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*発声学習や音声コミュニケーションの研究に適している
*発声学習や音声コミュニケーションの研究に適している


===マウス===
=== 齧歯類 ===
====マウス====
 分類学上では、[[wj:ハツカネズミ属|ハツカネズミ属]]の[[ハツカネズミ]]([[Mus musculus|''Mus musculus'']])が該当する。成熟[[マウス]]の体重は約20〜30gで寿命は約2年である。染色体数は2n=40、ゲノムサイズは2.5Gbである。[[wj:性周期|性周期]]は約4日で1年中繁殖が可能である。[[wj:妊娠|妊娠]]期間は約19日、1回の産子数は5〜9匹、哺乳期間は約3週間である。40〜50日で性成熟し繁殖が可能となる<ref name=ref028>最新実験動物学<br>前島 一淑、笠井 憲雪 編 P45, P105〜P111</ref>。ゲノム解析が2002年に完了している<ref name=ref029><pubmed>12466850</pubmed></ref>。また[[トランスジェニックマウス]]や[[ノックアウトマウス]]などの遺伝子改変技術が確立している。発生学、生理学、神経科学などの基礎生物学や、病因病態の究明や創薬・治療法の開発など幅広い研究に使用され、実験動物として一番多く使用されている。
 分類学上では、[[wj:ハツカネズミ属|ハツカネズミ属]]の[[ハツカネズミ]]([[Mus musculus|''Mus musculus'']])が該当する。成熟[[マウス]]の体重は約20〜30gで寿命は約2年である。染色体数は2n=40、ゲノムサイズは2.5Gbである。[[wj:性周期|性周期]]は約4日で1年中繁殖が可能である。[[wj:妊娠|妊娠]]期間は約19日、1回の産子数は5〜9匹、哺乳期間は約3週間である。40〜50日で性成熟し繁殖が可能となる<ref name=ref028>最新実験動物学<br>前島 一淑、笠井 憲雪 編 P45, P105〜P111</ref>。ゲノム解析が2002年に完了している<ref name=ref029><pubmed>12466850</pubmed></ref>。また[[トランスジェニックマウス]]や[[ノックアウトマウス]]などの遺伝子改変技術が確立している。発生学、生理学、神経科学などの基礎生物学や、病因病態の究明や創薬・治療法の開発など幅広い研究に使用され、実験動物として一番多く使用されている。


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*繁殖周期が短く産子数が多いため、計画的な実験が組み易い
*繁殖周期が短く産子数が多いため、計画的な実験が組み易い


===ラット===
====ラット====
 分類学上では、[[wikipedia:ja:クマネズミ属|クマネズミ属]]の[[wikipedia:ja:ドブネズミ|ドブネズミ]]([[Rattus norvegicus|''Rattus norvegicus'']])が該当する。成熟[[ラット]]の体重は雌200〜400g、雄で300〜700gと雌雄で倍近い差があることが特徴である。染色体数は2n=42、ゲノムサイズは2.75Gbである。性周期は平均4日で1年中繁殖が可能である。妊娠期間は約21 日、1回の産子数は6〜14匹、哺乳期間は約3週間である。雌で50〜80日、雄で60〜80日で性成熟し、繁殖が可能となる<ref name=ref030> 最新実験動物学<br>前島 一淑、笠井 憲雪 編 P45, P111〜P113</ref>。発生学、生理学、神経科学などの基礎生物学や、病因病態の究明や創薬・治療法の開発など、マウスと同様に広く実験動物として利用されている。ゲノム解析が2004年に完了している<ref name=ref031><pubmed>15057822</pubmed></ref>。遺伝子組換え動物としてES細胞株が利用できないために、遺伝子組換えラットを作製することが困難とされていたが、 近年ではゲノム編集の技術を応用した遺伝子組換えラットの作製が報告されている<ref name=ref010 />。
 分類学上では、[[wikipedia:ja:クマネズミ属|クマネズミ属]]の[[wikipedia:ja:ドブネズミ|ドブネズミ]]([[Rattus norvegicus|''Rattus norvegicus'']])が該当する。成熟[[ラット]]の体重は雌200〜400g、雄で300〜700gと雌雄で倍近い差があることが特徴である。染色体数は2n=42、ゲノムサイズは2.75Gbである。性周期は平均4日で1年中繁殖が可能である。妊娠期間は約21 日、1回の産子数は6〜14匹、哺乳期間は約3週間である。雌で50〜80日、雄で60〜80日で性成熟し、繁殖が可能となる<ref name=ref030> 最新実験動物学<br>前島 一淑、笠井 憲雪 編 P45, P111〜P113</ref>。発生学、生理学、神経科学などの基礎生物学や、病因病態の究明や創薬・治療法の開発など、マウスと同様に広く実験動物として利用されている。ゲノム解析が2004年に完了している<ref name=ref031><pubmed>15057822</pubmed></ref>。遺伝子組換え動物としてES細胞株が利用できないために、遺伝子組換えラットを作製することが困難とされていたが、 近年ではゲノム編集の技術を応用した遺伝子組換えラットの作製が報告されている<ref name=ref010 />。


