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Akiramurata (トーク | 投稿記録) 細 (→5野(PE)) |
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=====''[[頭頂葉|5野]](PE)''===== | =====''[[頭頂葉|5野]](PE)''===== | ||
この領域は頭頂間溝の背側の表面に出ている領域で、中心後回の最も後ろの5野の一部分に相当する。腕の初期位置からのベクトルで運動の方向を表現することから、[[座標系|手先中心座標]]の表現がある<ref name=ref16><pubmed>22841318</pubmed></ref>。ニューロン活動に関して、時系列で情報量解析すると、感覚フィードバックを表現するものと[[遠心性コピー]](運動指令のコピー)/[[遠心性コピー|随伴発射]](予測された感覚フィードバック)を表現しているものに分類されるという研究もある<ref name=ref17><pubmed>18499800</pubmed></ref>。解剖学的な結合を考えると、[[一次運動野]]や[[運動前野]]からの遠心性コピーによって、順モデルによって感覚フィードバックが予測されるというメカニズムが大脳皮質にもあることを示している。また、ターゲットの突然の変更による到達運動の軌道修正の際に、その軌道のオンラインの修正に関わっている活動も認められる。PEは、[[一次運動野]]との直接の結合も見られることから、運動をモニターしながら運動指令の修正に関わると考えられる。実際、視覚性運動失調では運動の修正ができない<ref name=ref18><pubmed>25264945</pubmed></ref>また、5野のニューロンは、計画された運動と行われた運動の間の内在的なエラーとターゲットと指先の間のエラーの両方が表現することが明らかになっている<ref name= | この領域は頭頂間溝の背側の表面に出ている領域で、中心後回の最も後ろの5野の一部分に相当する。腕の初期位置からのベクトルで運動の方向を表現することから、[[座標系|手先中心座標]]の表現がある<ref name=ref16><pubmed>22841318</pubmed></ref>。ニューロン活動に関して、時系列で情報量解析すると、感覚フィードバックを表現するものと[[遠心性コピー]](運動指令のコピー)/[[遠心性コピー|随伴発射]](予測された感覚フィードバック)を表現しているものに分類されるという研究もある<ref name=ref17><pubmed>18499800</pubmed></ref>。解剖学的な結合を考えると、[[一次運動野]]や[[運動前野]]からの遠心性コピーによって、順モデルによって感覚フィードバックが予測されるというメカニズムが大脳皮質にもあることを示している。また、ターゲットの突然の変更による到達運動の軌道修正の際に、その軌道のオンラインの修正に関わっている活動も認められる。PEは、[[一次運動野]]との直接の結合も見られることから、運動をモニターしながら運動指令の修正に関わると考えられる。実際、視覚性運動失調では運動の修正ができない<ref name=ref18><pubmed>25264945</pubmed></ref>また、5野のニューロンは、計画された運動と行われた運動の間の内在的なエラーとターゲットと指先の間のエラーの両方が表現することが明らかになっている<ref name=ref19><pubmed>29983313</pubmed></ref>。 | ||
=====''[[空間知覚|V6A]]''===== | =====''[[空間知覚|V6A]]''===== | ||
この領域の到達運動ニューロンも、運動の方向や奥行きにも反応選択性を示す。視覚反応も、対側の空間に視覚受容野を持ち、全体として視野の周辺部までカバーする。視覚[[受容野]]は、眼球位置によって影響を受けず、頭部中心座標系における位置情報を表現しているニューロンが認められる<ref name= | この領域の到達運動ニューロンも、運動の方向や奥行きにも反応選択性を示す。視覚反応も、対側の空間に視覚受容野を持ち、全体として視野の周辺部までカバーする。視覚[[受容野]]は、眼球位置によって影響を受けず、頭部中心座標系における位置情報を表現しているニューロンが認められる<ref name=ref20><pubmed>14517595</pubmed></ref>。さらに、腕の固有感覚や皮膚感覚など体性感覚刺激に反応するニューロンが認められている。また、近年、この領域で到達運動に関わるニューロン以外に把持運動に関連するニューロン活動が記録されている<ref name=ref21><pubmed>28196647</pubmed></ref>。これらのニューロンは、到達運動と把持運動の協調的制御を行っていると考えられる。 | ||
=====''[[背側運動前野]](PMd)''===== | =====''[[背側運動前野]](PMd)''===== | ||
