「ウイルスベクター」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
81行目: 81行目:
 アデノ随伴ウイルスは、ラテン語で「小さい」を意味する“parvus”を語源とするパルボウイルス科のウイルスで、粒子径は18 – 26nmとDNAウイルスの中ではもっとも小さい。単独感染では増殖能はなく、アデノウイルスと同時に感染して初めて増殖が可能となる。病原性はないと考えられている。ウイルスゲノムは4.7kbの線状一本鎖DNAで、両端に逆位反復配列(Inverted Terminal Repeat : ITR)と呼ばれるT字型のヘアピン構造が存在し、ゲノム複製はこの部分の折り返しにより、他のプライマー非依存的に開始する。ゲノムにはRepとCapという2つの遺伝子が存在する。Repはウイルスゲノムの複製や転写を担う非構造タンパク質を、Capは3種類の構造タンパク質(カプシドタンパク質)をコードしている。
 アデノ随伴ウイルスは、ラテン語で「小さい」を意味する“parvus”を語源とするパルボウイルス科のウイルスで、粒子径は18 – 26nmとDNAウイルスの中ではもっとも小さい。単独感染では増殖能はなく、アデノウイルスと同時に感染して初めて増殖が可能となる。病原性はないと考えられている。ウイルスゲノムは4.7kbの線状一本鎖DNAで、両端に逆位反復配列(Inverted Terminal Repeat : ITR)と呼ばれるT字型のヘアピン構造が存在し、ゲノム複製はこの部分の折り返しにより、他のプライマー非依存的に開始する。ゲノムにはRepとCapという2つの遺伝子が存在する。Repはウイルスゲノムの複製や転写を担う非構造タンパク質を、Capは3種類の構造タンパク質(カプシドタンパク質)をコードしている。


 アデノ随伴ウイルスには多くの血清型が知られており、主に細胞表面受容体の違いにより特定の組織や細胞種への指向性を示す。最もよく研究されている2型の受容体[[はへパラン硫酸プロテオグリカン]]であり<ref><pubmed>944504</pubmed></ref>、[[線維芽細胞増殖因子受容体1]]([[FGFR1]])<ref><pubmed>944504</pubmed></ref>や[[αVβ5インテグリン]]<ref><pubmed>9883843 </pubmed></ref>も共受容体として働き、ウイルスの結合と取り込みを促進することが示唆されている。アデノ随伴ウイルス4型と5型はシアル酸に結合すること<ref><pubmed>11435568</pubmed></ref>、またPDGF受容体が5型の受容体であることが報告されている<ref><pubmed>14502277 </pubmed></ref>。適切な血清型由来のベクターを用いることで、任意の臓器の特定細胞種を標的とした効率的な遺伝子発現が期待できる。
 アデノ随伴ウイルスには多くの血清型が知られており、主に細胞表面受容体の違いにより特定の組織や細胞種への指向性を示す。最もよく研究されている2型の受容体[[はへパラン硫酸プロテオグリカン]]であり<ref><pubmed>9445046</pubmed></ref>、[[線維芽細胞増殖因子受容体1]]([[FGFR1]])<ref><pubmed> 9883842 </pubmed></ref>や[[αVβ5インテグリン]]<ref><pubmed>9883843 </pubmed></ref>も共受容体として働き、ウイルスの結合と取り込みを促進することが示唆されている。アデノ随伴ウイルス4型と5型はシアル酸に結合すること<ref><pubmed>11435568</pubmed></ref>、またPDGF受容体が5型の受容体であることが報告されている<ref><pubmed>14502277 </pubmed></ref>。適切な血清型由来のベクターを用いることで、任意の臓器の特定細胞種を標的とした効率的な遺伝子発現が期待できる。


==== アデノ随伴ウイルスベクター粒子の作製法 ====
==== アデノ随伴ウイルスベクター粒子の作製法 ====

案内メニュー