「ウイルスベクター」の版間の差分

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=== レトロウイルスベクター ===
=== レトロウイルスベクター ===
 [[マウス]]白血病ウイルス由来で、ウイルスゲノムからウイルスタンパク質をコードするgag、pol、envが除去され、その代わりに発現させたい外来遺伝子が組み込まれる。ウイルス産生に用いられるウイルスプラスミドは、二つのLTRで挟まれた外来遺伝子とパッケージング配列のみをもつ。このウイルスプラスミドを、gag、pol、envがコードするウイルスタンパク質を発現するパッケージング細胞に導入することでウイルス粒子が産生される。産生されたウイルスはgag、pol、env遺伝子をもたないため、細胞に感染し外来遺伝子を発現するが、ウイルス粒子は産生しない。
 [[マウス]]白血病ウイルス由来で、ウイルスゲノムからウイルスタンパク質をコードする[[gag]]、[[pol]]、[[env]]が除去され、その代わりに発現させたい外来遺伝子が組み込まれる。ウイルス産生に用いられるウイルスプラスミドは、二つのLTRで挟まれた外来遺伝子とパッケージング配列のみをもつ。このウイルスプラスミドを、gag、pol、envがコードするウイルスタンパク質を発現するパッケージング細胞に導入することでウイルス粒子が産生される。産生されたウイルスはgag、pol、env遺伝子をもたないため、細胞に感染し外来遺伝子を発現するが、ウイルス粒子は産生しない。
感染によりウイルスゲノム(一本鎖RNA)が細胞内に入り、同時に送り込まれた逆転写酵素により二本鎖DNAへと変えられる(図1参照)。二本鎖DNAは核に送られて[[染色体]]に組み込まれ、細胞の転写発現機構を使って外来遺伝子を発現する。ただし、核膜があると核内に入ることができないため、核膜が消失する分裂期の細胞でしか組み込みは行われない。すなわちレトロウイルスベクターは最終分裂を終えたニューロンへの遺伝子発現には使えないが、この性質を利用し、成熟動物の[[神経幹細胞]]選択的に遺伝子発現させる目的で使用されることがある。
 
 感染によりウイルスゲノム(一本鎖RNA)が細胞内に入り、同時に送り込まれた逆転写酵素により二本鎖DNAへと変えられる('''図1'''参照)。二本鎖DNAは核に送られて[[染色体]]に組み込まれ、細胞の転写発現機構を使って外来遺伝子を発現する。ただし、核膜があると核内に入ることができないため、核膜が消失する分裂期の細胞でしか組み込みは行われない。すなわちレトロウイルスベクターは最終分裂を終えたニューロンへの遺伝子発現には使えないが、この性質を利用し、成熟動物の[[神経幹細胞]]選択的に遺伝子発現させる目的で使用されることがある。


=== レンチウイルスベクター ===
=== レンチウイルスベクター ===

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