「ソニック・ヘッジホッグ」の版間の差分

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 Gliタンパク質の[[DNA]]結合配列にはGACCACCCAという配列が提唱されてきた<ref name=ref45><pubmed>9118802</pubmed></ref> が、最近、解離定数(結合のアフィニティー)が異なる別の配列も見つかっている<ref><pubmed>23153497</pubmed></ref>。
 Gliタンパク質の[[DNA]]結合配列にはGACCACCCAという配列が提唱されてきた<ref name=ref45><pubmed>9118802</pubmed></ref> が、最近、解離定数(結合のアフィニティー)が異なる別の配列も見つかっている<ref><pubmed>23153497</pubmed></ref>。


 Gli1-3は多くの臓器に発現しているためにそれらの遺伝子変異マウスの表現型も多様であり<ref><pubmed>9731531</pubmed></ref>、神経系で強い表現型が現れるものもある。Gli2変異マウスでは、Shhシグナルの影響を受ける底板と[[V3介在神経]]領域の[[分化]]が抑制され、パターン形成に異常が生じて出生直後に死亡する<ref><pubmed>9636069</pubmed></ref>。一方、Gli3変異マウスでは、主に脳領域でソニック・ヘッジホッグシグナルがむしろ亢進した表現型になるため<ref><pubmed>8387379</pubmed></ref><ref><pubmed>11017169</pubmed></ref>、Gli3が主に転写抑制型として働くことが示唆される。Gli1単独の変異マウスでは神経系では大きな表現型が見つかっていないが、Gli2変異による表現型をGli1のノックインによって相補することができるため、Gli2の転写活性型と同様の働きをしていると考えられる<ref><pubmed>10725236</pubmed></ref><ref><pubmed>11748151</pubmed></ref>。
 Gli1-3は多くの臓器に発現しているためにそれらの遺伝子変異マウスの表現型も多様であり<ref><pubmed>9731531</pubmed></ref>、神経系で強い表現型が現れるものもある。Gli2変異マウスでは、Shhシグナルの影響を受ける底板とV3[[介在神経]]領域の[[分化]]が抑制され、パターン形成に異常が生じて出生直後に死亡する<ref><pubmed>9636069</pubmed></ref>。一方、Gli3変異マウスでは、主に脳領域でソニック・ヘッジホッグシグナルがむしろ亢進した表現型になるため<ref><pubmed>8387379</pubmed></ref><ref><pubmed>11017169</pubmed></ref>、Gli3が主に転写抑制型として働くことが示唆される。Gli1単独の変異マウスでは神経系では大きな表現型が見つかっていないが、Gli2変異による表現型をGli1のノックインによって相補することができるため、Gli2の転写活性型と同様の働きをしていると考えられる<ref><pubmed>10725236</pubmed></ref><ref><pubmed>11748151</pubmed></ref>。


[[image:Shh3.png|thumb|300px|'''図3.Gliタンパク質の構造'''<br>(<ref name=ref31><pubmed>21801010</pubmed></ref><ref name=ref34><pubmed>16611981</pubmed></ref>を改変した)アミノ酸番号は、マウスのものである。*はPKAによるリン酸化サイト、ZnF:Znフィンガー、矢頭は分解されて転写抑制型を生じるサイト<ref name=ref34><pubmed>16611981</pubmed></ref>。]]
[[image:Shh3.png|thumb|300px|'''図3.Gliタンパク質の構造'''<br>(<ref name=ref31><pubmed>21801010</pubmed></ref><ref name=ref34><pubmed>16611981</pubmed></ref>を改変した)アミノ酸番号は、マウスのものである。*はPKAによるリン酸化サイト、ZnF:Znフィンガー、矢頭は分解されて転写抑制型を生じるサイト<ref name=ref34><pubmed>16611981</pubmed></ref>。]]
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 先に述べたようにソニック・ヘッジホッグシグナルには細胞膜上に形成される1次繊毛の存在が必須である。1次繊毛に形成不全が生じるとソニック・ヘッジホッグシグナルが細胞に導入されず、結果として[[神経管]]はソニック・ヘッジホッグ遺伝子変異マウスに類似した表現型になる<ref name=ref39><pubmed>23799571</pubmed></ref>。また、Gli3の不活性型を生じるプロセシングにはPKAが必要であり、PKA遺伝子のノックアウトはソニック・ヘッジホッグシグナルの異常亢進を反映した表現型となる<ref><pubmed>11886853</pubmed></ref>。
 先に述べたようにソニック・ヘッジホッグシグナルには細胞膜上に形成される1次繊毛の存在が必須である。1次繊毛に形成不全が生じるとソニック・ヘッジホッグシグナルが細胞に導入されず、結果として[[神経管]]はソニック・ヘッジホッグ遺伝子変異マウスに類似した表現型になる<ref name=ref39><pubmed>23799571</pubmed></ref>。また、Gli3の不活性型を生じるプロセシングにはPKAが必要であり、PKA遺伝子のノックアウトはソニック・ヘッジホッグシグナルの異常亢進を反映した表現型となる<ref><pubmed>11886853</pubmed></ref>。


 Shh-Ptc-Smo-Gliを主軸とするソニック・ヘッジホッグシグナルを制御する調節因子の存在も知られている。[[SuFu]]([[Suppressor of Fused]])は[[cAMP]]依存的にGli2/3と結合して、タンパク質の安定化と抑制型を産出する<ref name=ref40><pubmed>20360384</pubmed></ref>。
 Shh-Ptc-Smo-Gliを主軸とするソニック・ヘッジホッグシグナルを制御する調節因子の存在も知られている。細胞質に局在するタンパク質の一種[[SuFu]]([[Suppressor of Fused]])は[[cAMP]]依存的に抑制型Gli2/3と結合して、安定化する<ref name=ref40><pubmed>20360384</pubmed></ref>。


 そのほかに[[GPR161]](Gタンパク質共役型受容体)のように繊毛に局在してそのcAMP濃度を上昇させ、ソニック・ヘッジホッグシグナルを負に制御する因子の存在も知られている<ref><pubmed>16459298</pubmed></ref><ref><pubmed>20956384</pubmed></ref><ref><pubmed>23332756</pubmed></ref>。
 そのほかに[[GPR161]](Gタンパク質共役型受容体)のように繊毛に局在してそのcAMP濃度を上昇させ、ソニック・ヘッジホッグシグナルを負に制御する因子の存在も知られている<ref><pubmed>16459298</pubmed></ref><ref><pubmed>20956384</pubmed></ref><ref><pubmed>23332756</pubmed></ref>。

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