「ソニック・ヘッジホッグ」の版間の差分

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==== ほかの経路 ====
==== ほかの経路 ====
 ソニック・ヘッジホッグは交連神経細胞のガイダンスに必須である<ref name=ref58><pubmed>15746914</pubmed></ref><ref name=ref59><pubmed>19447091</pubmed></ref><ref name=ref60><pubmed>12679031</pubmed></ref>。ソニック・ヘッジホッグは神経のガイダンス因子として知られる[[ネトリン]]と協調して働き、[[交連神経]]が[[脊髄]]正中(midline)を交差するのに必要である<ref name=ref60><pubmed>12679031</pubmed></ref>。このガイダンスにはPtc/Smoではなく[[HIP]]([[hedgehog interacting protein]])がソニック・ヘッジホッグの受容体になっており<ref name=ref58 /> 、さらに細胞内では[[Srcファミリーキナーゼ]]([[Src family kinase]]; [[SFK]])が活性化されている<ref name=ref59 /> 。また、繊維芽細胞の化学遊走にもソニック・ヘッジホッグが関与しているという報告があり、さらにこの現象においてはSmoが繊毛に局在しなくても細胞内シグナルが惹起されるため、従来とは異なるメカニズムが示唆されている<ref><pubmed>22912493</pubmed></ref>。
 ソニック・ヘッジホッグは交連神経細胞のガイダンスに必須である<ref name=ref58><pubmed>15746914</pubmed></ref><ref name=ref59><pubmed>19447091</pubmed></ref><ref name=ref60><pubmed>12679031</pubmed></ref>。ソニック・ヘッジホッグは神経のガイダンス因子として知られる[[ネトリン]]と協調して働き、[[交連神経]]が[[脊髄]]正中(midline)を交差するのに必要である<ref name=ref60><pubmed>12679031</pubmed></ref>。このガイダンスにはPtc/Smoではなく[[HIP]]([[hedgehog interacting protein]])がソニック・ヘッジホッグの受容体になっており<ref name=ref58 /> 、さらに細胞内では[[Srcファミリーキナーゼ]]([[Src family kinase]]; [[SFK]])が活性化されている<ref name=ref59 /> 。また、線維芽細胞の化学遊走にもソニック・ヘッジホッグが関与しているという報告があり、さらにこの現象においてはSmoが繊毛に局在しなくても細胞内シグナルが惹起されるため、従来とは異なるメカニズムが示唆されている<ref><pubmed>22912493</pubmed></ref>。


===神経系での機能===
===神経系での機能===
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==実験手法 ==
==実験手法 ==
 細胞レベルでの解析においてソニック・ヘッジホッグシグナルに反応する培養細胞は少なく、よく使われるのはマウスの繊維芽細胞NIH3T3細胞<ref name=ref69><pubmed>25833741</pubmed></ref>やヒト角化細胞<ref><pubmed>16880536</pubmed></ref>、ニワトリやマウスの神経前駆細胞([[胚性幹細胞]]から分化させたものや胚から単離したもの)である<ref name=ref71><pubmed>26972603</pubmed></ref><ref><pubmed>25026549</pubmed></ref>。ソニック・ヘッジホッグシグナルを受容する1次繊毛は、[[細胞周期]]のG0/G1期にのみ生じるため、特にNIH3T3でソニック・ヘッジホッグシグナルの実験を行う際にはあらかじめ血清飢餓状態にしてG0/G1期の細胞を多数得ておくことが重要である。細胞において実験的にソニック・ヘッジホッグシグナルを活性化する場合、大腸菌で作成した(つまりコレステロール修飾がされていない)リコンビナントタンパク質も活性は持っている<ref name=ref71><pubmed>26972603</pubmed></ref><ref><pubmed>10564658</pubmed></ref><ref name=ref74><pubmed>18046410</pubmed></ref>。化合物としては、purmorphamineとSAGがSmoを標的とし<ref><pubmed>16408082</pubmed></ref>、ソニック・ヘッジホッグのアゴニストとして用いられている。一方、cyclopamineとSANT-1は同じくSmoを標的とし、その活性を阻害することによりソニック・ヘッジホッグシグナルの[[アンタゴニスト]]として働く<ref name=ref77><pubmed>12414725</pubmed></ref><ref name=ref078><pubmed>23548480</pubmed></ref>。 
 細胞レベルでの解析においてソニック・ヘッジホッグシグナルに反応する培養細胞は少なく、よく使われるのはマウスの線維芽細胞NIH3T3細胞<ref name=ref69><pubmed>25833741</pubmed></ref>やヒト角化細胞<ref><pubmed>16880536</pubmed></ref>、ニワトリやマウスの神経前駆細胞([[胚性幹細胞]]から分化させたものや胚から単離したもの)である<ref name=ref71><pubmed>26972603</pubmed></ref><ref><pubmed>25026549</pubmed></ref>。ソニック・ヘッジホッグシグナルを受容する1次繊毛は、[[細胞周期]]のG0/G1期にのみ生じるため、特にNIH3T3でソニック・ヘッジホッグシグナルの実験を行う際にはあらかじめ血清飢餓状態にしてG0/G1期の細胞を多数得ておくことが重要である。細胞において実験的にソニック・ヘッジホッグシグナルを活性化する場合、大腸菌で作成した(つまりコレステロール修飾がされていない)リコンビナントタンパク質も活性は持っている<ref name=ref71><pubmed>26972603</pubmed></ref><ref><pubmed>10564658</pubmed></ref><ref name=ref74><pubmed>18046410</pubmed></ref>。化合物としては、purmorphamineとSAGがSmoを標的とし<ref><pubmed>16408082</pubmed></ref>、ソニック・ヘッジホッグのアゴニストとして用いられている。一方、cyclopamineとSANT-1は同じくSmoを標的とし、その活性を阻害することによりソニック・ヘッジホッグシグナルの[[アンタゴニスト]]として働く<ref name=ref77><pubmed>12414725</pubmed></ref><ref name=ref078><pubmed>23548480</pubmed></ref>。 


