「ZOファミリー」の版間の差分

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同義語:tight junction protein
同義語:tight junction protein


{{box|text= ZOファミリータンパク質はタイトジャンクションを構成する主要な分子である。細胞や組織のアピカル側に局在し、細胞極性形成に関わると考えられている。また、タイトジャンクションだけでなく、アドヘレンスジャンクションやギャップジャンクションにも局在が見られることから、広く細胞間接着構造の維持に関与する分子であると考えられる。近年では、細胞内シグナル伝達分子や転写調節因子として働き、細胞増殖を調節するという報告もなされている。脳神経系では、発生期の神経上皮組織において神経前駆細胞の極性形成に関わる。また、ギャップ結合を介したグリア細胞同士の細胞間コミュニケーションへの関与も示唆されている。一方、血液脳関門や血液脳脊髄液関門などの組織と体液の境界領域において、様々な物質の透過を調節するバリアとして機能し、脳神経系の恒常性の維持に寄与している。
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 ZOファミリータンパク質はタイトジャンクションを構成する主要な分子である。細胞や組織のアピカル側に局在し、細胞極性形成に関わると考えられ ている。また、タイトジャンクションだけでなく、アドヘレンスジャンクションやギャップジャンクションにも局在が見られることから、広く細胞間結合構造の 維持に関与する分子であると考えられる。近年では、細胞内シグナル伝達分子や転写調節因子として働き、細胞増殖を調節するという報告もなされている。脳神 経系では、発生期の神経上皮組織において神経前駆細胞の極性形成に関わる。また、ギャップ結合を介したグリア細胞同士の細胞間コミュニケーションへの関与 も示唆されている。一方、血液脳関門や血液脳脊髄液関門などの組織と体液の境界領域において、様々な物質の透過を調節するバリアとして機能し、脳神経系の 恒常性の維持に寄与している。
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{{PBB|geneid=7082}}{{PBB|geneid=9414}}{{PBB|geneid=27134}}
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==ZOファミリーとは==
==ZOファミリーとは==
 [[wikipedia:ja:多細胞生物|多細胞生物]]の[[wikipedia:ja:上皮組織|上皮組織]]では、[[wikipedia:ja:上皮細胞|上皮細胞]]が単層あるいは重層に配列し、互いに接着したシート状構造を呈する。上皮シート構造の形成・維持には、頂端側に存在する[[密着結合]]・[[接着結合]]・[[接着斑]]からなる接着複合体が重要な役割を果たしている。ZO ファミリータンパク質は、1986年に、密着結合に含まれるタンパク質として同定された表在性膜タンパク質である<ref name=ref11 /><ref name=ref29 />。
 ZO ファミリータンパク質は、上皮組織の密着結合に含まれるタンパク質として同定された表在性膜タンパク質である<ref name=ref11 /> <ref name=ref29 />。[[wikipedia:ja:多細胞生物|多細胞生物]]の[[wikipedia:ja:上皮組織|上皮組織]]では、[[wikipedia:ja:上皮細胞|上皮細胞]]が互いに接着したシート状構造を呈する。上皮シート構造の形成・維持には、頂端側に存在する[[密着結合]]・[[接着結合]]・デスモソーム結合といった、細胞間結合構造が重要な役割を果たしている。ZOファミリータンパク質は、細胞間結合構造の裏打ちタンパクとして働き、主に(1)細胞間結合構造の形成と維持、(2)物質透過の制御、(3)細胞極性形成などの役割を担っている。近年では、ZOタンパク質が核内に移動し、細胞内シグナル伝達や転写調節を担うことも報告されている<ref name=ref3><pubmed>20224657</pubmed></ref>。


