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=== コレステロール === | === コレステロール === | ||
[[Image:Cholesterol.png|thumb|right|200px|コレステロールの構造]]コレステロールの分子式はC27H46Oで表わされ、ステロイド核の3位の炭素にOH基がついたステロールを基礎骨格とし、17位の炭素はアルキル化されている。その名称は、胆石からコレステロール固体を同定した際、ギリシャ語の胆汁を表すChole-、固体を表すstereos (個体)に加え、アルコールの化学命名接尾辞である- | [[Image:Cholesterol.png|thumb|right|200px|コレステロールの構造]]コレステロールの分子式はC27H46Oで表わされ、ステロイド核の3位の炭素にOH基がついたステロールを基礎骨格とし、17位の炭素はアルキル化されている。その名称は、胆石からコレステロール固体を同定した際、ギリシャ語の胆汁を表すChole-、固体を表すstereos (個体)に加え、アルコールの化学命名接尾辞である-olを付けたことに由来する。動物では、コレステールの一部は食事から摂取されるが、主に肝臓と小腸でアセチルCoAより合成され、血液を介して全身に運ばれ、ホルモンや胆汁酸、ビタミンDの原料となる。血中においてコレステロールはHDLやLDL等のリポタンパク質と複合体を形成しており、LDLは肝臓から全身にコレステロールを運ぶ役割を担い、逆にHDLは余分なコレステロールを肝臓に戻す役割を担う。また、コレステロールは、リン脂質と共に代表的な細胞膜の成分であるが、コレステロールに富む膜領域は膜の流動性が低いことが知られる。細胞膜マイクロドメインもしくはミクロドメインとして知られるカベオラや脂質ラフトは、コレステロールやスフィンゴミエリンに富んでおり、タンパク質受容体の集積やシグナル伝達の場と考えられている。<br> | ||
=== 胆汁酸 === | === 胆汁酸 === | ||
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=== ビタミンD === | === ビタミンD === | ||
[[Image:Provitamin to vitamin.png|thumb|right|200px|プロビタミンからビタミンDへの変換]] ビタミンDは、ステロイド核のB環が9-10位の間で開環した構造を持つ。ビタミンDは側鎖構造の違いから、D2(エルゴカルシフェロール)とD3(コレカルシフェロール)に分けられ、D2は植物に、D3は動物に多く含まれる。ビタミンDは、コレステロールが代謝を受けてプロビタミンD3(7-デヒドロコレステロール)となった後、皮膚上で紫外線によりステロイド核のB環が開きプレビタミンD3((6Z)- | [[Image:Provitamin to vitamin.png|thumb|right|200px|プロビタミンからビタミンDへの変換]] ビタミンDは、ステロイド核のB環が9-10位の間で開環した構造を持つ。ビタミンDは側鎖構造の違いから、D2(エルゴカルシフェロール)とD3(コレカルシフェロール)に分けられ、D2は植物に、D3は動物に多く含まれる。ビタミンDは、コレステロールが代謝を受けてプロビタミンD3(7-デヒドロコレステロール)となった後、皮膚上で紫外線によりステロイド核のB環が開きプレビタミンD3((6Z)-タカルシオール)となる(右図)。プレビタミンD3は更に、ビタミンD3(コレカルシフェロール)へと異性化する。ビタミンD自体は生理活性を持たないが、肝臓と腎臓にて3つのP450(ビタミンD25-水酸化酵素、ビタミンD1α-水酸化酵素、ビタミンD24-水酸化酵素)の働きにより活性型ビタミンD(1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール)へと変換され、ビタミンD受容体を介して核内の標的遺伝子の転写活性を制御することによって作用を発揮する。標的遺伝子の1つとしてカルシウム結合タンパク質であるカルビンディンが挙げられる。ビタミンD受容体は小腸、腎臓、骨組織に存在しておりカルシウム代謝と密接な関わりを持ち、腸管におけるカルシウムの吸収や腎尿細管におけるカルシウムの再吸収を促進する。活性型ビタミンDの不足は小児ではくる病、成人では骨軟化症となる。 <br> | ||
=== ステロイドホルモン === | === ステロイドホルモン === | ||
ステロイド核をもつホルモンをステロイドホルモンと呼ぶ。副腎、精巣、卵巣等の内分泌器官より分泌されるが、近年では脳によっても合成されることが知られておりニューロステロイドと呼ばれている。ステロイドホルモンの特徴は、脂溶性かつ分子量が低いために細胞膜や脳血液関門を容易に通過できること、また細胞質に存在するステロイドホルモン受容体に結合し、核内にて標的遺伝子の転写活性を調節することである。近年、このような核受容体による遺伝子発現を介したステロイドホルモンの作用(ゲノミック作用)に加え、膜受容体を介した遺伝子発現を伴わない作用(ノンゲノミック作用)が注目されている<ref><pubmed>21357682</pubmed></ref>。 | |||
==== ステロイドホルモンの生合成 ==== | ==== ステロイドホルモンの生合成 ==== | ||
[[Image:Steroid synthesis.png|thumb|right|300px|ステロイドホルモンの生合成]] 右図に示すように、全てのステロイドホルモンはコレステロールより合成される。炭素数27のコレステロールは、コレステロール側鎖切断酵素(P450 scc)の作用により、側鎖(炭素数6)が切断されてプレグネノロン(炭素数21)となる。この過程はすべてのステロイドホルモン分泌器官で共通したプロセスである。最終的に、副腎では炭素数は21のまま、化学構造変化を受けた[[糖質コルチコイド]]と[[鉱質コルチコイド]]が、また精巣では炭素数が2個減少した[[アンドロゲン]](炭素数19)が、卵巣では炭素数が1個減少した[[エストロゲン]](炭素数18)が生成される。 | [[Image:Steroid synthesis.png|thumb|right|300px|ステロイドホルモンの生合成]] 右図に示すように、全てのステロイドホルモンはコレステロールより合成される。炭素数27のコレステロールは、コレステロール側鎖切断酵素(P450 scc)の作用により、側鎖(炭素数6)が切断されてプレグネノロン(炭素数21)となる。この過程はすべてのステロイドホルモン分泌器官で共通したプロセスである。最終的に、副腎では炭素数は21のまま、化学構造変化を受けた[[糖質コルチコイド]]と[[鉱質コルチコイド]]が、また精巣では炭素数が2個減少した[[アンドロゲン]](炭素数19)が、卵巣では炭素数が1個減少した[[エストロゲン]](炭素数18)が生成される。 以下に挙げるものがステロイドホルモン合成酵素である。これらのうち、3β-HSDと17β-HSD以外はシトクロムP450である。どの酵素も小胞体膜かミトコンドリア内膜のどちらかに局在する。 | ||
<br> ・コレステロール側鎖切断酵素(cholesterole side chain cleavage, P450 scc) | <br> ・コレステロール側鎖切断酵素(cholesterole side chain cleavage, P450 scc) |
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