 ソニック・ヘッジホッグシグナルの強度を計測する方法としては、luciferaseまたはGFPのレポーターコンストラクトが多用されるが<ref name=ref45><pubmed>9118802</pubmed></ref><ref name=ref76><pubmed>22265416</pubmed></ref>、ほかの方法として、定量PCRを用いてソニック・ヘッジホッグシグナルのターゲット遺伝子であるGli1やPtc1の発現量を解析してもよい<ref name=ref69><pubmed>25833741</pubmed></ref><ref name=ref74><pubmed>18046410</pubmed></ref>。NIH3T3では、ソニック・ヘッジホッグシグナルの添加時間とともにGli1やPtc1の発現量が増加する<ref name=ref69><pubmed>25833741</pubmed></ref>。一方、神経前駆細胞内ではソニック・ヘッジホッグシグナルは数時間以内にいったん活性化し、その後、負のフィードバックが起こって鎮静化する<ref name=ref74><pubmed>18046410</pubmed></ref><ref name=ref76><pubmed>22265416</pubmed></ref><ref><pubmed>20532235</pubmed></ref>。この負のフィードバックが起きるメカニズムとしては、Ptcが細胞膜上に多数存在するようになってソニック・ヘッジホッグタンパク質が枯渇するというもの<ref name=ref74><pubmed>18046410</pubmed></ref>や、活性型Gliタンパク質が不活性型に比べて不安定であるというもの<ref name=ref40><pubmed>20360384</pubmed></ref>などがあるが、全容はまだ明らかになっていない。
 ソニック・ヘッジホッグシグナルの強度を計測する方法としては、luciferaseまたはGFPのレポーターコンストラクトが多用されるが<ref name=ref45><pubmed>9118802</pubmed></ref><ref name=ref76><pubmed>22265416</pubmed></ref>、ほかの方法として、定量PCRを用いてソニック・ヘッジホッグシグナルのターゲット遺伝子であるGli1やPtc1の発現量を解析してもよい<ref name=ref69><pubmed>25833741</pubmed></ref><ref name=ref74><pubmed>18046410</pubmed></ref>。NIH3T3では、ソニック・ヘッジホッグシグナルの添加時間とともにGli1やPtc1の発現量が増加する<ref name=ref69><pubmed>25833741</pubmed></ref>。一方、神経前駆細胞内ではソニック・ヘッジホッグシグナルは数時間以内にいったん活性化し、その後、負のフィードバックが起こって鎮静化する<ref name=ref74><pubmed>18046410</pubmed></ref><ref name=ref76><pubmed>22265416</pubmed></ref><ref><pubmed>20532235</pubmed></ref>。この負のフィードバックが起きるメカニズムとしては、Ptcが細胞膜上に多数存在するようになってソニック・ヘッジホッグタンパク質が枯渇するというもの<ref name=ref74><pubmed>18046410</pubmed></ref>や、活性型Gliタンパク質が不活性型に比べて不安定であるというもの<ref name=ref40><pubmed>20360384</pubmed></ref>などがあるが、全容はまだ明らかになっていない。

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