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Junko kurahashi (トーク | 投稿記録) (ページの作成:「<div align="right"> <font size="+1">[https://researchmap.jp/hirokazuhirai 平井宏和]</font><br> ''群馬大学 医学系研究科''<br> DOI:<selfdoi /> 原...」) |
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(5)狂犬病ウイルスベクター | (5)狂犬病ウイルスベクター | ||
狂犬病ウイルスは弾丸のような形をした神経向性ウイルスで、感染獣による咬傷から侵入する。感染局所の[[筋肉]]や[[結合組織]]中で増殖したのち、[[運動ニューロン]]から脊髄、脳へと[[シナプス]]を越えて逆行性に[[軸索]]を上行する。ウイルスのエンベロープに存在する糖タンパク質スパイク(Gタンパク質)が結合するニューロン特異的なレセプターとしてp75NTR ([[p75]] neurotropin receptor)、[[NCAM]] (neuron adhesion molecule)や[[ニコチン性アセチルコリン受容体]]が考えられている[11]。狂犬病ウイルスはニューロンを逆行性、かつ経シナプス性に伝達するため、経ニューロン性トレーサーとして利用される技術が開発されている[12]。 | 狂犬病ウイルスは弾丸のような形をした神経向性ウイルスで、感染獣による咬傷から侵入する。感染局所の[[筋肉]]や[[結合組織]]中で増殖したのち、[[運動ニューロン]]から脊髄、脳へと[[シナプス]]を越えて逆行性に[[軸索]]を上行する。ウイルスのエンベロープに存在する糖タンパク質スパイク(Gタンパク質)が結合するニューロン特異的なレセプターとしてp75NTR ([[p75]] neurotropin receptor)、[[NCAM]] (neuron adhesion molecule)や[[ニコチン性アセチルコリン受容体]]が考えられている[11]。狂犬病ウイルスはニューロンを逆行性、かつ経シナプス性に伝達するため、経ニューロン性トレーサーとして利用される技術が開発されている[12]。 | ||
(6)センダイウイルスベクター | |||
センダイウイルスはHemagglutinating Virus of Japan (HVJ)、マウスパラインフルエンザ1型とも呼ばれるマイナス鎖RNAウイルスで、1950年代前半に日本で初めて分離された。マウスに肺炎を引き起こすウイルスでヒトへの病原性は報告されていない。最初に作出されたベクターは、増殖に必須な膜融合タンパク質(F)遺伝子が欠失しており自立増殖できない。ヌクレオカプシドタンパク質(N)遺伝子の上流に外来遺伝子(合計で約5kbまでの遺伝子が複数挿入可能)を挿入したプラスミドと、マイナス鎖RNAの合成と複製に必要な遺伝子群を培養細胞に導入することでFタンパク質欠失型ウイルス粒子が産生される[13]。こうして得られたFタンパク質欠失型ウイルス粒子を、Fタンパク質を発現するヘルパー細胞株に感染させることで、ベクターがさらに増幅される。センダイウイルスベクターはニューロンを含む非分裂細胞にも外来遺伝子発現が可能で、発現能も高い。感染後、ウイルスゲノムはホストの染色体に組み込まれずRNAの状態で細胞質に留まるため、挿入変異や染色体の構造変化の恐れがなく、機能性、安全性の両面で優れたベクターである。生体にベクター投与後2〜4日目に外来遺伝子の発現量が最大となり、数週間発現が持続する。 | |||
(7−1)アデノ随伴ウイルスベクター | |||
アデノ随伴ウイルスは、ラテン語で「小さい」を意味する“parvus”を語源とするパルボウイルス科のウイルスで、粒子径は18 – 26nmとDNAウイルスの中ではもっとも小さい。単独感染では増殖能はなく、アデノウイルスと同時に感染して初めて増殖が可能となる。病原性はないと考えられている。ウイルスゲノムは4.7kbの線状一本鎖DNAで、両端に逆位反復配列(Inverted Terminal Repeat : ITR)と呼ばれるT字型のヘアピン構造が存在し、ゲノム複製はこの部分の折り返しにより、他のプライマー非依存的に開始する。ゲノムにはRepとCapという2つの遺伝子が存在する。Repはウイルスゲノムの複製や転写を担う非構造タンパク質を、Capは3種類の構造タンパク質(カプシドタンパク質)をコードしている。アデノ随伴ウイルスには多くの血清型が知られており、主に細胞表面受容体の違いにより特定の組織や細胞種への指向性を示す。最もよく研究されている2型の受容体はへパラン硫酸プロテオグリカンであり[14]、線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)[15]やαVβ5インテグリン[16]も共受容体として働き、ウイルスの結合と取り込みを促進することが示唆されている。アデノ随伴ウイルス4型と5型はシアル酸に結合すること[17]、またPDGF受容体が5型の受容体であることが報告されている[18]。適切な血清型由来のベクターを用いることで、任意の臓器の特定細胞種を標的とした効率的な遺伝子発現が期待できる。 | |||
(7−2)アデノ随伴ウイルスベクター粒子の作製法 | |||
ITR間のRep、Capの2つの遺伝子を取り除き、そのスペースにプロモーターと目的の遺伝子を挿入したベクタープラスミドを作製する(図2)。Rep、Cap(ウイルス複製やカプシド形成に必要なタンパク質)は別のプラスミドで供給する。またアデノウイルスのヘルパー作用としてE1A、E1B、E2A、VA、E4遺伝子が必要となるが、このうちE1AとE1BはHEK293細胞(E1AとE1Bでトランスフォームしている)から、残りのE2A、E4、VAはヘルパープラスミドとして供給する。これら3つのプラスミドでHEK293細胞をトランスフェクションすると、Rep、Cap遺伝子はもたずITR間の外来遺伝子のみをもつウイルス粒子が産生される。粒子は核内に存在するため細胞を凍結融解し、塩化セシウムを用いた密度勾配超遠心法を用いて精製する。 | |||
==参考文献== | |||
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