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*マウスと比較すると約3倍の飼育スペースが必要である
*マウスと比較すると約3倍の飼育スペースが必要である


===ハダカデバネズミ===
====ハダカデバネズミ====
 [[ハダカデバネズミ]]([[Heterocephalus glaber|''Heterocephalus glaber'']])は、[[wikipedia:ja:ハダカデバネズミ属|ハダカデバネズミ属]]に分類される[[wikipedia:ja:齧歯類|齧歯類]]である。体長8~9cm、尾長3~4.5cm、体重30~80gで、体表には細かい体毛しか生えておらず地中で生活する<ref name=ref032><pubmed>14602989</pubmed></ref>。寿命は長く(平均寿命28歳)、[[wj:癌|癌]]に耐性があり、真社会性の社会構造を持つことが大きな特徴である<ref name=ref033><pubmed>1614546</pubmed></ref> <ref name=ref034><pubmed>17054663</pubmed></ref>。2011年に全ゲノムの解読が報告されている<ref name=ref035><pubmed>21993625</pubmed></ref>。
 [[ハダカデバネズミ]]([[Heterocephalus glaber|''Heterocephalus glaber'']])は、[[wikipedia:ja:ハダカデバネズミ属|ハダカデバネズミ属]]に分類される[[wikipedia:ja:齧歯類|齧歯類]]である。体長8~9cm、尾長3~4.5cm、体重30~80gで、体表には細かい体毛しか生えておらず地中で生活する<ref name=ref032><pubmed>14602989</pubmed></ref>。寿命は長く(平均寿命28歳)、[[wj:癌|癌]]に耐性があり、真社会性の社会構造を持つことが大きな特徴である<ref name=ref033><pubmed>1614546</pubmed></ref> <ref name=ref034><pubmed>17054663</pubmed></ref>。2011年に全ゲノムの解読が報告されている<ref name=ref035><pubmed>21993625</pubmed></ref>。


