「フェロモン受容体」の版間の差分

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==== 遺伝子の特徴と受容体の構造 ====
==== 遺伝子の特徴と受容体の構造 ====
 ORは7回膜貫通型のGPCRである。ORは哺乳類の中で最大の多重遺伝子ファミリーを形成していて、マウスは1035個、ヒトは396個のOR遺伝子を有する<ref><pubmed>23024602</pubmed></ref>40。OR遺伝子発現に関しては、1つの嗅神経細胞には1種類のOR遺伝子が発現する「1神経1受容体ルール」とモノアレルの発現制御が特徴的である<ref><pubmed>21469960</pubmed></ref>41。ORはN末端の細胞外領域が比較的短いクラスAのGPCRに属する。ORの結晶構造は解かれていないが、アミノ酸の部位特異的変異を導入したORのリガンド結合能を評価した実験から、3、5、6番目のヘリックスに位置するアミノ酸残基がリガンド結合に重要であることが報告されている<ref><pubmed>15716417</pubmed></ref><ref><pubmed>17114180</pubmed></ref>42,43。
 ORは7回膜貫通型のGPCRである。ORは哺乳類の中で最大の多重遺伝子ファミリーを形成していて、マウスは1035個、ヒトは396個のOR遺伝子を有する<ref><pubmed>23024602</pubmed></ref>40。OR遺伝子発現に関しては、1つの嗅神経細胞には1種類のOR遺伝子が発現する「1神経1受容体ルール」とモノアレルの発現制御が特徴的である<ref><pubmed>21469960</pubmed></ref>41。
 
ORはN末端の細胞外領域が比較的短いクラスAのGPCRに属する('''図1''')。ORの結晶構造は解かれていないが、アミノ酸の部位特異的変異を導入したORのリガンド結合能を評価した実験から、3、5、6番目のヘリックスに位置するアミノ酸残基がリガンド結合に重要であることが報告されている<ref><pubmed>15716417</pubmed></ref><ref><pubmed>17114180</pubmed></ref>42,43。


==== シグナル伝達 ====
==== シグナル伝達 ====
 ORは嗅神経細胞においてGsタイプに属するGαolfと共役する。そのシグナル伝達様式は以下の通りになる。匂い刺激を受けてORによって活性化されたGαolfがアデニル酸シクラーゼを活性化し、ATPをcAMPに変換する。[[cAMP]]の濃度上昇により[[環状ヌクレオチド作動性チャネル]]が開口してNa<sup>+</sup>、Ca<sup>2+</sup>が細胞内に流入し、さらにCa<sup>2+</sup>活性化型Cl<sup>-</sup>チャネルが開口することで細胞膜が脱分極すると考えられている。このような細胞内シグナル伝達を経て、ORが受け取った匂い分子の化学情報が電気信号に変換される<ref name=Munger2009/>2。嗅神経細胞は軸索を主嗅覚系の一次中枢である嗅球へと投射し、シナプスを介してさらに高次へと信号が伝わっていく。
 ORは嗅神経細胞においてGsタイプに属する[[Gαolf]]と共役する。そのシグナル伝達様式は以下の通りになる。匂い刺激を受けてORによって活性化されたGαolfがアデニル酸シクラーゼを活性化し、ATPをcAMPに変換する。[[cAMP]]の濃度上昇により[[環状ヌクレオチド作動性チャネル]]が開口してNa<sup>+</sup>、Ca<sup>2+</sup>が細胞内に流入し、さらにCa<sup>2+</sup>活性化型Cl<sup>-</sup>チャネルが開口することで細胞膜が脱分極すると考えられている。このような細胞内シグナル伝達を経て、ORが受け取った匂い分子の化学情報が電気信号に変換される<ref name=Munger2009/>2。嗅神経細胞は軸索を主嗅覚系の一次中枢である嗅球へと投射し、シナプスを介してさらに高次へと信号が伝わっていく。


==== 機能 ====
==== 機能 ====
 以前はフェロモン受容体といえばV1RおよびV2Rとされていて、ORは一般的な匂いのみを受容するものとされていた。しかし現在はORの一部も揮発性フェロモンを受容していることが示唆されている。例えば、オスマウスの包皮腺由来の不飽和アルコールであるZ5-14:OHはメスに対して誘引効果を持つフェロモンでありOlfr288によって受容される<ref name=Yoshikawa2013/>5。また、オスマウスの尿中に含まれる(methylthio)methanethiol(MTMT)も同様にしてメスに対して誘引効果を持ちMOR244-3によって受容される<ref name=Lin2005/><ref><pubmed>22328155</pubmed></ref>6,44。
 以前はフェロモン受容体といえばV1RおよびV2Rとされていて、ORは一般的な匂いのみを受容するものとされていた。しかし現在はORの一部も揮発性フェロモンを受容していることが示唆されている。例えば、オスマウスの[[包皮腺]]由来の不飽和アルコールである[[Z5-14:OH]]はメスに対して誘引効果を持つフェロモンでありOlfr288によって受容される<ref name=Yoshikawa2013/>5。また、オスマウスの尿中に含まれる[[(methylthio)methanethiol]](MTMT)も同様にしてメスに対して誘引効果を持ちMOR244-3によって受容される<ref name=Lin2005/><ref><pubmed>22328155</pubmed></ref>6,44。


=== その他のフェロモン受容体候補と発現部位 ===
=== その他のフェロモン受容体候補と発現部位 ===

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