とは異なり微絨毛を持ち、微絨毛上に存在するフェロモン受容体によって、鋤鼻腔に入ってきたフェロモンが受容される。フェロモン受容体にはV1RとV2Rの2つのファミリーがあり、両者ともGタンパク質共役7回膜貫通型であるが、互いの相同性は低い。鋤鼻神経においても、個々の神経は一種類のフェロモン受容体のみを発現している(但しV2Rのうちc-familyに属するものは他のV2Rと共発現する<ref><pubmed> 11157070 </pubmed></ref><ref><pubmed> 21112400 </pubmed></ref>)。V1R、V2Rを発現する鋤鼻神経は、鋤鼻器の浅層と深層にそれぞれ位置している。また、V1RはGタンパク質Gai2、V2RはGoとそれぞれ共役しており、フェロモンのシグナル伝達に関わっている。また、一部の鋤鼻神経はホルミルペプチド受容体(Fpr)を発現している<ref><pubmed> 19497865 </pubmed></ref><ref><pubmed> 19387439 </pubmed></ref>。鋤鼻器ではこれまで5つのFpr遺伝子の発現が知られているが、いずれも互いに排他的(一神経に一遺伝子のみ)に発現している。また、哺乳類の嗅覚受容体とは全く異なる構造の嗅覚受容体を持つショウジョウバエの嗅覚系においても、個々の嗅神経は一種類の受容体のみを発現する。両嗅覚系は独立して発生してきたことから、一神経に一受容体遺伝子のみが発現する様式は、収斂進化による匂い感知の機構であると考えられる。


===グルンベルグ神経節===
===グルンベルグ神経節===
26行目: 26行目:


===副嗅球===
===副嗅球===
 鋤鼻神経の軸索は嗅球後側部に位置する副嗅球の糸球へと投射する。この糸球において、副嗅球の投射神経である僧帽房飾細胞と興奮性シナプスを形成する(副嗅球においては僧帽細胞と房飾細胞の形態の区別が小さい)。同一のフェロモン受容体を発現する鋤鼻神経群は、主嗅覚系とは異なり、数十個もの糸球群へと軸索を投射している<ref><pubmed> 10219242 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10219241 </pubmed></ref>。一方、僧帽房飾細胞も主嗅球の僧帽細胞や房飾細胞とは異なり、複数の糸球へと樹状突起を伸張している。僧帽房飾細胞はランダムな糸球に投射するのではなく、同一の僧帽房飾細胞によって投射される糸球郡は、同じフェロモン受容体あるいは配列が類似したフェロモン受容体を発現する鋤鼻神経からの投射を受けている(図2)<ref><pubmed> 12354396 </pubmed></ref><ref><pubmed> 22674266 </pubmed></ref><ref><pubmed> 16731509 </pubmed></ref>。これにより僧帽房飾細胞において、類似したフェロモンの受容情報が統合されていると考えられている。副嗅球においても主嗅球同様、僧帽房飾細胞は抑制性神経である顆粒細胞と相反性シナプスを形成している。
 鋤鼻神経の軸索は嗅球後側部に位置する副嗅球へと投射する。鋤鼻器において浅層に位置したV1Rを発現する鋤鼻神経は副嗅球の吻側に、深層に位置したV2Rを発現する鋤鼻神経は副嗅球の尾側にある糸球へと投射する。この糸球において、副嗅球の投射神経である僧帽房飾細胞は鋤鼻神経から興奮性の入力を受ける(副嗅球においては僧帽細胞と房飾細胞の形態の区別が小さい)。同一のフェロモン受容体を発現する鋤鼻神経群は、主嗅覚系とは異なり、数十個もの糸球群へと軸索を投射している<ref><pubmed> 10219242 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10219241 </pubmed></ref>。一方、僧帽房飾細胞も主嗅球の僧帽細胞や房飾細胞とは異なり、複数の糸球へと樹状突起を伸張している。僧帽房飾細胞はランダムな糸球に投射するのではなく、同一の僧帽房飾細胞によって投射される糸球郡は、同じフェロモン受容体あるいは配列が類似したフェロモン受容体を発現する鋤鼻神経からの投射を受けている(図2)<ref><pubmed> 12354396 </pubmed></ref><ref><pubmed> 22674266 </pubmed></ref><ref><pubmed> 16731509 </pubmed></ref>。これにより僧帽房飾細胞において、類似したフェロモンの受容情報が統合されていると考えられている。副嗅球においても主嗅球同様、僧帽房飾細胞は抑制性神経である顆粒細胞と相反性シナプスを形成している。


===ネックレース糸球体===
===ネックレース糸球体===
49

回編集

案内メニュー