PMdでは、到達運動や手首傾きに関わるニューロン活動が記録される<ref name= | PMdでは、到達運動や手首傾きに関わるニューロン活動が記録される<ref name=ref22><pubmed>24692357</pubmed></ref>。視覚刺激を出してから遅延を与えて到達運動をする課題では、運動に先行した活動([[運動前野|set-related activity]])が見られ、運動の準備に関わると考えられる<ref name=ref23><pubmed>9056706</pubmed></ref>また、視覚刺激に関わる活動や運動そのものに関わる活動も見られる。運動のためのターゲットの位置が空間的に表現されるのではなく、色や形などで抽象的に表現される場合でも、同様の反応が認められる。空間情報から運動への変換過程に関わると考えられる。PMdに、運動のキネマティクスの情報が表現されていると実験結果もある<ref name=ref24><pubmed>2022240</pubmed></ref><ref name=ref25><pubmed>30760821</pubmed></ref>。運動効果器(右腕 左腕)の選択にも関わることが明らかになっている<ref name=ref26><pubmed>11100727</pubmed></ref>。 | ||
====SLF-IIIによって結ばれる領域==== | ====SLF-IIIによって結ばれる領域==== | ||
[[腹側運動前野]](F4)と頭頂間溝の底部にある[[空間知覚|VIP]]は、SLF-IIIによって結合しており、いずれも身体のある部分の体性感覚受容野とともに、そのすぐ近くの[[空間知覚|身体周辺空間]](ペリパーソナルスペース)に視覚の受容野を持ち、手の届く範囲の身体部分中心座標を表現している<ref name= | [[腹側運動前野]](F4)と頭頂間溝の底部にある[[空間知覚|VIP]]は、SLF-IIIによって結合しており、いずれも身体のある部分の体性感覚受容野とともに、そのすぐ近くの[[空間知覚|身体周辺空間]](ペリパーソナルスペース)に視覚の受容野を持ち、手の届く範囲の身体部分中心座標を表現している<ref name=ref27><pubmed>8836215</pubmed></ref><ref name=ref28><pubmed>9425183</pubmed></ref>。また[[腹側運動前野]]F5と頭頂間溝の外側壁の[[空間知覚|AIP]]を結ぶ回路は、主に把持運動に関わっているが、手の到達位置によって異なる反応を示すニューロンも見つかっている。 | ||
=====''[[腹側運動前野|F4]]と[[空間知覚|VIP]]''===== | =====''[[腹側運動前野|F4]]と[[空間知覚|VIP]]''===== | ||
F4は、到達運動<ref name= | F4は、到達運動<ref name=ref29><pubmed>3416964</pubmed></ref>や向かってくる物体を手を伸ばして避けるような運動に関わる<ref name=ref30><pubmed>16277998</pubmed></ref>。また、視覚情報がある方向に偏位するようなプリズムメガネをかけて到達運動を行い、学習によって適応する課題(プリズム適応)では、感覚情報そのものを表現する活動や運動のゴール(適応後もゴールの位置は変化していない)に依存するニューロン活動<ref name=ref31><pubmed>12466435</pubmed></ref>が見られた。Inoueらはさらに、腹側運動前野や一次運動野のニューロンが、到達運動の結果のエラーを表現することが明らかにした。小脳とともに適応学習に関わると考えられる<ref name=ref32><pubmed>27181058</pubmed></ref>。VIPやF4の身体周辺空間の表現は、手先と物体の関係性を記述し、身体部分中心座標(例えば手先など)をもとにした運動の制御に重要な役割があると考えられる。この領域で、到達運動に関わるニューロンは明らかにされていないが、解剖学的結合から考えて、F4への視覚情報のソースとなっていると考えられる。 | ||
=====''[[腹側運動前野|F5]]と[[空間知覚|AIP]]''===== | =====''[[腹側運動前野|F5]]と[[空間知覚|AIP]]''===== | ||
F5とAIPではこれまで把持運動の物体の形やそれを把持するときの手の形に選択性を持つニューロンが見つかっており<ref name= | F5とAIPではこれまで把持運動の物体の形やそれを把持するときの手の形に選択性を持つニューロンが見つかっており<ref name=ref33><pubmed>10805659</pubmed></ref>主に把持運動の制御に関わる。近年、それらのニューロンの中に注視点の位置やターゲットの視線をもとにした位置に影響を受けるニューロンが見つかっている<ref name=ref34><pubmed>23595761</pubmed></ref>。また、AIPでは物体内のターゲットの相対位置によって(例えば物体の中のスイッチの位置)、反応が異なるニューロンも見つかっていて、[[座標系|物体中心座標系]]おけるターゲットの位置の情報も持っている<ref name=ref35><pubmed>26562332</pubmed></ref> | ||
====''[[一次運動野]]''==== | ====''[[一次運動野]]''==== | ||
到達運動に関して一次運動野のニューロン活動は、力<ref name= | 到達運動に関して一次運動野のニューロン活動は、力<ref name=ref36><pubmed>4966614</pubmed></ref>、運動や力の方向<ref name=ref37><pubmed>8817266</pubmed></ref>、速度<ref name=ref38><pubmed>10561437</pubmed></ref>など、いくつかの運動のパラメーターに相関を持つことが複数の研究で示されている。 | ||
