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(文献<ref name=ref2 />より引用)]] | (文献<ref name=ref2 />より引用)]] | ||
== 作用機序 == | == 作用機序 == | ||
抗てんかん薬は、イオンチャネルに対して影響を与え、神経細胞の過剰興奮を抑制することでその発作抑制効果を発揮していると考えられている。その作用点は大きく7つが現在挙げられている。'''図1.'''に、抗てんかん薬の主な作用機序を示す<ref name=ref2>吉村元、松本理器<br>てんかんの新規治療薬<br>Annual Review神経2018 中外医学社、2018</ref>。'''表1.'''に主要な薬剤とイオンチャネルの関係で、比較的よくわかっているものをまとめた<ref name=ref3>兼本浩祐<br>てんかん学ハンドブック 第3版<br>医学書院, 2012</ref>。 | 抗てんかん薬は、イオンチャネルに対して影響を与え、神経細胞の過剰興奮を抑制することでその発作抑制効果を発揮していると考えられている。その作用点は大きく7つが現在挙げられている。'''図1.'''に、抗てんかん薬の主な作用機序を示す<ref name=ref2>'''吉村元、松本理器'''<br>てんかんの新規治療薬<br>Annual Review神経2018 中外医学社、2018</ref>。'''表1.'''に主要な薬剤とイオンチャネルの関係で、比較的よくわかっているものをまとめた<ref name=ref3>'''兼本浩祐'''<br>てんかん学ハンドブック 第3版<br>医学書院, 2012</ref>。 | ||
抗てんかん薬の効果は、'''表1.'''に整理したように、作用点との関連で、①電位依存型イオンチャネル、②配位依存型イオンチャネル、③GABA代謝阻害、④シナプス小胞タンパク質2A、の4つの大きなグループに分けて考えると理解しやすい。なお、配位依存型イオンチャネルとは、細胞膜に置かれた受容体の一種で、情報伝達物質が結合することで(配位されることで)機能するイオンチャネルのことである。 | 抗てんかん薬の効果は、'''表1.'''に整理したように、作用点との関連で、①電位依存型イオンチャネル、②配位依存型イオンチャネル、③GABA代謝阻害、④シナプス小胞タンパク質2A、の4つの大きなグループに分けて考えると理解しやすい。なお、配位依存型イオンチャネルとは、細胞膜に置かれた受容体の一種で、情報伝達物質が結合することで(配位されることで)機能するイオンチャネルのことである。 | ||
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◎は主要な抗てんかん作用。±は補助的に作用している可能性あり。◯はその中間。 | ◎は主要な抗てんかん作用。±は補助的に作用している可能性あり。◯はその中間。 | ||
文献<ref name=ref3 />,<ref>日本神経学会監修<br>「てんかん診療ガイドライン」委員会編集:てんかん診療ガイドライン2018<<br>医学書院, 2018 [https://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan_2018.html]</ref>,<ref>大野行弘、松本理器 <br>臨床薬学テキストシリーズ:神経・筋・精神・麻酔・鎮痛. 第1章 神経・筋疾患. B 疾患各論 ①てんかん. p 34-46. <br>中川書店)</ref>を元に作成。 | 文献<ref name=ref3 />,<ref name=日本神経学会>'''日本神経学会監修'''<br>「てんかん診療ガイドライン」委員会編集:てんかん診療ガイドライン2018<<br>医学書院, 2018 [https://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan_2018.html]</ref>,<ref>'''大野行弘、松本理器''' <br>臨床薬学テキストシリーズ:神経・筋・精神・麻酔・鎮痛. 第1章 神経・筋疾患. B 疾患各論 ①てんかん. p 34-46. <br>中川書店)</ref>を元に作成。 | ||
{| class="wikitable" style="text-align: left; | {| class="wikitable" style="text-align: left; | ||
