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== 存在部位== | == 存在部位== | ||
味蕾は舌上の3種の乳頭(茸状乳頭、有郭乳頭、葉状乳頭)、軟口蓋、喉頭蓋、咽頭などに存在する。舌の糸状乳頭には存在しない。 | 味蕾は舌上の3種の乳頭(茸状乳頭、有郭乳頭、葉状乳頭)、軟口蓋、喉頭蓋、咽頭などに存在する。舌の糸状乳頭には存在しない。 | ||
[[ファイル:味蕾図1.jpg|サムネイル|300px|'''図1. マウス舌上における味蕾の存在位置'''<br>舌上では味蕾は茸状、有郭、葉状乳頭に存在する。有郭、葉状乳頭では、溝の壁面に沿って多くの味蕾が存在する。]] | |||
=== 茸状乳頭 === | === 茸状乳頭 === | ||
茸状乳頭(じじょう)は舌の前方部に点在し、舌の先端部での密度が高い。各茸状乳頭には[[げっ歯類]]では1つ、[[ヒト]]では1~数個の味蕾が存在する。茸状乳頭味蕾は鼓索神経により支配される。 | 茸状乳頭(じじょう)は舌の前方部に点在し、舌の先端部での密度が高い。各茸状乳頭には[[げっ歯類]]では1つ、[[ヒト]]では1~数個の味蕾が存在する。茸状乳頭味蕾は鼓索神経により支配される。 | ||
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== 味蕾細胞 == | == 味蕾細胞 == | ||
各味蕾の中には、その長軸方向に沿って50~150個程度の細胞が存在し、味孔を介して口腔内の化学物質(味物質)と接触する。これら細胞は電子顕微鏡像よりI、II、III型に分類され<ref>Murray R. The ultrastructure of taste buds. In: Friedemann, I. (Ed.) | [[ファイル:味蕾図2.jpg|サムネイル|300px|'''図2. マウス有郭乳頭の薄切[[切片]]像。'''<br>緑色の細胞はPLCβ2を発現する味細胞(II型細胞)。マゼンタの細胞はCAR4を発現する細胞(III型細胞)。白色の矢頭は味孔の位置を示す。バーは10μm。]] | ||
各味蕾の中には、その長軸方向に沿って50~150個程度の細胞が存在し、味孔を介して口腔内の化学物質(味物質)と接触する。これら細胞は電子顕微鏡像よりI、II、III型に分類され<ref>'''Murray R.'''<br>The ultrastructure of taste buds.<br>In: Friedemann, I. (Ed.)The Ultrastructure of Sensory Organs<br>''North-Holland'', Amsterdam, pp. 1-81, 1973</ref>3)、基底部には幹細胞と考えられるIV型細胞が存在する。味蕾細胞のターンオーバーは早く、約10日とされる<ref><pubmed>5884625</pubmed></ref>4)。 | |||
=== I型細胞 === | === I型細胞 === | ||
電子顕微鏡像で細胞質の部分が暗く見えることから'''暗調細胞''' | 電子顕微鏡像で細胞質の部分が暗く見えることから'''暗調細胞'''とも呼ばれる。味蕾の中ではおよそ50~60%程度の割合を占める。 | ||
味孔側には長い微絨毛が存在し、湾入した核を持つ。Glutamate-aspartate transporter (GLAST)<ref><pubmed>10998100</pubmed></ref>5)やnucleoside triphosphate diphosphohydrolase-2(ecto-ATPase)<ref><pubmed>16680780</pubmed></ref>6)などを発現し、神経系における[[グリア細胞]]様の機能を持つと考えられる。また形態的にはII型細胞やIII型細胞を包むように存在する様子が見られる。I型細胞には塩味受容体として機能する上皮性[[Na+チャネル]](ENaC)が存在するという報告<ref><pubmed>18171468</pubmed></ref>7)もあるが、I型細胞が塩味受容細胞として機能するかは不明である。 | |||
=== II型細胞 === | === II型細胞 === | ||
電子顕微鏡像では細胞質の部分が明るく見えることから明調細胞とも呼ばれる。味蕾の中では20~30%程度の割合を占める。 | 電子顕微鏡像では細胞質の部分が明るく見えることから明調細胞とも呼ばれる。味蕾の中では20~30%程度の割合を占める。 | ||
味孔側には短い微絨毛が存在し、大きな丸い核を持つ。甘味、苦味、うま味の受容に関連する遺伝子群[gustducin, phospholipase Cβ2, transient receptor potential channel M5 (TRPM5)など]を発現し<ref name=ref14681927><pubmed>14681927</pubmed></ref><ref><pubmed>10940948</pubmed></ref><ref><pubmed></pubmed></ref>8-10)、これらの味質の受容を担うと考えられる。実際II型細胞は甘味、苦味またはうま味刺激に対し最も強い応答を示す<ref name=ref17913917><pubmed></pubmed></ref><ref name= | 味孔側には短い微絨毛が存在し、大きな丸い核を持つ。