「言語進化」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
20行目: 20行目:
 現生人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)は15万年ほど前に誕生し、その一部が6万年ほど前にアフリカを出て、世界中に分布するようになった。世界の言語が持つ高い類似性から、最初の言語は現世人類が世界に拡散する前、10万年から8万年ほど前に出現したと考えられる。逆に言えば、現生人類の出現から言語の出現まで、5-6万年しかかかっていない。この間に、現生人類の脳を構成する遺伝子群に変異が生じたであろうか。また、人類の脳は、最初の言語の出現から現在まで、言語という環境と共にいることで、何らかの変化を経ているだろうか。
 現生人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)は15万年ほど前に誕生し、その一部が6万年ほど前にアフリカを出て、世界中に分布するようになった。世界の言語が持つ高い類似性から、最初の言語は現世人類が世界に拡散する前、10万年から8万年ほど前に出現したと考えられる。逆に言えば、現生人類の出現から言語の出現まで、5-6万年しかかかっていない。この間に、現生人類の脳を構成する遺伝子群に変異が生じたであろうか。また、人類の脳は、最初の言語の出現から現在まで、言語という環境と共にいることで、何らかの変化を経ているだろうか。


 前者の問題について論ずるには、言語以前の現生人類の脳と、言語以後の現生人類の脳の違いを調べねばならぬが、必要なデータがない。後者の問題については、音調性言語を使う民族とそうでない民族で、脳の形成に関わる遺伝子を比較した研究がある<ref name=ref1><pubmed>21615290</pubmed></ref>。これによれば、脳形成と発達に関わる2つの遺伝子(ASPMとMicrocephalin)が、音調性言語を使う民族の分布に有意に対応している。このことは、音調性言語を使う民族に特有の脳構造があることを示唆するが、それがどういうものかはわかっていない。
 前者の問題について論ずるには、言語以前の現生人類の脳と、言語以後の現生人類の脳の違いを調べねばならぬが、必要なデータがない。後者の問題については、音調性言語を使う民族とそうでない民族で、脳の形成に関わる遺伝子を比較した研究がある<ref name=ref1><pubmed>21615290</pubmed></ref>。これによれば、脳形成と発達に関わる2つの遺伝子(ASPMとMicrocephalin)が、音調性言語を使う民族の分布に有意に対応している。このことは、音調性言語(音の高さの変化により単語が異なる意味になる言語、中国語など)を使う民族の分布に有意に対応している。このことは、音調言語を使う民族に特有の脳構造があることを示唆するが、それがどういうものかはわかっていない。


===言語と自己家畜化===
===言語と自己家畜化===

案内メニュー