「オリゴデンドロサイト前駆細胞」の版間の差分

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=== 未分化な神経上皮細胞からOPCへの分化とShh, FGF2 ===  
=== 未分化な神経上皮細胞からOPCへの分化とShh, FGF2 ===  


 OPCは脊髄では、培養実験[22](Warf et al., 1991)やPDGFRαや単クローン抗体O4をマーカーとした形態学的な解析[23][8](Ono et al., 1995; Pringle and Richardson, 1993)から、その腹側部に由来することが示されていた。ソニックヘッジホッグ(Shh)が脊索や底板で発現するMorphogenとして見出され、これが運動ニューロンの分化誘導因子であることが明らかにされた。これらの成果をもとに、ニワトリ胚の神経管背側部近傍への脊索移植実験が行われ、運動ニューロンと同じようにOPCも異所性の脊索により誘導されることが示され、さらに培養実験を用いて、OPCもShhにより誘導されることが明らかにされた[24][25][26](Orentas and Miller, 1996, Orentas et al., 1999; Trousse et al., 1995)。
 OPCは脊髄では、培養実験<ref name=ref22><pubmed>1869925</pubmed></ref>。[22]やPDGFRαや単クローン抗体O4をマーカーとした形態学的な解析<ref name=ref23><pubmed>7600990</pubmed></ref><ref name=ref8><pubmed>8330523</pubmed></ref>。から、その腹側部に由来することが示されていた。ソニックヘッジホッグ(Shh)が脊索や底板で発現するMorphogenとして見出され、これが運動ニューロンの分化誘導因子であることが明らかにされた。これらの成果をもとに、ニワトリ胚の神経管背側部近傍への脊索移植実験が行われ、運動ニューロンと同じようにOPCも異所性の脊索により誘導されることが示され、さらに培養実験を用いて、OPCもShhにより誘導されることが明らかにされた<ref name=ref24><pubmed>8660875</pubmed></ref><ref name=ref25><pubmed>10226001</pubmed></ref><ref name=ref26><pubmed>7473887</pubmed></ref>。


 脊髄腹側部でOPCの分化誘導が起きている時期には、脊髄背側部からはOPC分化抑制因子が発現しており、これがWntとBMP4であることが実験的に示されている。これらの発現が終了する脊髄の発生後期になると、脊髄背側部からのOPCが出現することが、Shh欠損マウスやNkx6欠損マウスを用いて示された。これらは、Shh非依存性でFGF2依存的に誘導される[27](Chandran et al., 2003)。
 脊髄腹側部でOPCの分化誘導が起きている時期には、脊髄背側部からはOPC分化抑制因子が発現しており、これがWntとBMP4であることが実験的に示されている。これらの発現が終了する脊髄の発生後期になると、脊髄背側部からのOPCが出現することが、Shh欠損マウスやNkx6欠損マウスを用いて示された。これらは、Shh非依存性でFGF2依存的に誘導される<ref name=ref27><pubmed>14660548</pubmed></ref>。


=== OPCの移動と軸索ガイダンス分子 ===  
=== OPCの移動と軸索ガイダンス分子 ===  


 OPCが移動することは、ミエリン欠損マウスへの胎仔脳組織の移植で最初に示された。ミエリン欠損マウスに胎児脳組織を大脳皮質に移植すると、脳内の脳幹を含む広い領域でミエリン形成がみられるようになることから、移植組織に由来する細胞が活発に移動することが明らかにされた[28](Lachapelle et al., 1984)。また、視神経のOPCが前脳から移動してきた「移民細胞(immigrant cells)」であることは、培養実験で最初に示唆されていた[29](Small et al., 1987)。さらに、ニワトリ胚の第3脳室に蛍光色素DiIを注入して脳室層細胞を標識すると、これを取り込んだ細胞が視神経に出現しO4に陽性を示すことから、生体内でも「移民細胞」であることが明らかとなった[30](Ono et al.,1997)。最近になって、レトロウイルスベクターを用いたクローン解析でも、ニワトリ胚では前脳に由来する細胞が視神経に入ることが示されている[31](Rampani and Cepko, 2010)。また、PLP-GFPトランスジェニックマウス、ゼブラフィッシュを用いて、脊髄でのOPCの移動がリアルタイムで可視化されている[32](Kirby et al., 2006)[33] (Mallon et al., 2002)
 OPCが移動することは、ミエリン欠損マウスへの胎仔脳組織の移植で最初に示された。ミエリン欠損マウスに胎児脳組織を大脳皮質に移植すると、脳内の脳幹を含む広い領域でミエリン形成がみられるようになることから、移植組織に由来する細胞が活発に移動することが明らかにされた<ref name=ref28><pubmed>6085571</pubmed></ref>。また、視神経のOPCが前脳から移動してきた「移民細胞(immigrant cells)」であることは、培養実験で最初に示唆されていた<ref name=ref29><pubmed>3600791</pubmed></ref>。さらに、ニワトリ胚の第3脳室に蛍光色素DiIを注入して脳室層細胞を標識すると、これを取り込んだ細胞が視神経に出現しO4に陽性を示すことから、生体内でも「移民細胞」であることが明らかとなった<ref name=ref30><pubmed>9292719</pubmed></ref>。最近になって、レトロウイルスベクターを用いたクローン解析でも、ニワトリ胚では前脳に由来する細胞が視神経に入ることが示されている<ref name=ref31><pubmed>20371817</pubmed></ref>。また、PLP-GFPトランスジェニックマウス、ゼブラフィッシュを用いて、脊髄でのOPCの移動がリアルタイムで可視化されている<ref name=ref32><pubmed>17099706</pubmed></ref><ref name=ref33><pubmed>11826117</pubmed></ref>


 OPCの移動は、軸索ガイダンス分子によって制御されている。これは、視神経の組織片培養でOPCがNetrin-1やSema3Aに反発するように移動し、またOPCのサブセットにそれぞれの受容体であるunc5aやneuropilin-1の発現がみられることから明らかにされた [34](Sugimoto et al., 2001)。これをもとに、netrin-1を欠損させたPLP-GFPトランスジェニックマウスを解析しin vivoでもnetrin-1によるOPCの移動制御が明らかにされた[35](Tsai et al., 2002)。
 OPCの移動は、軸索ガイダンス分子によって制御されている。これは、視神経の組織片培養でOPCがNetrin-1やSema3Aに反発するように移動し、またOPCのサブセットにそれぞれの受容体であるunc5aやneuropilin-1の発現がみられることから明らかにされた<ref name=ref34><pubmed>11546748</pubmed></ref>。これをもとに、netrin-1を欠損させたPLP-GFPトランスジェニックマウスを解析しin vivoでもnetrin-1によるOPCの移動制御が明らかにされた<ref name=ref35><pubmed>12668624</pubmed></ref>。


=== OPCの増殖 ===  
=== OPCの増殖 ===  

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