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これまでの研究により、CRMP2がアルツハイマー病の発症に関与している可能性が示唆されている。3F4と呼ばれる抗リン酸化CRMP2抗体が、粗精製した過剰にリン酸化されたタウの集合体([[神経原線維変化]])と反応することが報告された<ref name="ref27"><pubmed> 9545313 </pubmed></ref>。この抗体はCdk5やGSK3βによりリン酸化されたCRMP2を認識することから、CRMP2のリン酸化がアルツハイマー病の原因因子の一つである可能性がある<ref name="ref28"><pubmed> 10757975 </pubmed></ref>。 | これまでの研究により、CRMP2がアルツハイマー病の発症に関与している可能性が示唆されている。3F4と呼ばれる抗リン酸化CRMP2抗体が、粗精製した過剰にリン酸化されたタウの集合体([[神経原線維変化]])と反応することが報告された<ref name="ref27"><pubmed> 9545313 </pubmed></ref>。この抗体はCdk5やGSK3βによりリン酸化されたCRMP2を認識することから、CRMP2のリン酸化がアルツハイマー病の原因因子の一つである可能性がある<ref name="ref28"><pubmed> 10757975 </pubmed></ref>。 | ||
さらに、リン酸化CRMP2がアルツハイマー病の脳やアルツハイマー病の疾患[[モデルマウス]]において増加することが確認されている<ref name="ref29"><pubmed> 17683481 </pubmed></ref>。また、アルツハイマー病の[[海馬]][[CA1]]領域においてSema3A陽性神経細胞の数が増加することが報告されていることから<ref name="ref30"><pubmed> 15485501 </pubmed></ref>、アルツハイマー病の脳において、増加したSema3Aのシグナル伝達によりCRMP2のリン酸化が促進される可能性が考えられる。 | |||
CRPMノックアウトマウスの解析において、神経発生に関する表現型だけでなく、行動異常や疾患に関連する表現型も観察されている('''表2''')<ref name=Nagai2016><pubmed>26795088</pubmed></ref> 。 | CRPMノックアウトマウスの解析において、神経発生に関する表現型だけでなく、行動異常や疾患に関連する表現型も観察されている('''表2''')<ref name=Nagai2016><pubmed>26795088</pubmed></ref> 。 | ||
CRMP1ノックアウトマウスの行動解析により、高活動性、[[空間学習]]と[[記憶]]の障害、[[プレパルス抑制]]などの統合失調症に見られる症状に異常が見られた<ref name=Yamashita2013><pubmed>24409129</pubmed></ref>。 | |||
非活性型CRMP2 (CRMP2 S522A) のノックインマウスでは、中枢神経に障害を受けた際に起こる炎症と瘢痕形成に抑制効果が見られた<ref name=Nagai2016><pubmed>26795088</pubmed></ref> | 非活性型CRMP2 (CRMP2 S522A) のノックインマウスでは、中枢神経に障害を受けた際に起こる炎症と瘢痕形成に抑制効果が見られた<ref name=Nagai2016><pubmed>26795088</pubmed></ref> 。CRMP2ノックアウトマウスの包括的な行動解析により、高活動性、[[感情行動障害]]、[[社会性]]低下などの神経精神疾患に見られる症状に異常が見られた<ref name=Nakamura2016><pubmed>27582038</pubmed></ref> 。 | ||
CRMP4ノックアウトマウスでは、中枢神経に障害を受けた際に起こる炎症と瘢痕形成に抑制効果が見られ、障害を受けた後の運動性の回復に改善が見られることが報告された<ref name=Nagai2015><pubmed>25652774</pubmed></ref> | CRMP4ノックアウトマウスでは、中枢神経に障害を受けた際に起こる炎症と瘢痕形成に抑制効果が見られ、障害を受けた後の運動性の回復に改善が見られることが報告された<ref name=Nagai2015><pubmed>25652774</pubmed></ref>。パーキンソン病モデルマウスにおいて、CRMP4の欠失は[[ドーパミン]]作動性[[神経細胞死]]の遅延と炎症抑制を示すことが報告されている<ref name=Tonouchi2016><pubmed>26991935</pubmed></ref>。 | ||
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|+表2. CRMPノックアウトマウスの表現型 | |+表2. CRMPノックアウトマウスの表現型 | ||
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<ref name=Shih2001><pubmed>11562390</pubmed></ref>。 | <ref name=Shih2001><pubmed>11562390</pubmed></ref>。 | ||
CRMP2の発現は、[[大腸がん]]、[[肺がん]]で上昇し、[[乳がん]]で低下することが報告されている<ref name=Oliemuller2013><pubmed>23023514</pubmed></ref><ref name=Shimada2014><pubmed>23381229</pubmed></ref><ref name=Wu2008><pubmed>18203259</pubmed></ref>。乳がんにおいて、全体のCRMP2は低下しているが、核に移行したリン酸化CRMP2は増加しており、CRMP2のリン酸化は乳がんの進行に関与している可能性が示唆されている<ref name=Shimada2014><pubmed>23381229</pubmed></ref> 。 | |||
CRMP4の発現は、[[前立腺がん]]で低下し、[[膵臓がん]]や[[神経芽腫]]では上昇していることが報告されている<ref name=Choi2005><pubmed>15933812</pubmed></ref><ref name=Gao2010><pubmed>20543870</pubmed></ref><ref name=Hiroshima2013><pubmed>22805864</pubmed></ref><ref name=Tan2013><pubmed>24011394</pubmed></ref> 。 | |||
CRMP5の発現は、[[神経内分泌肺がん]]や[[膠芽腫]]で上昇していることが報告されている<ref name=Liang2005><pubmed>15827123</pubmed></ref><ref name=Meyronet2008><pubmed>18769332</pubmed></ref>。がん組織における発現量の違いと病因の関係の理解やがん診断のためのバイオマーカーとしての利用などが期待される。 | |||
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