「失認」の版間の差分

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82 バイト追加 、 2016年10月9日 (日)
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 一方、[[神経心理学]]・[[高次脳機能障害]]学のテキストを開くと、失認という用語が付いている症候はたくさんある。認識・認知を失ったのが「失認」とされるので、指や身体の認識・認知を失ったものは[[手指失認]]・[[身体失認]]である。病態を認識できないものは[[病態失認]]である。つまり、現象的に何かを「認識・認知」することを失う時にも、「失認」と命名されている。
 一方、[[神経心理学]]・[[高次脳機能障害]]学のテキストを開くと、失認という用語が付いている症候はたくさんある。認識・認知を失ったのが「失認」とされるので、指や身体の認識・認知を失ったものは[[手指失認]]・[[身体失認]]である。病態を認識できないものは[[病態失認]]である。つまり、現象的に何かを「認識・認知」することを失う時にも、「失認」と命名されている。
(初学者の理解の助けになるような図があればと思います)


==視覚関連の失認==  
==視覚関連の失認==  
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 認知症の方が道に迷ってしまい、家に帰れないことがある。これは全般的な知的機能の低下からと説明される。また、[[半側空間無視]]があっても道に迷ってしまうことがあろうが、その際は、半側空間無視による地誌的情報の処理障害による迷いと説明できる。これらは二次的に生じた症候であるが、しかし、道に迷ってしまう原因となる一次的な要因がないにも関わらず、慣れた道で迷ってしまうとすれば、「道に迷ってしまう」という特別な症候が存在することになる。そして、実際に、他の症候から二次的に発生したとは考えにくく、地誌的な情報の処理が特別に強く障害されている症例が報告されてきた。本邦の高橋<ref name=ref23>'''高橋伸佳'''<br>街並失認と道順障害 神経研究の進歩<br>''Brain and Nerve''.: 2011,63(8);830-838.</ref>がこの症候につき解析を深めた。症候を分類し、熟知しているはずの街並をみても何の建物かどこの風景かわからない街並失認と、一度に見通せない比較的広い範囲内において自己や他の地点の空間的位置を定位することが困難である道順障害に分けている。責任病巣として、街並失認例では[[海馬傍回]]後部、舌状回前部とこれに隣接する紡錘状回損傷が、道順障害は脳梁膨大後域から頭頂葉内側部にかけての損傷が重視されている。
 認知症の方が道に迷ってしまい、家に帰れないことがある。これは全般的な知的機能の低下からと説明される。また、[[半側空間無視]]があっても道に迷ってしまうことがあろうが、その際は、半側空間無視による地誌的情報の処理障害による迷いと説明できる。これらは二次的に生じた症候であるが、しかし、道に迷ってしまう原因となる一次的な要因がないにも関わらず、慣れた道で迷ってしまうとすれば、「道に迷ってしまう」という特別な症候が存在することになる。そして、実際に、他の症候から二次的に発生したとは考えにくく、地誌的な情報の処理が特別に強く障害されている症例が報告されてきた。本邦の高橋<ref name=ref23>'''高橋伸佳'''<br>街並失認と道順障害 神経研究の進歩<br>''Brain and Nerve''.: 2011,63(8);830-838.</ref>がこの症候につき解析を深めた。症候を分類し、熟知しているはずの街並をみても何の建物かどこの風景かわからない街並失認と、一度に見通せない比較的広い範囲内において自己や他の地点の空間的位置を定位することが困難である道順障害に分けている。責任病巣として、街並失認例では[[海馬傍回]]後部、舌状回前部とこれに隣接する紡錘状回損傷が、道順障害は脳梁膨大後域から頭頂葉内側部にかけての損傷が重視されている。


 風景によって賦活される脳部位として、海馬傍回後部から舌状回前部の紡錘状回場所領域と、脳梁膨大後皮質と後帯状皮質が報告されている。地誌的見当識障害の損傷部位と重なり、これらの部位が地誌的見当識と関連することを支持する報告である<ref name=ref24><pubmed>9560155</pubmed></ref> <ref name=ref25><pubmed>9106758</pubmed></ref>。  
 風景によって賦活される脳部位として、海馬傍回後部から舌状回前部の紡錘状回場所領域と、脳梁膨大後皮質と後帯状皮質が報告されている。地誌的見当識障害の損傷部位と重なり、これらの部位が地誌的見当識と関連することを支持する報告である<ref name=ref24><pubmed>9560155</pubmed></ref> <ref name=ref25><pubmed>9106758</pubmed></ref>。


==聴覚関連の失認 ==  
==聴覚関連の失認 ==  

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