「眼優位性」の版間の差分

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==発達と可塑性==
==発達と可塑性==
 眼優位コラムの発達過程は広く研究されてきた。例えば、様々な生後齢の仔ネコを用いてTransneuronal labeling法により眼優位コラムを調べてみると、生後2週目では視覚野内に一様に分布し、コラム状の構造は認められない。しかしその後、生後4週目頃より次第に神経終末の局在化が進み、成熟脳にみられるようなパターンとなると報告された<ref><pubmed> 8980725 </pubmed></ref>。さらにこの時期に動物を暗所で飼育して視覚入力を奪うと眼優位コラムが明瞭でなくなること<ref><pubmed> 7207626 </pubmed></ref>、また一方の眼を閉じて視覚遮断すると遮蔽眼のコラムが縮小することも明らかとなった<ref><pubmed> 6772696 </pubmed></ref>。これらのことから、発達初期には両眼からの入力は分離しておらず混在しており、その後、発達するにつれて、視覚経験に依存した仕組みにより眼優位コラムが形成されると考えられた。しかし一方、サルでは、出生時にすでに明瞭なコラム構造が観察される(ref)。さらにネコやフェレットでも、Transneuronal labeling法によりコラム構造が検出されなかった幼弱な時期にも眼優位コラムが存在することが、LGN軸索の直接標識や内因性信号の光学計測により明らかとなった(ref)。以上より現在では、眼優位コラムの初期形成に視覚経験は必要でないが、その発達過程に視覚環境が影響すると考えられている。眼優位コラムの初期形成が、回路形成のガイダンス分子によるものなのか、神経活動に依存したメカニズムによるものなのか、あるいはその両方かは明らかになっていない。しかし網膜にパターン化された自発神経活動があること(ref)、その阻害が眼優位コラム形成に影響することなどから(ref)、視覚経験によらない自発神経活動がコラム形成に寄与するものと考えられている。
 眼優位コラムの発達過程は広く研究されてきた。例えば、様々な生後齢の仔ネコを用いてTransneuronal labeling法により眼優位コラムを調べてみると、生後2週目では視覚野内に一様に分布し、コラム状の構造は認められない。しかしその後、生後4週目頃より次第に神経終末の局在化が進み、成熟脳にみられるようなパターンとなると報告された<ref><pubmed> 8980725 </pubmed></ref>。さらにこの時期に動物を暗所で飼育して視覚入力を奪うと眼優位コラムが明瞭でなくなること<ref><pubmed> 7207626 </pubmed></ref>、また一方の眼を閉じて視覚遮断すると遮蔽眼のコラムが縮小することも明らかとなった<ref><pubmed> 6772696 </pubmed></ref><ref><pubmed> 702379 </pubmed></ref>。これらのことから、発達初期には両眼からの入力は分離しておらず混在しており、その後、発達するにつれて、視覚経験に依存した仕組みにより眼優位コラムが形成されると考えられた。しかし一方、サルでは、出生時にすでに明瞭なコラム構造が観察される<ref><pubmed> 8774447 </pubmed></ref>。さらにネコやフェレットでも、Transneuronal labeling法によりコラム構造が検出されなかった幼弱な時期にも眼優位コラムが存在することが、LGN軸索の直接標識や内因性信号の光学計測により明らかとなった<ref><pubmed> 11082053 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11135259 </pubmed></ref>。以上より現在では、眼優位コラムの初期形成に視覚経験は必要でないが、その発達過程に視覚環境が影響すると考えられている。眼優位コラムの初期形成が、回路形成のガイダンス分子によるものなのか、神経活動に依存したメカニズムによるものなのか、あるいはその両方かは明らかになっていない。しかし網膜にパターン化された自発神経活動があること、その阻害が眼優位コラム形成に影響することなどから、視覚経験によらない自発神経活動がコラム形成に寄与するものと考えられている。


==関連項目==
==関連項目==
同義語:(英) eye dominance
臨界期


==参考文献==
==参考文献==
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