「到達運動」の版間の差分

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==脳内の到達運動制御==
==脳内の到達運動制御==
===大脳皮質===
===大脳皮質===
脳内では、大脳の背側視覚経路、特に[[頭頂連合野]]の複数領域で、複数の[[座標系]]が、並行して処理され[[空間知覚]]に関わっている。
脳内では、もともと視覚野で[[座標系|網膜中心座標系]]で表現されていた位置情報は、大脳の背側視覚経路、つまり視覚前野を経由し、[[頭頂連合野]]の複数領域で、単一の座標系ではなく複数の[[座標系]]が、並行して処理され[[空間知覚]]に関わっている。
もともと網膜中心座標で表現されていた位置情報は、[[座標系|眼球中心座標系]]、[[座標系|頭部中心座標系・身体中心座標系]]、[[座標系|身体部位中心座標系]]へと座標変換され、頭頂葉の複数の領域で表現される。その空間情報が到達運動や眼球運動に使われる。
[[座標系|網膜中心座標系]]は、[[座標系|眼球中心座標系]]、[[座標系|頭部中心座標系・身体中心座標系]]、[[座標系|身体部位中心座標系]]などの複数の座標系へと座標変換される。これらの座標系は、頭頂連合野の複数の領域で表現されでおり、眼球運動や到達運動、把持運動などを適当な座標系を用いて制御する。運動の種類によって、制御する脳領域が異なっている。
[[頭頂連合野]]は、[[運動前野]]との結合が強く、[[上縦束]](SLF)と呼ばれる皮質下の線維束で、運動前野と結合している(Thiebaut de Schotten et al., 2012)。この線維束は、3本に分かれており、特に[[頭頂連合野|上頭頂小葉]]と[[運動前野|背側運動前野]]を結ぶ一番背側部の経路(SLF-I)が、到達運動に関わっていると考えられているが、[[頭頂連合野|下頭頂小葉]]と[[運動前野|腹側運動前野]]を結ぶ腹側部の経路(SLF-III)も一部関っている。この他、一次運動野、小脳、大脳基底核等の領域も到達運動の実現に重要な領域である。
[[頭頂連合野]]は、[[運動前野]]との結合が強く、[[上縦束]](SLF)と呼ばれる皮質下の線維束で、運動前野と結合している(Thiebaut de Schotten et al., 2012)。この線維束は、3本に分かれており、特に[[頭頂連合野|上頭頂小葉]]と[[運動前野|背側運動前野]]を結ぶ一番背側部の経路(SLF-I)が、到達運動に関わっていると考えられている。[[頭頂連合野|下頭頂小葉]]と[[運動前野|腹側運動前野]]を結ぶ腹側部の経路(SLF-III)も一部関っている。この他、一次運動野、小脳、大脳基底核等の領域も到達運動の実現に重要な領域である。
以下にサルの単一ニューロン記録で、明らかになった到達運動に関わると考えられる領域のニューロンの性質を述べる。
以下にサルの単一ニューロン記録で、明らかになった到達運動に関わると考えられる領域のニューロンの性質を述べる。


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=====''[[MIP]]''=====
=====''[[MIP]]''=====
この領域はParietal reach region (PRR)とも呼ばれ、主に眼球中心座標系でのターゲットの位置や運動の方向が表現されている(Cohen & Andersen, 2002)。サッケード運動に関わるLIPとの結合が強く、眼球運動と到達運動の協調的な制御(eye-hand coordination)が行われていると考えられる。空間情報が提示された後に、そのターゲットに向かってサッケードか到達運動を選択するような課題を行わせると、LIPはサッケードに先行し、MIPは到達運動に先行する活動がそれぞれ見られたため、運動の準備や意図に関すると考えられている(Andersen & Buneo, 2002)。
この領域はParietal reach region (PRR)とも呼ばれ、主に眼球中心座標系でのターゲットの位置や運動の方向が表現されている(Cohen & Andersen, 2002)。サッケード運動に関わるLIPとの結合が強く、眼球運動と到達運動の協調的な制御(eye-hand coordination)が行われていると考えられる。空間情報が提示された後に、そのターゲットに向かってサッケードか到達運動を選択するような課題を行わせると、LIPではサッケードに先行し、MIPでは到達運動に先行する活動がそれぞれ見られたため、特定の運動の準備や意図に関すると考えられている(Andersen & Buneo, 2002)。


=====''[[頭頂連合野|5野]](PE)''=====
=====''[[頭頂連合野|5野]](PE)''=====
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