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日本では、1989年発売のゾニサミド以降、長らく抗てんかん薬の開発は行われていなかったが、2000年にクロバザムが発売された。その後、いわゆる新規抗てんかん薬と呼ばれるガバペンチン(2006年)、トピラマート(2007年)、ラモトリギン(2008年)、レベチラセタム(2010年)の4剤が相次いで上市されたことから、てんかん治療の選択肢は格段に広がった<ref name=ref4>'''矢野育子、池田昭夫'''<br>新薬展望2017:第Ⅲ部 治療における最近の新薬の位置付け<薬効別>〜新薬の広場〜 抗てんかん薬<br>医薬ジャーナル 53,S-1, 2017</ref>。 | 日本では、1989年発売のゾニサミド以降、長らく抗てんかん薬の開発は行われていなかったが、2000年にクロバザムが発売された。その後、いわゆる新規抗てんかん薬と呼ばれるガバペンチン(2006年)、トピラマート(2007年)、ラモトリギン(2008年)、レベチラセタム(2010年)の4剤が相次いで上市されたことから、てんかん治療の選択肢は格段に広がった<ref name=ref4>'''矢野育子、池田昭夫'''<br>新薬展望2017:第Ⅲ部 治療における最近の新薬の位置付け<薬効別>〜新薬の広場〜 抗てんかん薬<br>医薬ジャーナル 53,S-1, 2017</ref>。 | ||
その後も、希少疾患である Dravet症候群に対するスチリペントールや、Lennox-Gastaut症候群に対するルフィナミドが発売され、2016年にはペランパネル、ビガバトリン、ラコサミド、オクスカルバゼピンの4剤が製造承認を受け、欧米でのガイドラインに沿った治療が行える環境となってきた(現在の日本のガイドラインは、<ref name= | その後も、希少疾患である Dravet症候群に対するスチリペントールや、Lennox-Gastaut症候群に対するルフィナミドが発売され、2016年にはペランパネル、ビガバトリン、ラコサミド、オクスカルバゼピンの4剤が製造承認を受け、欧米でのガイドラインに沿った治療が行える環境となってきた(現在の日本のガイドラインは、<ref name=日本神経学会 />を参照)。 | ||
また、欧米のてんかん重積状態の治療ガイドラインなどにおいて、第1選択薬としてあげられているロラゼパム静注製剤が、2019年2月に製造承認を受けた。 | また、欧米のてんかん重積状態の治療ガイドラインなどにおいて、第1選択薬としてあげられているロラゼパム静注製剤が、2019年2月に製造承認を受けた。 | ||
120行目: | 120行目: | ||
薬剤抵抗性てんかんに対しては、薬物療法の再検討(診断、薬剤選択、投与量、薬理動態に基づく抗てんかん薬の使用など)、およびてんかん外科(てんかん焦点切除術、脳梁離断術、迷走神経刺激療法など)などの他の治療法を検討する5)。 | 薬剤抵抗性てんかんに対しては、薬物療法の再検討(診断、薬剤選択、投与量、薬理動態に基づく抗てんかん薬の使用など)、およびてんかん外科(てんかん焦点切除術、脳梁離断術、迷走神経刺激療法など)などの他の治療法を検討する5)。 | ||
自己免疫介在性の病態であれば免疫療法(免疫グロブリン静注療法、ステロイド、免疫抑制剤など)が奏功する<ref><pubmed> 25036726</pubmed></ref><ref>坂本光弘、松本理器、十川純平、端祐一郎、武山博文、小林勝哉、下竹昭寛、近藤誉之、高橋良輔、池田昭夫<br>自己免疫性てんかんにおける診断アルゴリズムの提唱とその有用性の予備的検討<br>臨床神経学 2018;58:609-616.</ref>。 | 自己免疫介在性の病態であれば免疫療法(免疫グロブリン静注療法、ステロイド、免疫抑制剤など)が奏功する<ref><pubmed> 25036726</pubmed></ref><ref>'''坂本光弘、松本理器、十川純平、端祐一郎、武山博文、小林勝哉、下竹昭寛、近藤誉之、高橋良輔、池田昭夫'''<br>自己免疫性てんかんにおける診断アルゴリズムの提唱とその有用性の予備的検討<br>臨床神経学 2018;58:609-616.</ref>。 | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
<references /> | <references /> |