「解離症」の版間の差分

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<font size="+1">柴山 雅俊</font><br>
<font size="+1">柴山 雅俊</font><br>
''東京女子大学''<br>
''東京女子大学''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年3月30日 原稿完成日:2016年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年3月30日 原稿完成日:2016年5月9日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](国立研究開発法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](国立研究開発法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
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同義語:解離性障害
同義語:解離性障害


{{box|text= 解離症とは、通常は統合されている自己の意識、記憶、同一性などが、強い心的外傷体験などによって障害された結果、正常な精神機能の喪失(健忘など)、あるいは精神機能の変容(同一性の変容、離人感、現実感消失など)が生じるものである。現代の解離理論は、解離を心的外傷による人格機能の低下によると考えたJanet Pの考えに基づいている。DSM-5は解離症の特徴を「意識、記憶、同一性、情動、知覚、身体表象、運動制御、行動の正常な統合における破綻(disruption)および/または不連続(discontinuity)」としている。下位分類としては、解離性健忘、離人感・現実感消失症、解離性同一症、他の特定の解離症、特定されない解離症などがある。症候は離人感や体外離脱体験などの離隔、健忘や人格交代などの区画化、精神病様症状(その多くは侵入体験)と3つに分けられる。解離症には心的外傷や虐待の既往が高頻度にみられる。とりわけ解離性同一症(DID)ではその頻度が高く、北米の報告では約80~90%が性的虐待、約70%が身体的虐待を受けている。治療の基本的枠組みとしては段階的治療がある。第1段階の安心・安全と症状低減から第2段階の外傷記憶の統合へ、さらに第3段階の人格の統合とリハビリテーションへと、患者の安定度に合わせて進めることが必要である。}}
{{box|text=
主な解離症には、重要な記憶が思い出せない「解離性健忘」、自分自身や周囲の物事についての実感がない「離人感・現実感消失症」、人格交代をしてその間の記憶がない「解離性同一症」などがある。これらは、強い心的外傷体験などによって、通常は統合されている自己の意識、記憶、同一性などが障害された結果と考えられる。現代の解離理論は、解離を心的外傷による人格機能の低下によると考えたジャネの考えに基づいている。解離症の症候は大きく分けて、離隔(離人感や体外離脱体験など)、区画化(健忘や人格交代など)、精神病様症状(その多くは幻聴、フラッシュバックなどの侵入体験)がある。解離症には心的外傷や虐待の既往が高頻度にみられるが、とりわけ解離性同一症ではその頻度が高く、北米の報告では約80~90%が性的虐待、約70%が身体的虐待を受けているという。治療においては、第1段階:安心・安全と症状低減、第2段階:外傷記憶の統合、第3段階:人格の統合とリハビリテーション、という段階的治療が行われる。
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==歴史==
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