甘味、苦味、うま味の受容に関連する遺伝子群[gustducin, phospholipase Cβ2, transient receptor potential channel M5 (TRPM5)など]を発現し<ref name=ref14681927><pubmed>14681927</pubmed></ref><ref><pubmed>10940948</pubmed></ref><ref><pubmed>12368808</pubmed></ref>8-10)、これらの味質の受容を担うと考えられる。実際II型細胞は甘味、苦味またはうま味刺激に対し最も強い応答を示す<ref name=ref17913917><pubmed>17913917</pubmed></ref><ref name=ref12368808 ><pubmed>12368808</pubmed></ref>11,12)。II型細胞には明確な[[シナプス]]構造が見られないが、神経線維と非常に近接した部位にsubsurface cisternaeと呼ばれる構造が見られ<ref name=ref14681927 />8)、ここで神経への情報伝達が行われると考えられる。 | ||
II型細胞は味刺激に応じ活動電位を生じ、[[Calcium]] homeostasis modulator 1 (CALHM1)やヘミチャネルを通じ[[ATP]]を放出する<ref><pubmed>17389364</pubmed></ref><ref><pubmed>20519578</pubmed></ref><ref><pubmed>23467090</pubmed></ref>13-15)。放出されたATPは神経側に存在する受容体(P2X2/P2X3)を活性化<ref><pubmed>16322458</pubmed></ref>16)することでII型細胞から神経線維へシナプスを介さずに情報が伝達されると考えられる。skn-1a遺伝子欠損[[マウス]]ではII型細胞が消失することから<ref><pubmed>21572433</pubmed></ref>17)、skn-1aがII型細胞の[[分化]]や維持に重要な機能を持つと考えられる。 | |||
=== III型細胞 === | === III型細胞 === | ||
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== 味細胞の応答性 == | == 味細胞の応答性 == | ||
[[味覚受容体]]の発現を[[検索]]した研究により、甘味、うま味、苦味、酸味、塩味の受容体はそれぞれ別々の味細胞に発現することが示され<ref><pubmed>11509186</pubmed></ref><ref><pubmed>16929298</pubmed></ref><ref><pubmed>16891422</pubmed></ref><ref><pubmed>20107438</pubmed></ref>24-27)、味細胞には味質特異性があることを示唆している。しかし、マウス味細胞から味応答を記録した場合、一部の味細胞は明らかに複数の味質に対し応答する<ref name=ref16971686 /><ref name=ref17913917 /><ref name= | [[味覚受容体]]の発現を[[検索]]した研究により、甘味、うま味、苦味、酸味、塩味の受容体はそれぞれ別々の味細胞に発現することが示され<ref><pubmed>11509186</pubmed></ref><ref><pubmed>16929298</pubmed></ref><ref><pubmed>16891422</pubmed></ref><ref><pubmed>20107438</pubmed></ref>24-27)、味細胞には味質特異性があることを示唆している。しかし、マウス味細胞から味応答を記録した場合、一部の味細胞は明らかに複数の味質に対し応答する<ref name=ref16971686 /><ref name=ref17913917 /><ref name=ref12368808 />。同様に、味神経線維や[[神経節]]細胞においても複数の味質に対し応答するものが存在することから<ref><pubmed>7116182</pubmed></ref><ref><pubmed>26373451</pubmed></ref>、実際には一部の味細胞は多種の味質に対し応答し得ると考えられる。以下に、これまでに明らかとなっているマウス味細胞の応答性について概説する。 | ||
=== 甘味応答味細胞 === | === 甘味応答味細胞 === | ||
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=== 酸味応答細胞 === | === 酸味応答細胞 === | ||
酸味応答細胞は主にIII型細胞に見られる。酸味に特異的に応答するタイプと様々な電解質に応答するタイプに分けられる。酸味応答細胞は様々な酸味物質に対し応答を示し、同じpHであれば強酸(HClなど)よりも弱酸(酢酸、クエン酸など)に対しより大きい応答を示す<ref name= | 酸味応答細胞は主にIII型細胞に見られる。酸味に特異的に応答するタイプと様々な電解質に応答するタイプに分けられる。酸味応答細胞は様々な酸味物質に対し応答を示し、同じpHであれば強酸(HClなど)よりも弱酸(酢酸、クエン酸など)に対しより大きい応答を示す<ref name=ref12368808 />12)。 | ||
=== 塩味応答細胞 === | === 塩味応答細胞 === | ||
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==参考文献== | ==参考文献== | ||
<references /> | <references /> | ||