「脂肪酸結合タンパク質7型」の版間の差分

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== 神経系での局在と機能  ==
== 神経系での局在と機能  ==


 胎児期の[[大脳皮質]]発達過程において[[神経細胞]]の移動は[[放射状グリア細胞]]によって誘導されると考えられている。[[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]]の脳の発達期にFABP7は[[小脳]]の[[Bergmanグリア]]や、[[脊髄]]や大脳皮質の放射状グリア細胞([[神経幹細胞]])に高い発現を示し、大脳皮質や小脳の[[神経細胞移動]]に関与していると考えられている<ref name="ref7"><pubmed> 7956838 </pubmed></ref><ref name="ref8"><pubmed> 8161459 </pubmed></ref>。哺乳類のFABP7は神経細胞の新生が活発な胎生期の[[脳室帯]]および[[脳室下帯]]の[[神経上皮]]や成熟期[[海馬]][[歯状回]][[顆粒細胞]]層の神経幹細胞に局在している。最近の研究では、FABP7が神経幹細胞の未分化性の維持に深く関わることが示されている<ref name="ref4" /><ref name="ref9"><pubmed> 20057506 </pubmed></ref><ref name="ref10"><pubmed> 22581784 </pubmed></ref>。これらの神経幹細胞の他に[[アストロサイト]]や[[オリゴデンドロサイト前駆細胞]](OPC)での局在が報告されている<ref name="ref11"><pubmed> 21938553 </pubmed></ref>。  
 胎児期の[[大脳皮質]]発達過程において[[神経細胞]]の移動は[[放射状グリア細胞]]によって誘導されると考えられている。[[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]]の脳の発達期にFABP7は[[小脳]]の[[Bergmannグリア]]や、[[脊髄]]や大脳皮質の放射状グリア細胞([[神経幹細胞]])に高い発現を示し、大脳皮質や小脳の[[神経細胞移動]]に関与していると考えられている<ref name="ref7"><pubmed> 7956838 </pubmed></ref><ref name="ref8"><pubmed> 8161459 </pubmed></ref>。哺乳類のFABP7は神経細胞の新生が活発な胎生期の[[脳室帯]]および[[脳室下帯]]の[[神経上皮]]や成熟期[[海馬]][[歯状回]][[顆粒細胞]]層の神経幹細胞に局在している。最近の研究では、FABP7が神経幹細胞の未分化性の維持に深く関わることが示されている<ref name="ref4" /><ref name="ref9"><pubmed> 20057506 </pubmed></ref><ref name="ref10"><pubmed> 22581784 </pubmed></ref>。これらの神経幹細胞の他に[[アストロサイト]]や[[オリゴデンドロサイト前駆細胞]](OPC)での局在が報告されている<ref name="ref11"><pubmed> 21938553 </pubmed></ref>。  


 FABP7は様々な神経精神疾患、特に[[統合失調症]]の病態との関連が示唆されている。統合失調症患者群において、FABP7の2番目のエクソンに存在する[[一塩基多型]](SNP)で有意な相関が認められ、FABP7 mRNAレベルが統合失調症患者の死後脳で非患者と比較して有意に上昇していることも明らかにされている。FABP7欠損マウスでは統合失調症の[[エンドフェノタイプ]]のひとつとされる[[プレパルスインヒビション]](PPI)が障害されている。PPIの機能障害は他の神経[[精神疾患]]([[アルツハイマー病]]、[[自閉症障害]]、[[双極性障害]]など)にも見られることから、これらの疾患にもFABP7が関与していると考えられている <ref name="ref9" /><ref name="ref12"><pubmed> 18001149 </pubmed></ref>。また、FABP7は[[ダウン症]]患者の脳に過剰に発現している<ref name="ref1" />。末梢神経系ではFABP7の発現は低いが、神経傷害時に[[シュワン細胞]]において発現誘導が認められ、シュワン細胞と再生神経軸索の接着に関与することが知られている<ref name="ref13"><pubmed> 12612091 </pubmed></ref>。さらにFABP7はヒト悪性膠芽腫に発現し、FABP7の発現と生存率の間には有意の相関がある。ヒト悪性膠芽腫の浸潤と進行にFABP7は重要な役割を担っており、有効な予後マーカーになりうると考えられている<ref name="ref5" />。
 FABP7は様々な神経精神疾患、特に[[統合失調症]]の病態との関連が示唆されている。統合失調症患者群において、FABP7の2番目のエクソンに存在する[[一塩基多型]](SNP)で有意な相関が認められ、FABP7 mRNAレベルが統合失調症患者の死後脳で非患者と比較して有意に上昇していることも明らかにされている。FABP7欠損マウスでは統合失調症の[[エンドフェノタイプ]]のひとつとされる[[プレパルスインヒビション]](PPI)が障害されている。PPIの機能障害は他の神経[[精神疾患]]([[アルツハイマー病]]、[[自閉症障害]]、[[双極性障害]]など)にも見られることから、これらの疾患にもFABP7が関与していると考えられている <ref name="ref9" /><ref name="ref12"><pubmed> 18001149 </pubmed></ref>。また、FABP7は[[ダウン症]]患者の脳に過剰に発現している<ref name="ref1" />。末梢神経系ではFABP7の発現は低いが、神経傷害時に[[シュワン細胞]]において発現誘導が認められ、シュワン細胞と再生神経軸索の接着に関与することが知られている<ref name="ref13"><pubmed> 12612091 </pubmed></ref>。さらにFABP7はヒト悪性膠芽腫に発現し、FABP7の発現と生存率の間には有意の相関がある。ヒト悪性膠芽腫の浸潤と進行にFABP7は重要な役割を担っており、有効な予後マーカーになりうると考えられている<ref name="ref5" />。

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