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Masahitoyamagata (トーク | 投稿記録) 細 (→ナノボディの応用) |
Masahitoyamagata (トーク | 投稿記録) 細 (→ナノボディの利用法) |
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==ナノボディの利用法== | ==ナノボディの利用法== | ||
[[ファイル:nanobody4.jpg |サムネイル|800px|'''図4.ナノボディの利用法''']] | [[ファイル:nanobody4.jpg |サムネイル|800px|'''図4.ナノボディの利用法''']] | ||
基本的には通常の「抗体」のように生化学的解析(ウェスタンブロッティング、免疫沈降法、ELISAなど)、免疫組織化学(組織染色、蛍光抗体法など)、細胞分離技術(FACSなど)に利用できる(図4)。しかし、ナノボディだけでは 通常の抗体と違い定常領域を欠いているため、何らかの修飾が必要である。このことはナノボディが抗体のように簡便に利用できないという不便さになっているが、修飾を実験に合わせて自在に工夫できるという利点にもなっている。また、定常領域のような余分な構造を持たないので、バックグラウンドを低下させ、感度や精度の高い解析が可能になるという長所もある。 | |||
====化学的カップリング==== | ====化学的カップリング==== | ||
免疫組織化学に最もよく用いられているのは、ナノボディをタンパク質として精製後、色素分子などを化学的にカップリングするという方法である。このような試薬は既製のナノボディ試薬として市販もされている(例、ChromoTek社<ref>https://www.chromotek.com/</ref> )。最近、1次抗体を認識する「2次抗体」の活性を持つナノボディが報告されている<ref><pubmed>29263082</pubmed></ref> 。ナノボディの多くは、大腸菌で活性あるものを大量産生、精製することができるので、一度、配列がわかれば、動物を使用する必要がなくなる。 | 免疫組織化学に最もよく用いられているのは、ナノボディをタンパク質として精製後、色素分子などを化学的にカップリングするという方法である。このような試薬は既製のナノボディ試薬として市販もされている(例、ChromoTek社<ref>https://www.chromotek.com/</ref> )。最近、1次抗体を認識する「2次抗体」の活性を持つナノボディが報告されている<ref><pubmed>29263082</pubmed></ref> 。ナノボディの多くは、大腸菌で活性あるものを大量産生、精製することができるので、一度、配列がわかれば、動物を使用する必要がなくなる。 | ||
また、化学的なカップリングなので、カップリングする分子を変化させ工夫することで、目的に合わせて様々な標識ナノボディ(薬剤を結合した武装抗体など)を作製できる可能性がある<ref><pubmed>28883823 </pubmed></ref> 。しかし、カップリングによるアミノ酸残基を修飾する反応により抗原結合能を失うことも想定される。しかし、修飾するアミノ酸残基の位置を制御することは可能である<ref><pubmed>26633879</pubmed></ref> 。ナノボディは小さく、通常の抗体では入り込めない箇所に結合することで、STORMやPALMなどの[[高解像度顕微鏡]]においても、アーチファクトが減少し、有用なツールになると考えられている<ref><pubmed>23845946</pubmed></ref> 。 | |||
====RANbody==== | ====RANbody==== | ||
化学的カップリング反応は、しばしばナノボディの活性を消失させるが、実験的にも条件決定など必ずしも容易ではない。この問題を克服するために開発されたプラットフォームがRANbody(Receptor-and-Nanobody)である<ref name=yamagata2018><pubmed>29440485</pubmed></ref>。RANbodyは、ナノボディを酵素(改良型[[wj:西洋ワサビペルオキシダーゼ]HRP)、抗原性のあるニワトリ抗体IgY、多重エピトープタグなどと組み換えDNA技術により融合させたものである。プラスミドを293T細胞などの動物細胞に導入するだけで、培地中に放出されるので多くの生物医学系の実験室で利用できる。HRPは大腸菌の中では活性のある酵素として発現させることができない。その一つの解決策として、アスコルビン酸オキシダーゼAPEX2との融合タンパク質を大腸菌で発現させて用いることができるが、APEX2はHRPに比べて活性が弱い<ref><pubmed>29915061</pubmed></ref><ref><pubmed>25419960</pubmed></ref> 。 | 化学的カップリング反応は、しばしばナノボディの活性を消失させるが、実験的にも条件決定など必ずしも容易ではない。この問題を克服するために開発されたプラットフォームがRANbody(Receptor-and-Nanobody)である<ref name=yamagata2018><pubmed>29440485</pubmed></ref>。RANbodyは、ナノボディを酵素(改良型[[wj:西洋ワサビペルオキシダーゼ]HRP)、抗原性のあるニワトリ抗体IgY、多重エピトープタグなどと組み換えDNA技術により融合させたものである。プラスミドを293T細胞などの動物細胞に導入するだけで、培地中に放出されるので多くの生物医学系の実験室で利用できる。HRPは大腸菌の中では活性のある酵素として発現させることができない。その一つの解決策として、アスコルビン酸オキシダーゼAPEX2との融合タンパク質を大腸菌で発現させて用いることができるが、APEX2はHRPに比べて活性が弱い<ref><pubmed>29915061</pubmed></ref><ref><pubmed>25419960</pubmed></ref> 。 | ||
==== | ====免疫沈降法==== | ||
免疫沈降法(プルダウンPulldown)では、GFPナノボディなどをアガロースや磁気ビーズなどの担体にカップリングすることで得られた担体が市販されているので利用できる。また、多くのナノボディは大量に自家精製できるので、通常の抗体などのアフィニティクロマトグラフィ担体を作製するのと同じように利用可能である。例えば、GSTなどとの融合タンパク質は、GSTを結合するグルタチン結合ゲルに容易に結合するので、免疫沈降法に有用である<ref><pubmed>18936248</pubmed></ref> <ref><pubmed>17951627</pubmed></ref> <ref><pubmed>25964651</pubmed></ref> 。 | 免疫沈降法(プルダウンPulldown)では、GFPナノボディなどをアガロースや磁気ビーズなどの担体にカップリングすることで得られた担体が市販されているので利用できる。また、多くのナノボディは大量に自家精製できるので、通常の抗体などのアフィニティクロマトグラフィ担体を作製するのと同じように利用可能である。例えば、GSTなどとの融合タンパク質は、GSTを結合するグルタチン結合ゲルに容易に結合するので、免疫沈降法に有用である<ref><pubmed>18936248</pubmed></ref> <ref><pubmed>17951627</pubmed></ref> <ref><pubmed>25964651</pubmed></ref> 。 | ||
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また、特定のPPIを阻害するナノボディを細胞内で発現させたりすることも可能である。このような方法は、分子機能の研究において、タンパク質の数を調整する[[RNAi]]や[[ゲノム編集]]による変異とは違ったアプローチになりうる<ref><pubmed>28913971</pubmed></ref> 。 | また、特定のPPIを阻害するナノボディを細胞内で発現させたりすることも可能である。このような方法は、分子機能の研究において、タンパク質の数を調整する[[RNAi]]や[[ゲノム編集]]による変異とは違ったアプローチになりうる<ref><pubmed>28913971</pubmed></ref> 。 | ||
また、[[ユビキチン系]]を利用することで、ナノボディの標的タンパク質を特異的に分解することも可能である<ref><pubmed>22157958</pubmed></ref>。 | また、[[ユビキチン系]]を利用することで、ナノボディの標的タンパク質を特異的に分解することも可能である<ref><pubmed>22157958</pubmed></ref>。 | ||
==ナノボディー以外の組み換え結合体== | ==ナノボディー以外の組み換え結合体== |