「脳波」の版間の差分

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== 歴史的背景 ==
== 歴史的背景 ==


脳波は1929年にドイツの精神科医ハンス・ベルガーによってヒトで初めて報告された。
1930年代にドイツの精神科医であるHans Bergerによってヒトの脳波とその10Hz前後での振動現象であるアルファ波が報告されたが、脳波や脳磁図などで脳の神経活動を測定すると、さまざまな周波数での振動成分が観察される。詳細に周波数解析を行ってみるとアルファ波(8-12Hz)以外にもデルタ波(1-3Hz)、シータ波(4-7Hz)、ベータ波(13Hz-24Hz)、ガンマ波(25Hz~)と呼ばれるいくつかの周波数帯域での振動活動が観察される。 ニューロンに閾値以上の定常な興奮性の入力を与えると周期的な発火が起きるが、ニューロン同士が複雑に相互作用をするニューロン集団でも条件によっては周期的で同期している集団活動がおき、脳波にみられる振動成分は大脳皮質のニューロン集団がその周波数帯域で局所的に同期して周期的な活動をしていることを示唆する。<br>  
1930年代にオーストリアの精神科医であるHans Bergerによって脳波とその10Hz前後での振動現象であるアルファ波が発見されたが、脳波や脳磁図などで脳の神経活動を測定すると、さまざまな周波数での振動成分が観察される。詳細に周波数解析を行ってみるとアルファ波(8-12Hz)以外にもデルタ波(1-3Hz)、シータ波(4-7Hz)、ベータ波(13Hz-24Hz)、ガンマ波(25Hz~)と呼ばれるいくつかの周波数帯域での振動活動が観察される。 ニューロンに閾値以上の定常な興奮性の入力を与えると周期的な発火が起きるが、ニューロン同士が複雑に相互作用をするニューロン集団でも条件によっては周期的で同期している集団活動がおき、脳波にみられる振動成分は大脳皮質のニューロン集団がその周波数帯域で局所的に同期して周期的な活動をしていることを示唆する。<br>  


 近年、さまざまな認知課題を被験者が行っている時の脳波時系列データを周波数解析することによって、脳活動の振動成分と認知機能との相関について、数多くの多くの研究がなされている1)2)。たとえば、ヒト脳波のシータ帯域に関しては記憶に関連して3)、ガンマ帯域では物体の表現、特徴統合、注意や記憶に関係して振動同期現象が報告されている4)5)。また局所的な脳波の振動のみではなく、後頭部と前頭部の脳波の振動同期のようなより大域的な振動同期と認知機能との関連も報告されている6)7)。<br>  
 近年、さまざまな認知課題を被験者が行っている時の脳波時系列データを周波数解析することによって、脳活動の振動成分と認知機能との相関について、数多くの多くの研究がなされている。たとえば、ヒト脳波のシータ帯域に関しては記憶に関連して<ref name=ref1><pubmed>10391243</pubmed></ref><ref name=ref2><pubmed>17496796</pubmed></ref>、ガンマ帯域では物体の表現、特徴統合、注意や記憶に関係して振動同期現象が報告されている<ref name=ref3><pubmed>9989408</pubmed></ref><ref name=ref4><pubmed>16012336</pubmed></ref>。また局所的な脳波の振動のみではなく、後頭部と前頭部の脳波の振動同期のようなより大域的な振動同期と認知機能との関連も報告されている<ref name=ref5><pubmed>17556771</pubmed></ref> 6)。<br>  




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== 脳波を用いた研究 ==
== 脳波を用いた研究手法 ==
=== 事象関連電位 ===
=== 事象関連電位 ===
ヒトは特に何をしていなくても脳は常に自発的に活動しており、このときみられる脳波を背景脳波と呼ぶ。一方、光や音といった刺激が入力されたときや自発的な運動準備・実行を行う際には、それに伴い脳波も変動する。たとえば何か注意を払っていた視覚情報を近くした際には、その視覚提示の約300ミリ秒後に陽性の振幅変動が生じる(hoge)。このように事象に関連して生じる一過性の電位変化を事象関連電位(Event-related potential: ERP)と呼び、特に外部刺激によって惹起する成分を誘発電位と呼ぶことがある([[誘発電位および誘発脳磁界]]参照)。このERPは数マイクロボルトと非常に小さい変動であり、この誘発電位は背景脳波に埋もれてしまう。背景脳波からERPを抽出するためには、複数回施行を繰り返し行い計測した脳波を特定の事象の開始時点を揃えて加算平均する必要がある。これにより、事象に対して一定の時間関係を持ったERP成分だけが残り、背景ノイズは互いに相殺し合うことになる。<br>
ヒトは特に何をしていなくても脳は常に自発的に活動しており、このときみられる脳波を背景脳波と呼ぶ。一方、光や音といった刺激が入力されたときや自発的な運動準備・実行を行う際には、それに伴い脳波も変動する。たとえば何か注意を払っていた視覚情報を近くした際には、その視覚提示の約300ミリ秒後に陽性の振幅変動が生じる(hoge)。このように事象に関連して生じる一過性の電位変化を事象関連電位(Event-related potential: ERP)と呼び、特に外部刺激によって惹起する成分を誘発電位と呼ぶことがある([[誘発電位および誘発脳磁界]]参照)。このERPは数マイクロボルトと非常に小さい変動であり、この誘発電位は背景脳波に埋もれてしまう。背景脳波からERPを抽出するためには、複数回施行を繰り返し行い計測した脳波を特定の事象の開始時点を揃えて加算平均する必要がある。これにより、事象に対して一定の時間関係を持ったERP成分だけが残り、背景ノイズは互いに相殺し合うことになる。<br>
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