「腹側線条体」の版間の差分

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== 定義と概要 ==
== 定義と概要 ==
 腹側線条体 (ventral striatum) は側坐核(the nucleus accumbens)を中心として、それに接する前交連より吻側の尾状核腹内側から内包の腹側へ続く領域、被殻腹内側、外側嗅索に接する前有孔質(anterior perforated substance)を含む領域を含み、腹側は嗅結節(olfactory tubercle)に続く。腹側線条体の大半を占める側坐核は薬物中毒・統合失調症・強迫性障害・注意欠陥多動性障害等の精神疾患との関連が指摘され、多くの知見が報告されている。
 [[腹側線条体]]は[[側坐核]](nucleus accumbens)を中心として、それに接する[[前交連]]より吻側の[[尾状核]]腹内側から[[内包]]の腹側へ続く領域、[[被殻]]腹内側、[[外側嗅索]]に接する[[前有孔質]](anterior perforated substance)を含む領域を含み、腹側は[[嗅結節]](olfactory tubercle)に続く。腹側線条体の大半を占める側坐核は[[依存症|薬物中毒]]・[[統合失調症]]・[[強迫性障害]]・[[注意欠陥多動性障害]]等の精神疾患との関連が指摘され、多くの知見が報告されている。


 腹側線条体は線条体の他の部分と多くの共通点を持ち、腹側線条体と背外側線条体(dorsolateral striatum)との境界については細胞構築・組織化学的には不明瞭であり、入力元によるところが大きい。腹側線条体・背側線条体どちらも皮質・視床・脳幹からの入力があるが、腹側線条体のみが扁桃体と海馬からの強い投射を受けている。
 腹側線条体は[[線条体]]の他の部分と多くの共通点を持ち、腹側線条体と[[背外側線条体]](dorsolateral striatum)との境界については細胞構築・組織化学的には不明瞭であり、入力元によるところが大きい。腹側線条体・背側線条体どちらも[[皮質]]・[[視床]]・[[脳幹]]からの入力があるが、腹側線条体のみが[[扁桃体]]と[[海馬]]からの強い投射を受けている。


 側坐核は解剖・機能的に背側線条体と共通点が多いcoreと、特異な点が多い三日月型のshellとから成る。組織化学的にはcalbindin (calcium-binding protein)染色でshellは薄くcoreは濃く染まる点が種を超えてみられる<ref name=Groenewegen1999><pubmed>10415642</pubmed></ref> 。ただし、coreと背側線条体の境界は不明瞭である。coreに比べ、shellは[[GluR1]], [[GAP-43]], [[アセチルコリンエステラーゼ]]、[[オピオイド]][[μ受容体]]結合、[[セロトニン]]、[[サブスタンスP]]が豊富である。[[ドーパミントランスポーター]]はcoreも含め腹側線条体では背側線条体に比べて濃度が低い。これは、腹側線条体に主に投射する[[ドーパミン]]細胞領域のdorsal tierでdopamine transporterの mRNAが低値であることと一致する<ref name=Haber1999><pubmed>10415641</pubmed></ref> 。細胞形態学的には、背側線条体に比べ腹側線条体の細胞はやや小さく、密に分布する傾向にあり、striosome (patch)-matrix構造は背側線条体ほど明確に見られない<ref name=Holt1997><pubmed>9214537;Haber, 1999 #1667</pubmed></ref> ;<ref name=Haber1999><pubmed>10415641</pubmed></ref>  
 側坐核は解剖・機能的に背側線条体と共通点が多いcoreと、特異な点が多い三日月型のshellとから成る。組織化学的には[[カルビンジン]] (calbindin; calcium-binding protein)染色でshellは薄くcoreは濃く染まる点が種を超えてみられる<ref name=Groenewegen1999><pubmed>10415642</pubmed></ref> 。ただし、coreと背側線条体の境界は不明瞭である。coreに比べ、shellは[[GluR1]][[GAP-43]][[アセチルコリンエステラーゼ]]、[[オピオイド]][[μ受容体]]結合、[[セロトニン]]、[[サブスタンスP]]が豊富である。[[ドーパミントランスポーター]]はcoreも含め腹側線条体では背側線条体に比べて濃度が低い。これは、腹側線条体に主に投射する[[ドーパミン]]細胞領域のdorsal tierでドーパミントランスポーターの mRNAが低値であることと一致する<ref name=Haber1999><pubmed>10415641</pubmed></ref> 。細胞形態学的には、背側線条体に比べ腹側線条体の細胞はやや小さく、密に分布する傾向にあり、striosome (patch)-matrix構造は背側線条体ほど明確に見られない<ref name=Haber1999 /><ref name=Holt1997><pubmed>9214537</pubmed></ref>


 腹側線条体の大半を占める側坐核は[[薬物中毒]]・[[統合失調症]]・[[強迫性障害]]・[[注意欠陥多動性障害]]等の[[精神疾患]]との関連が指摘され、多くの知見が報告されている。
[[File:Nakamura Fig1.png|thumbnail|right|'''図1. Calbindin染色によるげっ歯類の腹側線条体の区分'''<br><ref name=Groenewegen1999><pubmed>10415642</pubmed></ref>より。<br>AcbSh, 側坐核shell; AcbC, 側坐核core; ac, 前交連]]
[[File:Nakamura Fig1.png|thumbnail|right|'''図1. Calbindin染色によるげっ歯類の腹側線条体の区分'''<br><ref name=Groenewegen1999><pubmed>10415642</pubmed></ref>より。<br>AcbSh, 側坐核shell; AcbC, 側坐核core; ac, 前交連]]


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