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*個体差が大きい
*個体差が大きい


===コモンマーモセット===
=== 霊長類 ===
====コモンマーモセット====
 [[コモンマーモセット]]([[Callithrix jacchus|''Callithrix jacchus'']])は、[[wikipedia:ja:霊長目|霊長目]][[wikipedia:ja:オマキザル科|オマキザル科]]([[wikipedia:ja:Cebidae|''Cebidae'']])[[wikipedia:ja:マーモセット属|マーモセット属]]に含まれる。成体での体長はオスで17〜22cm、メスで15〜24cm、尾の長さは24〜40cm、体重がオスで200〜400g、メスで200〜300g程度で、寿命は10〜15年である。染色体数は2n=46、ゲノムサイズは約3Gbである。妊娠期間は約5か月、周年繁殖で年間2回出産し、1産で2〜3頭を出産する。3〜4ヶ月程度の授乳期間を経て生後1年〜1年半で性成熟し、繁殖が可能となる<ref name=ref039>実験動物の技術と応用 実践編<br>日本実験動物協会 編 P347〜348, P353〜355</ref> <ref name=ref040><pubmed>24387631</pubmed></ref>。古くはウイルス感染や腫瘍学の分野で使用されたが、現在は生理学、薬理学、神経科学などの基礎生物学に広く使用されている。2014年にはメスのコモンマーモセットの全ゲノム解析が報告されている<ref name=ref041><pubmed>25038751</pubmed></ref>。
 [[コモンマーモセット]]([[Callithrix jacchus|''Callithrix jacchus'']])は、[[wikipedia:ja:霊長目|霊長目]][[wikipedia:ja:オマキザル科|オマキザル科]]([[wikipedia:ja:Cebidae|''Cebidae'']])[[wikipedia:ja:マーモセット属|マーモセット属]]に含まれる。成体での体長はオスで17〜22cm、メスで15〜24cm、尾の長さは24〜40cm、体重がオスで200〜400g、メスで200〜300g程度で、寿命は10〜15年である。染色体数は2n=46、ゲノムサイズは約3Gbである。妊娠期間は約5か月、周年繁殖で年間2回出産し、1産で2〜3頭を出産する。3〜4ヶ月程度の授乳期間を経て生後1年〜1年半で性成熟し、繁殖が可能となる<ref name=ref039>実験動物の技術と応用 実践編<br>日本実験動物協会 編 P347〜348, P353〜355</ref> <ref name=ref040><pubmed>24387631</pubmed></ref>。古くはウイルス感染や腫瘍学の分野で使用されたが、現在は生理学、薬理学、神経科学などの基礎生物学に広く使用されている。2014年にはメスのコモンマーモセットの全ゲノム解析が報告されている<ref name=ref041><pubmed>25038751</pubmed></ref>。


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*ヒトに近縁であるため生命倫理に問題がある
*ヒトに近縁であるため生命倫理に問題がある


===マカク属サル===
====マカク属サル====
 [[マカク属]]は[[wikipedia:ja:霊長目|霊長目]][[wikipedia:ja:オナガザル科|オナガザル科]](''Cercopithecidae'')に含まれる。実験動物としては、主に[[カニクイザル]]、[[アカゲザル]]、[[ニホンザル]]が使用されている。染色体数は2n=42、ゲノムサイズは約3Gb、遺伝子数は約20000個である。世代期間は約5〜20年で妊娠期間は160〜170日、1産1子である。生後約5年で性成熟し、成獣の寿命は20〜30年である<ref name=ref042>実験動物の技術と応用 実践編<br>日本実験動物協会 編 P345〜346, P353〜355</ref>。社会行動学、生態学、生理学、神経科学、精神薬理、感染症研究、再生医療学など幅広く研究に使用されている。
 [[マカク属]]は[[wikipedia:ja:霊長目|霊長目]][[wikipedia:ja:オナガザル科|オナガザル科]](''Cercopithecidae'')に含まれる。実験動物としては、主に[[カニクイザル]]、[[アカゲザル]]、[[ニホンザル]]が使用されている。染色体数は2n=42、ゲノムサイズは約3Gb、遺伝子数は約20000個である。世代期間は約5〜20年で妊娠期間は160〜170日、1産1子である。生後約5年で性成熟し、成獣の寿命は20〜30年である<ref name=ref042>実験動物の技術と応用 実践編<br>日本実験動物協会 編 P345〜346, P353〜355</ref>。社会行動学、生態学、生理学、神経科学、精神薬理、感染症研究、再生医療学など幅広く研究に使用されている。


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*ヒトに近縁であるため生命倫理に問題がある
*ヒトに近縁であるため生命倫理に問題がある


