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従来のゲノム編集は、標的のゲノム部位にDNAの二本鎖切断を起こし、その後に誘導されるDNAの修復機構を利用し、標的DNAを編集する。 | 従来のゲノム編集は、標的のゲノム部位にDNAの二本鎖切断を起こし、その後に誘導されるDNAの修復機構を利用し、標的DNAを編集する。 | ||
一方CRISPR/dCAS9-BEシステムは、DNAを切断することなく標的DNAの塩基を編集する方法である。ヌクレアーゼ活性を失活させたCas9(dCas9)に、脱アミノ化酵素である[[シチジンデアミナーゼ]]を融合させた塩基エディター(BE)を作成し、guide RNAにより狙ったゲノム部位に塩基エディターを働かせ、標的部位の[[wj:シトシン|シトシン]](C)を[[wj:チミン|チミン]](T)(あるいは[[wj:グアニン|グアニン]](G)を[[wj:アデニン|アデニン]](A))に置換する<ref><pubmed>27096365</pubmed></ref><ref><pubmed>27492474</pubmed></ref>。さらにDavid Liuのグループは、PACEを利用してDNAのAをG(あるいはTをC)に置換できる転移RNAのアデノシンデアミナーゼ変異体(アデニン塩基エディター(ABE))の作成に成功した<ref><pubmed>29160308</pubmed></ref>。BEあるいはABEを用いることにより、DNAの二本鎖切断を起こさずにDNAの4塩基全てを個別に置き換えられる。既知の遺伝性疾患の原因となる一塩基変異の約50%は、G-C塩基対からA-T塩基対への転移なので、CRISPR/dCas-ABEシステムは遺伝性疾患を根本的に治す可能性を持っている。しかし、上記塩基編集ツールは、DNAのオフターゲット変異とRNAのオフターゲット変異を引き起こすことが報告された | 一方CRISPR/dCAS9-BEシステムは、DNAを切断することなく標的DNAの塩基を編集する方法である。ヌクレアーゼ活性を失活させたCas9(dCas9)に、脱アミノ化酵素である[[シチジンデアミナーゼ]]を融合させた塩基エディター(BE)を作成し、guide RNAにより狙ったゲノム部位に塩基エディターを働かせ、標的部位の[[wj:シトシン|シトシン]](C)を[[wj:チミン|チミン]](T)(あるいは[[wj:グアニン|グアニン]](G)を[[wj:アデニン|アデニン]](A))に置換する<ref><pubmed>27096365</pubmed></ref><ref><pubmed>27492474</pubmed></ref>。さらにDavid Liuのグループは、PACEを利用してDNAのAをG(あるいはTをC)に置換できる転移RNAのアデノシンデアミナーゼ変異体(アデニン塩基エディター(ABE))の作成に成功した<ref><pubmed>29160308</pubmed></ref>。BEあるいはABEを用いることにより、DNAの二本鎖切断を起こさずにDNAの4塩基全てを個別に置き換えられる。既知の遺伝性疾患の原因となる一塩基変異の約50%は、G-C塩基対からA-T塩基対への転移なので、CRISPR/dCas-ABEシステムは遺伝性疾患を根本的に治す可能性を持っている。しかし、上記塩基編集ツールは、DNAのオフターゲット変異とRNAのオフターゲット変異を引き起こすことが報告された<ref><pubmed> 30819928 </pubmed></ref><ref><pubmed> 30995674 </pubmed></ref>。C-to-T塩基編集ツールにはDNAおよびRNAの大規模なオフターゲト変異が起こり、A-to-G塩基編集ツールにはRNAのオフターゲット変異が起こる。塩基編集ツールに関しても、デアミナーゼの改変や多様なデアミナーゼの探索など、オフターゲット活性の最小化が必要である。 | ||
===RNAの編集=== | ===RNAの編集=== |