「空間記憶」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
12行目: 12行目:


=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み ===
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み ===
 空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象(認知地図)に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt & Mittelstaedt (1980)<ref>'''Mittelstaedt, M.L., & Mittelstaedt, H.'''(1980)<br>Homing by path integration in the mammal.<br>''Naturwissenschaften.'':1980,67:566–567</ref>は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題(目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす)の成績に差がなかったことが報告されている(Sharager et al., 2008)。Sharager et al. 2008は、経路統合には海馬や嗅内皮質は関与せず、頭頂皮質が関与している可能性を指摘している。
 空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象(認知地図)に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt & Mittelstaedt (1980)<ref>'''Mittelstaedt, M.L., & Mittelstaedt, H.'''(1980)<br>Homing by path integration in the mammal.<br>''Naturwissenschaften.'':1980,67:566–567</ref>は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題(目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす)の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、頭頂皮質が関与している可能性が指摘されている<ref><pubmed>18687893 </pubmed></ref>。
 
== 空間記憶の神経基盤  ==
== 空間記憶の神経基盤  ==


214

回編集

案内メニュー