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ステロイド核をもつ[[ホルモン]]をステロイドホルモンと呼ぶ。副腎、精巣、卵巣等の内分泌器官より分泌され、血流を通じて全身の標的細胞に作用する。また、脳で合成されるステロイドをニューロステロイドと呼ぶ。 | ステロイド核をもつ[[ホルモン]]をステロイドホルモンと呼ぶ。副腎、精巣、卵巣等の内分泌器官より分泌され、血流を通じて全身の標的細胞に作用する。また、脳で合成されるステロイドをニューロステロイドと呼ぶ。 | ||
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== ステロイドホルモンの種類 == | |||
=== 副腎皮質ホルモン === | === 副腎皮質ホルモン === | ||
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=== 精巣ホルモン === | === 精巣ホルモン === | ||
精巣のライディッヒ細胞から分泌されるアンドロゲンは雄性化作用を持つホルモンの総称である。アンドロゲンの90%はテストステロンであるが、アンドロステンジオンやデヒドロエピアンドロステロン等もアンドロゲンに含まれる。アンドロゲンは精子形成、輸精管・前立腺・精嚢・カウパー腺の維持の他、交尾などを含めた雄の性行動に重要であり、また攻撃行動などの社会行動にも関与している。雄では、周生期に大量のテストステロンが精巣から分泌され(アンドロゲンシャワーと呼ばれる)、このことにより性分化の方向性が決定される<ref>'''近藤保彦、小川園子、菊水健史、山田一夫、富原一哉'''<br>脳とホルモンの行動学 行動神経内分泌学への招待<br>''西村書店'':2010</ref>。 | 精巣のライディッヒ細胞から分泌されるアンドロゲンは雄性化作用を持つホルモンの総称である。アンドロゲンの90%はテストステロンであるが、アンドロステンジオンやデヒドロエピアンドロステロン等もアンドロゲンに含まれる。アンドロゲンは精子形成、輸精管・前立腺・精嚢・カウパー腺の維持の他、交尾などを含めた雄の性行動に重要であり、また攻撃行動などの社会行動にも関与している。雄では、周生期に大量のテストステロンが精巣から分泌され(アンドロゲンシャワーと呼ばれる)、このことにより性分化の方向性が決定される<ref>'''近藤保彦、小川園子、菊水健史、山田一夫、富原一哉'''<br>脳とホルモンの行動学 行動神経内分泌学への招待<br>''西村書店'':2010</ref>。 | ||
=== 卵巣ホルモン === | |||
卵巣から分泌されている女性ホルモンは、エストラジオール、エストロン、プロゲステロンである。ヒトの場合、下垂体ホルモンのLHとFSHが周期的に分泌されて女性ホルモンの生合成が促進される。プロゲステロンは炭素数21のステロイドで、ステロイドホルモンすべての中間代謝物でもある。哺乳類では妊娠を維持し、また交尾行動を抑制する。エストロゲンは炭素数18のステロイドホルモンでありアンドロゲンから生成される。エストロゲンはアンドロゲンのフェニル基A環の芳香化によって生成される。生物活性を持つエストロゲンは、17β-エストラジオール、エストロン、エストリオールである。内卵胞膜細胞で合成されたプロゲステロンから酵素の働きによりアンドロゲンが生成され、顆粒膜細胞内ですぐさまエストロゲンに変換される。雌の第二次性徴はエストロゲンにより影響を受ける。エストロゲンはヒトの水代謝に重要であり、水分の保持に役立っている。高濃度のエストロゲン存在下で骨形成が行われるため、閉経後の女性には骨粗鬆症の所見が見られる。さらにエストロゲンは、雌性行動、母性攻撃行動に重要な役割を果たしている。 | 卵巣から分泌されている女性ホルモンは、エストラジオール、エストロン、プロゲステロンである。ヒトの場合、下垂体ホルモンのLHとFSHが周期的に分泌されて女性ホルモンの生合成が促進される。プロゲステロンは炭素数21のステロイドで、ステロイドホルモンすべての中間代謝物でもある。哺乳類では妊娠を維持し、また交尾行動を抑制する。エストロゲンは炭素数18のステロイドホルモンでありアンドロゲンから生成される。エストロゲンはアンドロゲンのフェニル基A環の芳香化によって生成される。生物活性を持つエストロゲンは、17β-エストラジオール、エストロン、エストリオールである。内卵胞膜細胞で合成されたプロゲステロンから酵素の働きによりアンドロゲンが生成され、顆粒膜細胞内ですぐさまエストロゲンに変換される。雌の第二次性徴はエストロゲンにより影響を受ける。エストロゲンはヒトの水代謝に重要であり、水分の保持に役立っている。高濃度のエストロゲン存在下で骨形成が行われるため、閉経後の女性には骨粗鬆症の所見が見られる。さらにエストロゲンは、雌性行動、母性攻撃行動に重要な役割を果たしている。 | ||
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=== ニューロステロイド === | |||
ニューロステロイドとは脳で合成されるステロイドホルモンの総称である。脳は長年、末梢器官が合成・分泌するステロイドホルモンの標的器官として捉えられてきたが、1981年にフランスの内分泌学者Baulieuは、ラットの脳がコレステロールからプレグネノロンとデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)を合成し硫酸や硫酸エステルに変換していることを見出し「ニューロステロイド」と命名した。現在では、脊椎動物のほとんどがニューロステロイドを合成していることが知られる。脳には、シトクロムP450sccに加え、ステロイド硫酸基転移酵素、3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素、5α(β)-還元酵素、17α-水酸化・開裂酵素、17β-水酸基脱水素酵素など、多くのステロイド合成酵素が存在することが証明され、脳は様々なニューロステロイドを合成していることが明らかとなった。ニューロステロイドは末梢内分泌器官を除去してもあまり変動しないことから、末梢内分泌器官とは独立したステロイド合成系を有していると考えられている。 脳は、末梢器官が合成・分泌するステロイドホルモンの標的器官でありながら、なおかつ脳自身もステロイドホルモンを合成することが知られる<ref><pubmed>19505496 </pubmed></ref>。