==== カニクイザル ====
===== カニクイザル =====
 カニクイザル([[Macaca fascicularis|''Macaca fascicularis'']])はインドネシア、フィリピンなどの東南アジアに生息する中型の[[サル]]で、輸入された個体が研究に利用されている。成体での体長はオスで41〜65cm、メスで39〜50cm、尾の長さはオスで44〜66cm、メスで40〜55cm、体重はオスで3.5~8.3kg、メスで2.5~5.7kgである<ref name=ref043>実験動物の技術と応用 実践編<br>日本実験動物協会 編  P347</ref>。実験用の主なサル類として神経生理学実験、生殖生理学実験、医薬品の安全性試験やワクチンの検定試験など広範囲に利用されている。2012年に全ゲノムの解読が完了している<ref name=ref044><pubmed>22747675</pubmed></ref>。
 カニクイザル([[Macaca fascicularis|''Macaca fascicularis'']])はインドネシア、フィリピンなどの東南アジアに生息する中型の[[サル]]で、輸入された個体が研究に利用されている。成体での体長はオスで41〜65cm、メスで39〜50cm、尾の長さはオスで44〜66cm、メスで40〜55cm、体重はオスで3.5~8.3kg、メスで2.5~5.7kgである<ref name=ref043>実験動物の技術と応用 実践編<br>日本実験動物協会 編  P347</ref>。実験用の主なサル類として神経生理学実験、生殖生理学実験、医薬品の安全性試験やワクチンの検定試験など広範囲に利用されている。2012年に全ゲノムの解読が完了している<ref name=ref044><pubmed>22747675</pubmed></ref>。


====アカゲザル====
=====アカゲザル=====
 アカゲザル([[Macaca mulatta|''Macaca mulatta'']]))はインド、中国などのアジア地域を生息し、腰、足、尾の付け根部分が赤褐色をしている中型のサルで、輸入された個体が研究に利用されている。成体での体長はオスで48〜64cm、メスで47〜53cm、尾の長さはオスで20〜31cm、メスで19〜28cm、体重はオスで5.6~10.9kg、メスで4.4~10.7kgである<ref name=ref043 />。カニクイザルと同様に広範囲な研究分野に用いられている。2007年に全ゲノムの解読が完了している<ref name=ref045><pubmed>17431167</pubmed></ref>。   
 アカゲザル([[Macaca mulatta|''Macaca mulatta'']]))はインド、中国などのアジア地域を生息し、腰、足、尾の付け根部分が赤褐色をしている中型のサルで、輸入された個体が研究に利用されている。成体での体長はオスで48〜64cm、メスで47〜53cm、尾の長さはオスで20〜31cm、メスで19〜28cm、体重はオスで5.6~10.9kg、メスで4.4~10.7kgである<ref name=ref043 />。カニクイザルと同様に広範囲な研究分野に用いられている。2007年に全ゲノムの解読が完了している<ref name=ref045><pubmed>17431167</pubmed></ref>。   


====ニホンザル====
=====ニホンザル=====
 ニホンザル([[Macaca fuscata|''Macaca fuscata'']])は日本固有種で、学習能力が高く、他種[[マカクザル]]に比べて遺伝変異性が低い。成体での体長はオスで54〜61cm、メスで47〜60cm、尾の長さはオスで8〜12cm、メスで7〜10cm、体重はオスで11.1~18kg、メスで8.3~16.3kgである<ref name=ref043 />。ナショナルバイオリソースプロジェクトより国内で繁殖された個体が研究に利用されている。
 ニホンザル([[Macaca fuscata|''Macaca fuscata'']])は日本固有種で、学習能力が高く、他種[[マカクザル]]に比べて遺伝変異性が低い。成体での体長はオスで54〜61cm、メスで47〜60cm、尾の長さはオスで8〜12cm、メスで7〜10cm、体重はオスで11.1~18kg、メスで8.3~16.3kgである<ref name=ref043 />。ナショナルバイオリソースプロジェクトより国内で繁殖された個体が研究に利用されている。


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