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=== 電磁波(RF)の停止に続く緩和現象 === | === 電磁波(RF)の停止に続く緩和現象 === | ||
励起された原子核は、RFパルスの照射が終わった直後から、エネルギーを放出して定常状態に戻ろうとする(緩和現象)。この緩和現象の主なものとして、縦磁化の回復(縦緩和、<math>T_1</math>緩和)と横磁化の消失(横緩和、<math>T_2</math>緩和)がある。 | |||
<図2.RFパルスによる励起、および<math>T_1</math>、<math>T_2</math>緩和>定常状態(緩和しきった状態)のスピン集団に対して、共鳴周波数でRFパルスを照射した後のスピンの緩和過程を示した図。共鳴周波数と同じ速度で回転する座標系から眺めているため、スピン集団は静止してみえる。上段の3つの図はスピン集団を各々上(xy平面)、横(xz平面およびyz平面)から眺めた図。下段左は斜め上方から眺めた図。下段右の上段には縦磁化の時間変化を、下段右の下段には横磁化の時間変化を示す。RFパルスを照射されたスピンはまず、xy平面上に倒れる(=横磁化の出現)。xy平面上で円弧を描くように広がる(T<sub>2</sub><sup>*</sup>緩和)その後、z軸の(+)方向にむかって、z軸方向の磁化(=縦磁化)が回復して(定常状態に戻って)ゆく。 | |||
==== 縦緩和(''T<sub>1</sub>''緩和) ==== | ==== 縦緩和(''T<sub>1</sub>''緩和) ==== | ||
励起後の巨視的磁化の縦磁化成分の回復(<math>T_1</math>緩和)はスピン―格子緩和とも呼ばれ、原子核スピンが周囲の格子(プロトン以外の物質)にエネルギーを放出して熱平衡状態に戻ることによる現象である。この際の縦磁化の時間変化は、巨視的磁化ベクトル<math>M</math>の、ある時間<math>t</math>における静磁場方向に平行な成分を<math>M_z</math>、熱平衡状態の縦磁化を<math>M_{z,eq}</math>とおくと | |||
<math> | <math> | ||
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</math> | </math> | ||
で回復する。 | で回復する。<math>T_1</math>はこの回復の早さを決める時定数である。 | ||
==== 横緩和(''T<sub>2</sub>''緩和) ==== | ==== 横緩和(''T<sub>2</sub>''緩和) ==== | ||
励起後の巨視的磁化の横磁化成分の消失(''T<sub>2</sub>''緩和)はスピンースピン緩和とも呼ばれ、原子核スピン集団のコヒーレンス(位相同期)の消失(即ち位相分散)による。個々の原子核スピンが「感じる」静磁場はわずかながらランダムに変動しており、結果として時間の経過とともにスピン集団のコヒーレンスが失われてゆく(ある原子核スピンは位相が早くなり、別の原子核スピンは位相が遅くなる)。この際の横磁化の時間変化は、巨視的磁化ベクトル<math>M</math>の、ある時間<math>t</math>における静磁場方向に直交する成分を<math>M_{xy}(t)</math> | 励起後の巨視的磁化の横磁化成分の消失(''T<sub>2</sub>''緩和)はスピンースピン緩和とも呼ばれ、原子核スピン集団のコヒーレンス(位相同期)の消失(即ち位相分散)による。個々の原子核スピンが「感じる」静磁場はわずかながらランダムに変動しており、結果として時間の経過とともにスピン集団のコヒーレンスが失われてゆく(ある原子核スピンは位相が早くなり、別の原子核スピンは位相が遅くなる)。この際の横磁化の時間変化は、巨視的磁化ベクトル<math>M</math>の、ある時間<math>t</math>における静磁場方向に直交する成分を<math>M_{xy}(t)</math>とおくと<math>M_{xy}(t)=M_{xy}(0)e^\frac{-t/T_2}</math>で減衰する。T_2はこの減衰の早さを決める時定数である。 | ||
==== ''T<sub>2</sub><sup>*</sup>''緩和 ==== | ==== ''T<sub>2</sub><sup>*</sup>''緩和 ==== |