==構造==
==構造==
[[image:zo-1-1.png|thumb|350px|'''図1.ZOタンパク質構造'''<ref name=ref4><pubmed>12141438</pubmed></ref>]]
[[image:zo-1-2.png|thumb|350px|'''図1.ZOファミリータンパク質の構造(<ref name=ref11><pubmed>10966866</pubmed></ref>を一部改変)'''<br>N末端側にPDZドメイン(1、2、3の数字で示す)、SH3ドメイン、GUK(GK)ドメインが存在する。 ZO-1、ZO-2のC末端側およびZO-3のN末端側にはプロリンリッチな領域(P)が存在する。ZO-1とZO-2のC末端側には選択的スプライシング部位(α、β、γ)が存在する。+、-はそれぞれ塩基性領域、酸性領域を表す。▼は核局在シグナル領域、▽は核外移行シグナル領域を示す<ref name=ref11><pubmed>10966866</pubmed></ref>]]
[[image:zo-1-2.png|thumb|350px|'''図2.ZO-1タンパク質の構造'''<br>N末端側にPDドメイン(1、2、3の数字で示す)、SH3ドメイン、GUK(GK)ドメインが存在する。C末端側にはプロリンリッチな領域(P)、選択的スプライシング部位(α、β、γ)が存在する。+、-はそれぞれ塩基性領域、酸性領域を表す<ref name=ref11><pubmed>10966866</pubmed></ref>。]]
 
 ZOファミリータンパク質(図1)は、[[membrane-associated guanylate kinase]](MAGUK)ファミリーに分類される。分子量220kDaの[[ZO-1]]<ref name=ref29><pubmed>3528172</pubmed></ref> <ref name=ref18><pubmed>8486731</pubmed></ref>、160kDaの[[ZO-2]]<ref name=ref12><pubmed>2014265</pubmed></ref> <ref name=ref20><pubmed>8132716</pubmed></ref>、130kDaの [[ZO-3]]<ref name=ref13><pubmed>9531559</pubmed></ref>の3種類がある。これらに共通の構造として、3個の[[PDZドメイン]]、1個の[[SH3ドメイン|Src homology 3(SH3)ドメイン]]、1個の[[グアニル酸キナーゼ (GUKまたはGK)ドメイン|グアニル酸キナーゼドメイン]]が挙げられる。また、プロリンリッチ領域が、ZO-1、ZO-2ではカルボキシル末端側、ZO-3では第2PDZドメインと第3PDZドメインの間に存在する<ref name=ref11 />。また、ZO-1およびZO-3は2つの核局在シグナル領域を、ZO-2は核局在シグナル領域と核外移行シグナル領域をひとつずつ持っている<ref name=ref11><pubmed>10966866</pubmed></ref> <ref name=ref10><pubmed>10094817</pubmed></ref>。


 ZOファミリータンパク質(図1)は、[[membrane-associated guanylate kinase]](MAGUK)ファミリーに分類される。分子量220kDaの[[ZO-1]]<ref name=ref29><pubmed>3528172</pubmed></ref> <ref name=ref18><pubmed>8486731</pubmed></ref>、160kDaの[[ZO-2]]<ref name=ref12><pubmed>2014265</pubmed></ref> <ref name=ref20><pubmed>8132716</pubmed></ref>、130kDaの [[ZO-3]]<ref name=ref13><pubmed>9531559</pubmed></ref>の3種類がある。これらに共通の構造として、3個の[[PDZドメイン]]、1個の[[SH3ドメイン|Src homology 3(SH3)ドメイン]]、1個の[[グアニル酸キナーゼ (GUKまたはGK)ドメイン|グアニル酸キナーゼドメイン]]が挙げられる。また、プロリンリッチ領域が、ZO-1、ZO-2ではカルボキシル末端側、ZO-3では第2PDZドメインと第3PDZドメインの間に存在する<ref name=ref11 />。


 3種のZOタンパク質を区別するのはC末端領域の構造である。ZO-1のC末領域は他の2種よりも長い(図2)。この領域にはアクチン結合部位があり、細胞質側で細胞骨格系であるF-アクチンと結合する<ref name=ref6><pubmed>9792688</pubmed></ref> <ref name=ref19><pubmed>9214391</pubmed></ref>。
 3種のZOタンパク質を区別するのはC末端領域の構造である。ZO-1のC末領域は他の2種よりも長い(図2)。この領域にはアクチン結合部位があり、細胞質側で細胞骨格系であるF-アクチンと結合する<ref name=ref6><pubmed>9792688</pubmed></ref> <ref name=ref19><pubmed>9214391</pubmed></ref>。

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