「抗てんかん薬」の版間の差分

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==抗てんかん薬とは==
==抗てんかん薬とは==
 [[てんかん]]([[癲癇]])は、脳内の[[神経細胞]]の異常な電気的興奮に伴って[[痙攣]]や[[意識障害]]などが発作的に起こる慢性的な疾患である(脳科学辞典「[[てんかん]]」の項目も参照)。[[wj:有病率|有病率]]は一般に人口の0.5 ~ 1.0 %とされており、近年の我が国での[[wj:健康保険組合|健康保険組合]]の[[wj:診療報酬|診療報酬]]情報の分析に基づく[[wj:疫学|疫学]]研究でも、患者数は人口1000人あたり7.24人(人口の約0.7 %)と推計され<ref>'''厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)総合研究'''<br>「てんかんの有病率等に関する疫学研究及び診療実態の分析と治療体制の整備に関する研究」報告書<br>研究代表者 大槻泰介 国立精神・神経医療研究センター てんかんセンター長, 2016</ref>、頻度の高い神経疾患の一つである。
 [[てんかん]]([[癲癇]])は、脳内の[[神経細胞]]の異常な電気的興奮に伴って[[けいれん]]や[[意識障害]]などが発作的に起こる慢性的な疾患である(脳科学辞典「[[てんかん]]」の項目も参照)。[[wj:有病率|有病率]]は一般に人口の0.5 ~ 1.0 %とされており、近年の我が国での[[wj:健康保険組合|健康保険組合]]の[[wj:診療報酬|診療報酬]]情報の分析に基づく[[wj:疫学|疫学]]研究でも、患者数は人口1000人あたり7.24人(人口の約0.7 %)と推計され<ref>'''厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)総合研究'''<br>「てんかんの有病率等に関する疫学研究及び診療実態の分析と治療体制の整備に関する研究」報告書<br>研究代表者 大槻泰介 国立精神・神経医療研究センター てんかんセンター長, 2016</ref>、頻度の高い神経疾患の一つである。


 抗てんかん薬は、てんかんの病態を治癒に導くものではないが、てんかん発作の消失ないし頻度減少や、発作症状の程度の軽減などといった、発作抑制効果を患者にもたらす。
 抗てんかん薬は、てんかんの病態を治癒に導くものではないが、てんかん発作の消失ないし頻度減少や、発作症状の程度の軽減などといった、発作抑制効果を患者にもたらす。
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== 治療の戦略 ==
== 治療の戦略 ==
 抗てんかん薬治療は単剤治療を原則とする。単剤治療で約半数の患者の発作が抑制される。単剤療法として承認されている主な抗てんかん薬は、カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム、フェニトイン、クロナゼパム、ゾニサミド、フェノバルビタール、レベチラセタム、ラモトリギン、ラコサミド、ペランパネル(2020年2月時点)が挙げられる。焦点てんかんでみられる焦点起始発作(部分発作)では、カルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタム、次いでゾニサミド、トピラマートが第一選択薬とされる。全般てんかんの強直間代発作ではバルプロ酸ナトリウム、欠神発作ではバルプロ酸ナトリウム、エトスクシミド、[[ミオクロニー発作]]ではバルプロ酸ナトリウム、クロナゼパムが第一選択薬とされる<ref name=日本神経学会 />。ただし、バルプロ酸ナトリウムは催奇形性を有するため、妊娠の可能性のある女性への投与は避ける必要がある。その場合、催奇形性の低いラモトリギンなどが推奨される。
 抗てんかん薬治療は単剤治療を原則とする。単剤治療で約半数の患者の発作が抑制される。単剤療法として承認されている主な抗てんかん薬は、カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム、フェニトイン、クロナゼパム、ゾニサミド、フェノバルビタール、レベチラセタム、ラモトリギン、ラコサミド、ペランパネル(2020年2月時点)が挙げられる。焦点てんかんでみられる焦点起始発作(部分発作)では、カルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタム、次いでゾニサミド、トピラマートが第一選択薬とされる。全般てんかんの強直間代発作ではバルプロ酸ナトリウム、欠神発作ではバルプロ酸ナトリウム、エトスクシミド、[[ミオクロニー発作]]ではバルプロ酸ナトリウム、クロナゼパムが第一選択薬とされる<ref name=日本神経学会 />。ただし、バルプロ酸ナトリウムには[[二分脊椎]]を含む[[wj:催奇形性|催奇形性]]や[[wj:胎児|胎児]]の[[IQ]]低下の可能性が知られており、妊娠の可能性のある女性への投与は避ける必要がある。その場合、催奇形性の低いラモトリギンなどが推奨される。


 単剤で発作の抑制が不良な場合、合理的多剤併用療法を行う。合理的多剤併用療法とは、現在の使用薬とは異なる作用機序あるいは多くの作用機序を持つ薬剤の追加、副作用プロファイルが重ならない組み合わせ、相互作用が少ない組み合わせを考慮した併用療法のことである。そのてんかんに対し適切とされる抗てんかん薬を単剤あるいは多剤併用で副作用がない範囲の十分な血中濃度で2剤試みても一定期間(1年以上もしくは治療前の最長発作間隔の3倍以上の長いほう)発作を抑制できないてんかんを、[[薬剤抵抗性てんかん]]とよぶ(国際抗てんかん連盟が提唱する定義)。
 単剤で発作の抑制が不良な場合、合理的多剤併用療法を行う。合理的多剤併用療法とは、現在の使用薬とは異なる作用機序あるいは多くの作用機序を持つ薬剤の追加、副作用プロファイルが重ならない組み合わせ、相互作用が少ない組み合わせを考慮した併用療法のことである。そのてんかんに対し適切とされる抗てんかん薬を単剤あるいは多剤併用で副作用がない範囲の十分な血中濃度で2剤試みても一定期間(1年以上もしくは治療前の最長発作間隔の3倍以上の長いほう)発作を抑制できないてんかんを、[[薬剤抵抗性てんかん]]とよぶ(国際抗てんかん連盟が提唱する定義)。

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