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海馬新生ニューロンは、歯状回の顆粒細胞として機能する。しかし、その機能は周囲にある成熟した顆粒細胞とは大きく異なり、むしろ発達期に存在する幼若タイプのニューロンに近く、発火しやすく神経[[可塑性]]に富む<ref name=ref16><pubmed>15107864</pubmed></ref> <ref name=ref17><pubmed>15056704</pubmed></ref>。一般に顆粒細胞は[[嗅内野]]皮質からの投射([[貫通線維]])を受け神経情報を受容し、[[苔状線維]]を[[CA3]]領域に伸ばし、CA3[[錐体細胞]]との間に[[シナプス]]結合を形成する。新生ニューロンは、[[NMDA型グルタミン酸受容体]]を介した神経可塑性に富んでおり<ref name=ref16 />、加えて顆粒細胞にしては珍しくGABA神経による強い興奮抑制がない<ref name=ref18><pubmed>22282476</pubmed></ref>。そのため、歯状回部位における神経信号のゲート機構を担っていることが推測されている。 | 海馬新生ニューロンは、歯状回の顆粒細胞として機能する。しかし、その機能は周囲にある成熟した顆粒細胞とは大きく異なり、むしろ発達期に存在する幼若タイプのニューロンに近く、発火しやすく神経[[可塑性]]に富む<ref name=ref16><pubmed>15107864</pubmed></ref> <ref name=ref17><pubmed>15056704</pubmed></ref>。一般に顆粒細胞は[[嗅内野]]皮質からの投射([[貫通線維]])を受け神経情報を受容し、[[苔状線維]]を[[CA3]]領域に伸ばし、CA3[[錐体細胞]]との間に[[シナプス]]結合を形成する。新生ニューロンは、[[NMDA型グルタミン酸受容体]]を介した神経可塑性に富んでおり<ref name=ref16 />、加えて顆粒細胞にしては珍しくGABA神経による強い興奮抑制がない<ref name=ref18><pubmed>22282476</pubmed></ref>。そのため、歯状回部位における神経信号のゲート機構を担っていることが推測されている。 | ||
また歯状回部位は、空間記憶における[[パターン分離]]を司っているが<ref name=ref19><pubmed>17556551</pubmed></ref>、この作用は主に新生ニューロンにより司られていることが判ってきた<ref name=ref20><pubmed>19590004</pubmed></ref> <ref name=ref21><pubmed>21460835</pubmed></ref> <ref name=ref22><pubmed>22365813</pubmed></ref>。加えて、新生ニューロンには、記憶をアップデートする機能や<ref name=ref23><pubmed>19914173</pubmed></ref>、過去の記憶を整理し[[ストレス応答]]を緩和する働きがあることもわかってきた<ref name=ref24><pubmed>12907793</pubmed></ref> <ref name=ref25><pubmed>21814201</pubmed></ref>。成体脳で新生ニューロンが存在しているのは極めて限られた部位であるが、新生ニューロンは周辺ニューロンとは極めて異なる機能特性を持っており、この特殊なニューロンが海馬回路に機能的に組み込まれることによって、記憶の[[形成]]・[[維持]]・[[消去]]や、さらには[[感情]]のコントロールへと至る様々な脳機能に対して、中核的な働きを示しているのである<ref name=ref23 /> <ref name=ref24 /> <ref name=ref25 />。海馬体からの出力は、[[海馬采]]を経て[[脳弓]]へと至る経路と、嗅内野皮質を経て大脳[[新皮質]]の各領域と連結する経路がある<ref name=ref26><pubmed>18270514</pubmed></ref>。 | また歯状回部位は、空間記憶における[[パターン分離]]を司っているが<ref name=ref19><pubmed>17556551</pubmed></ref>、この作用は主に新生ニューロンにより司られていることが判ってきた<ref name=ref20><pubmed>19590004</pubmed></ref> <ref name=ref21><pubmed>21460835</pubmed></ref> <ref name=ref22><pubmed>22365813</pubmed></ref>。加えて、新生ニューロンには、記憶をアップデートする機能や<ref name=ref23><pubmed>19914173</pubmed></ref>、過去の記憶を整理し[[ストレス応答]]を緩和する働きがあることもわかってきた<ref name=ref24><pubmed>12907793</pubmed></ref> <ref name=ref25><pubmed>21814201</pubmed></ref>。成体脳で新生ニューロンが存在しているのは極めて限られた部位であるが、新生ニューロンは周辺ニューロンとは極めて異なる機能特性を持っており、この特殊なニューロンが海馬回路に機能的に組み込まれることによって、記憶の[[記憶|形成]]・[[記憶|維持]]・[[記憶消去|消去]]や、さらには[[感情]]のコントロールへと至る様々な脳機能に対して、中核的な働きを示しているのである<ref name=ref23 /> <ref name=ref24 /> <ref name=ref25 />。海馬体からの出力は、[[海馬采]]を経て[[脳弓]]へと至る経路と、嗅内野皮質を経て大脳[[新皮質]]の各領域と連結する経路がある<ref name=ref26><pubmed>18270514</pubmed></ref>。 | ||
== 病的変化 == | == 病的変化 == |