一方で、体性感覚刺激に対しても反応することがわかっており、単関節あるいは複数の関節の受動的な動きに時反応する<ref name= | 一方で、体性感覚刺激に対しても反応することがわかっており、単関節あるいは複数の関節の受動的な動きに時反応する<ref name=ref39><pubmed>21964335</pubmed></ref>。特に遠位の手では、関節の受動的な動きとともに、皮膚に対する触覚刺激にも反応することが知られている。これらの反応潜時は、[[一次体性感覚野]]よりもわずかに遅い程度であり<ref name=ref40><pubmed>6450275</pubmed></ref>、Scottらは、一次運動野が体性感覚野あるいは5野からの体性感覚情報に基づくオンラインの運動制御に関わっており、最適フィードバック制御モデルを適応できると考えている<ref name=ref41><pubmed>15208695</pubmed></ref> | ||
===[[小脳]]=== | ===[[小脳]]=== | ||
小脳は、運動学習に重要な役割をする。小脳の外側部は、大脳皮質の[[運動前野]]、[[頭頂葉]]、運動野、[[前頭前野]]などから入力を受けており、随意運動制御に重要な役割を担っている。小脳に到達運動のプリズム適応は、小脳に障害があると起こらない。Kitazawa らは、到達運動をした結果生じた目標との誤差の情報が、登上線維によるプルキンエ細胞に発生する複雑スパイクに表現されていることを明らかにした<ref name= | 小脳は、運動学習に重要な役割をする。小脳の外側部は、大脳皮質の[[運動前野]]、[[頭頂葉]]、運動野、[[前頭前野]]などから入力を受けており、随意運動制御に重要な役割を担っている。小脳に到達運動のプリズム適応は、小脳に障害があると起こらない。Kitazawa らは、到達運動をした結果生じた目標との誤差の情報が、登上線維によるプルキンエ細胞に発生する複雑スパイクに表現されていることを明らかにした<ref name=ref42><pubmed>9548253</pubmed></ref>つまり、運動の結果のエラーが登上線維によって、小脳皮質に入力されることを示した。先に述べた、運動前野あるいは一次運動野におけるエラーの情報が、小脳に入力されている可能性がある。一方、平行線維による単純スパイクは運動制御の信号が表現されている。小脳には、[[内部モデル]]が存在するといわれており、眼球運動においては、小脳の単純スパイクが、逆モデルとしての小脳の役割を反映していると考えられている<ref name=ref10></ref>が、上肢運動においては順モデルとしての役割を反映しているという考えもある<ref name=ref43><pubmed>26704591</pubmed></ref> | ||
===[[大脳基底核]]=== | ===[[大脳基底核]]=== | ||
大脳基底核の障害は、筋緊張の異常をもたらし、さまざまな不随意運動を誘発する。神経生理学的な研究と合わせて、大脳基底核は、抑制・脱抑制のメカニズムによって、必要な運動と不必要な運動を切り分け、運動発現のタイミングの制御に関わっていると考えられている。大脳基底核は強化学習に関与することも明らかになっている。到達運動のプリズム適応や学習には、小脳の教師あり学習だけでなく、強化学習を組み込んだモデルも考えられている | 大脳基底核の障害は、筋緊張の異常をもたらし、さまざまな不随意運動を誘発する。神経生理学的な研究と合わせて、大脳基底核は、抑制・脱抑制のメカニズムによって、必要な運動と不必要な運動を切り分け、運動発現のタイミングの制御に関わっていると考えられている。大脳基底核は強化学習に関与することも明らかになっている。到達運動のプリズム適応や学習には、小脳の教師あり学習だけでなく、強化学習を組み込んだモデルも考えられている<ref name=ref44>'''Y Sakaguchi, Y Akashi, M Takano'''<br>Visuo-Motor Adaptation to Stepwise and Gradual Changes in the Environment: Relationship between Consciousness and Adaptation <br>''Joumal of Robotics and Mechatronics'', 2001. 48(13);601-613</ref><ref name=ref45><pubmed>15309543</pubmed></ref> | ||
===脳損傷による到達運動の障害=== | ===脳損傷による到達運動の障害=== | ||
====[[視覚性運動失調]](Optic ataxia)==== | ====[[視覚性運動失調]](Optic ataxia)==== | ||
注視下の物体へうまく手を到達させることができないoptiche Ataxiaと、周辺視野への到達障害であるataxie | 注視下の物体へうまく手を到達させることができないoptiche Ataxiaと、周辺視野への到達障害であるataxie optiqueがある。いずれも[[頭頂葉|上頭頂小葉]]の損傷で起こると考えられている | ||
====[[小脳|推尺異常(dysmetria)]]==== | ====[[小脳|推尺異常(dysmetria)]]==== | ||
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==関連項目== | ==関連項目== | ||
[[空間知覚]] | |||
[[座標系]] | |||
[[内部モデル]] | |||
==参考文献== | ==参考文献== | ||
<references /> | <references /> |
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