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<font size="+1">[https://researchmap.jp/read0125107 黒川 竜紀]</font><br> | |||
''大分大学医学部''<br> | |||
<font size="+1">[http://researchmap.jp/ymori 森 泰生]</font><br> | |||
''京都大学大学院工学研究科''<br> | |||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2018年10月19日 原稿完成日:2018年X月X日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](京都大学大学院医学研究科システム神経薬理分野)<br> | |||
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{{box|text= Transient receptor potential(TRP)チャネルは、6回膜貫通領域を有するTRPタンパク質群のホモあるいはヘテロ4量体によりなる多様な陽イオンチャネルである。TRPチャネルの活性化開口は、温度、機械刺激、痛み、酸-塩基といった種々の物理化学的刺激によって惹起され、多くが高いNa<sup>+</sup>及びCa<sup>2+</sup>透過能を示す。様々な組織にTRPチャネルは分布するが、中枢・末梢神経系において高発現する。神経機能に重要な役割を果たすTRPチャネルがいくつか存在しており、それらの機能障害は、神経変性疾患や精神疾患など様々な病気に関連している。}} | {{box|text= Transient receptor potential(TRP)チャネルは、6回膜貫通領域を有するTRPタンパク質群のホモあるいはヘテロ4量体によりなる多様な陽イオンチャネルである。TRPチャネルの活性化開口は、温度、機械刺激、痛み、酸-塩基といった種々の物理化学的刺激によって惹起され、多くが高いNa<sup>+</sup>及びCa<sup>2+</sup>透過能を示す。様々な組織にTRPチャネルは分布するが、中枢・末梢神経系において高発現する。神経機能に重要な役割を果たすTRPチャネルがいくつか存在しており、それらの機能障害は、神経変性疾患や精神疾患など様々な病気に関連している。}} | ||
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}} | }} | ||
== Transient receptor potentialチャネルとは == | == Transient receptor potentialチャネルとは == | ||
TRPは、元来、1989年に[[ショウジョウバエ]]の[[光受容]]応答変異株の原因遺伝子として発見された遺伝子名である<ref name=Montell1989><pubmed>2516726</pubmed></ref> 。命名は、trp変異株で[[光受容器電位]](receptor | TRPは、元来、1989年に[[ショウジョウバエ]]の[[光受容]]応答変異株の原因遺伝子として発見された遺伝子名である<ref name=Montell1989><pubmed>2516726</pubmed></ref> 。命名は、trp変異株で[[光受容器電位]](receptor potential)変化が一過性(transient)であることに由来する。TRP遺伝子により構成されるイオンチャネルは多くがNa<sup>+</sup>及び[[カルシウム|Ca<sup>2+</sup>]]の透過性が高い[[陽イオンチャネル]]であるが、Ca<sup>2+</sup>[[イオン選択性|選択性]]は大きく異なる<ref name=Mulier2017><pubmed>28807146</pubmed></ref> 。 | ||
TRPチャネルは[[ホスファチジルイノシトール|PIP<sub>2</sub>]]、Ca<sup>2+</sup>、[[環状ヌクレオチド]]、温度、[[浸透圧]]などの細胞の[[シグナル伝達因子]]や、環境因子などに応答することから、物理学的・化学的刺激に対して広い範囲で応答するセンサーとして機能している<ref name=Clapham2003><pubmed>14654832</pubmed></ref> 。TRPチャネルの活性化開口により、[[膜電位]]の変化、Ca<sup>2+</sup>の細胞内流入によるCa<sup>2+</sup>依存性経路の活性化、酵素活性の変化、[[エンドサイトーシス]]・[[エキソサイトーシス]]などの細胞応答が引き起こされる。このため、TRPチャネルは、[[wj:受精|受精]]、[[感覚]]変換、細胞生存、発生など生命の基本的過程において重要な役割を担うことができる<ref name=Sawamura2017><pubmed>29356477</pubmed></ref> 。 | TRPチャネルは[[ホスファチジルイノシトール|PIP<sub>2</sub>]]、Ca<sup>2+</sup>、[[環状ヌクレオチド]]、温度、[[浸透圧]]などの細胞の[[シグナル伝達因子]]や、環境因子などに応答することから、物理学的・化学的刺激に対して広い範囲で応答するセンサーとして機能している<ref name=Clapham2003><pubmed>14654832</pubmed></ref> 。TRPチャネルの活性化開口により、[[膜電位]]の変化、Ca<sup>2+</sup>の細胞内流入によるCa<sup>2+</sup>依存性経路の活性化、酵素活性の変化、[[エンドサイトーシス]]・[[エキソサイトーシス]]などの細胞応答が引き起こされる。このため、TRPチャネルは、[[wj:受精|受精]]、[[感覚]]変換、細胞生存、発生など生命の基本的過程において重要な役割を担うことができる<ref name=Sawamura2017><pubmed>29356477</pubmed></ref> 。 | ||
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== ファミリー == | == ファミリー == | ||
TRPタンパク質は、[[TRPC]](canonical)、[[TRPM]](melastatin)、[[TRPV]](vanilloid)、[[TRPML]](mucolipin)、[[TRPP]](polycystin)、[[TPRA]](ankyrin)、[[TRPN]](nompC:no mechanoreceptor potential C)の7つのサブファミリーを構成しているが、哺乳類では28種のホモログが同定され、TRPNサブファミリーを除く6つのサブファミリーを構成している<ref name=富永真琴2014>< | TRPタンパク質は、[[TRPC]](canonical)、[[TRPM]](melastatin)、[[TRPV]](vanilloid)、[[TRPML]](mucolipin)、[[TRPP]](polycystin)、[[TPRA]](ankyrin)、[[TRPN]](nompC:no mechanoreceptor potential C)の7つのサブファミリーを構成しているが、哺乳類では28種のホモログが同定され、TRPNサブファミリーを除く6つのサブファミリーを構成している<ref name=富永真琴2014>'''富永 真琴'''<br>TRPチャネル研究の現在と未来<br>''実験医学'' 32, 504-511, 2014</ref><ref name=Numata2009><pubmed>19999578</pubmed></ref> 。ヒトにおいては、[[TRPC2]]が[[偽遺伝子]]となっているため27種類の[[ホモログ]]が存在する。 | ||
===TRPC=== | ===TRPC=== |