生体におけるすべてのステロイド合成は、コレステロールからP450sccの触媒作用によりプレグネノロンに変換されることから始まるが、ほとんどの脊椎動物の脳においてもプレグネノロンが合成されていることが証明された。その後も脳には、シトクロムP450sccに加え、ステロイド硫酸基転移酵素、3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素、5α(β)-還元酵素、17α-水酸化・開裂酵素、17β-水酸基脱水素酵素など、多くのステロイド合成酵素が存在することが証明され、脳は様々なニューロステロイドを合成していることが明らかとなった。ニューロステロイドは末梢内分泌器官を除去してもあまり変動しないことから、末梢内分泌器官とは独立したステロイド合成系を有していると考えられている。 P450scc, 3β-HSDは、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトの全てに発現している。ほとんどの脳におけるプレグネノロン合成を証明し、脳によるステロイド合成は脊椎動物に広く見られることが明らかとなった。その後も脳には、シトクロムP450sccに加え、ステロイド硫酸基転移酵素、3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素、5α(β)-還元酵素、17α-水酸化・開裂酵素、17β-水酸基脱水素酵素など、多くのステロイド合成酵素が存在することが証明され、脳は様々なニューロステロイドを合成していることが明らかとなった。ニューロステロイドは末梢内分泌器官を除去してもあまり変動しないことから、末梢内分泌器官とは独立したステロイド合成系を有していると考えられている。 | |||
ニューロステロイドとは脳で合成されるステロイドホルモンの総称である。脳は長年、末梢器官が合成・分泌するステロイドホルモンの標的器官として捉えられてきたが、1981年にフランスの内分泌学者Baulieuは、ラットの脳がコレステロールからプレグネノロンとデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)を合成し硫酸や硫酸エステルに変換していることを見出し「ニューロステロイド」と命名した。現在では、脊椎動物のほとんどがニューロステロイドを合成していることが知られる。脳には、シトクロムP450sccに加え、ステロイド硫酸基転移酵素、3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素、5α(β)-還元酵素、17α-水酸化・開裂酵素、17β-水酸基脱水素酵素など、多くのステロイド合成酵素が存在することが証明され、脳は様々なニューロステロイドを合成していることが明らかとなった。ニューロステロイドは末梢内分泌器官を除去してもあまり変動しないことから、末梢内分泌器官とは独立したステロイド合成系を有していると考えられている。 | |||
脳は、末梢器官が合成・分泌するステロイドホルモンの標的器官でありながら、なおかつ脳自身もステロイドホルモンを合成することが知られる<ref><pubmed>19505496 </pubmed></ref>。生体におけるすべてのステロイド合成は、コレステロールからP450sccの触媒作用によりプレグネノロンに変換されることから始まるが、ほとんどの脊椎動物の脳においてもプレグネノロンが合成されていることが証明された。その後も脳には、シトクロムP450sccに加え、ステロイド硫酸基転移酵素、3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素、5α(β)-還元酵素、17α-水酸化・開裂酵素、17β-水酸基脱水素酵素など、多くのステロイド合成酵素が存在することが証明され、脳は様々なニューロステロイドを合成していることが明らかとなった。ニューロステロイドは末梢内分泌器官を除去してもあまり変動しないことから、末梢内分泌器官とは独立したステロイド合成系を有していると考えられている。 | |||
P450scc, 3β-HSDは、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトの全てに発現している。ほとんどの脳におけるプレグネノロン合成を証明し、脳によるステロイド合成は脊椎動物に広く見られることが明らかとなった。その後も脳には、シトクロムP450sccに加え、ステロイド硫酸基転移酵素、3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素、5α(β)-還元酵素、17α-水酸化・開裂酵素、17β-水酸基脱水素酵素など、多くのステロイド合成酵素が存在することが証明され、脳は様々なニューロステロイドを合成していることが明らかとなった。ニューロステロイドは末梢内分泌器官を除去してもあまり変動しないことから、末梢内分泌器官とは独立したステロイド合成系を有していると考えられている。 | |||
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== ステロイドホルモンの生合成 == | == ステロイドホルモンの生合成 == | ||
[[Image:Steroid synthesis.jpg|thumb|right|300px|ステロイドホルモンの生合成]] ステロイドホルモンはコレステロールから、主に[[シトクロムP450]]系酵素の働きによって作られる。これらの酵素は小胞体膜かミトコンドリア内膜のいずれかに局在する。以下に挙げる酵素がステロイドホルモン合成酵素として知られており、これらのうち3β-HSDと17β-HSD以外は[[シトクロムP450]]系酵素である。 | [[Image:Steroid synthesis.jpg|thumb|right|300px|ステロイドホルモンの生合成]] ステロイドホルモンはコレステロールから、主に[[シトクロムP450]]系酵素の働きによって作られる。これらの酵素は小胞体膜かミトコンドリア内膜のいずれかに局在する。以下に挙げる酵素がステロイドホルモン合成酵素として知られており、これらのうち3β-HSDと17β-HSD以外は[[シトクロムP450]]系酵素である。 |
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