「分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
 
59行目: 59行目:
 遺伝子欠損マウスの実験の結果、JNK1, JNK2, JNK3は脳において異なる役割を果たすことが明らかになっている。グルタミン酸受容体の[[アゴニスト]]である[[カイニン酸]]はマウスに投与するとけいれん発作を引き起こすが、このときに[[海馬]]において神経細胞のアポトーシスが起こることが知られている。しかし、JNK3のノックアウトマウスはカイニン酸によるけいれん発作に対して抵抗性を示し、さらに海馬の神経細胞におけるアポトーシスも減弱していることが明らかになっている<ref><pubmed> 9349820 </pubmed></ref>。また、各アイソフォームを組み合わせたダブルノックアウトマウスの解析から、JNK1とJNK2のどちらかが存在することが脳の発生時に必要なアポトーシスにおいて重要であることが示されている<ref><pubmed> 10230788 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10559486 </pubmed></ref>。JNK1とJNK2のダブルノックアウトマウスは胚性致死であるが、これは脳幹形成時の後脳におけるアポトーシスが起こらないことが原因である<ref><pubmed> 10230788 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10559486 </pubmed></ref>。しかしこの変異体の前脳においてはアポトーシスが亢進しており、JNK1とJNK2が前脳と後脳におけるアポトーシスを逆向きに調節していることが示唆されている。
 遺伝子欠損マウスの実験の結果、JNK1, JNK2, JNK3は脳において異なる役割を果たすことが明らかになっている。グルタミン酸受容体の[[アゴニスト]]である[[カイニン酸]]はマウスに投与するとけいれん発作を引き起こすが、このときに[[海馬]]において神経細胞のアポトーシスが起こることが知られている。しかし、JNK3のノックアウトマウスはカイニン酸によるけいれん発作に対して抵抗性を示し、さらに海馬の神経細胞におけるアポトーシスも減弱していることが明らかになっている<ref><pubmed> 9349820 </pubmed></ref>。また、各アイソフォームを組み合わせたダブルノックアウトマウスの解析から、JNK1とJNK2のどちらかが存在することが脳の発生時に必要なアポトーシスにおいて重要であることが示されている<ref><pubmed> 10230788 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10559486 </pubmed></ref>。JNK1とJNK2のダブルノックアウトマウスは胚性致死であるが、これは脳幹形成時の後脳におけるアポトーシスが起こらないことが原因である<ref><pubmed> 10230788 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10559486 </pubmed></ref>。しかしこの変異体の前脳においてはアポトーシスが亢進しており、JNK1とJNK2が前脳と後脳におけるアポトーシスを逆向きに調節していることが示唆されている。


 その他、[[脳由来神経栄養因子|BDNF]]が神経細胞に作用することが軸索の分岐や[[軸索]]の伸長に重要であるが、BDNF刺激によって神経細胞内で[[脱リン酸化酵素]]である[[MKP-1]]の発現が誘導され、そのMKP-1によってJNKが脱リン酸化により不活性化される。この結果、JNKの基質である[[スタスミン]]がリン酸化できずに[[微小管]]の安定性が低下して軸索分岐や伸長が引き起こされることが、MKP-1のノックアウトマウス由来の神経細胞を用いた実験によって明らかになっている<ref><pubmed> 20935641 </pubmed></ref>。線虫における神経損傷後において、成長因子であるSVH-1がその受容体であるSVH-2に作用することで神経再生が起こるが、その過程でJNKが活性化されることの重要性が示唆されている<ref><pubmed> 22388962 </pubmed></ref>。神経変性疾患とJNKの関連も報告があり、[[ハンチントン病]]の病原因子である変異[[ハンチントン]]タンパク質 (Htt) は速い軸索輸送を阻害することでハンチントン病を引き起こすという仮説が立てられているが、このHttが神経細胞軸索のJNK3を特異的に活性化し、JNK3の基質である[[キネシン|キネシン1]]のモータードメインがリン酸化されることでキネシン1が微小管に結合するのが阻害され、速い[[軸索輸送]]が阻害されているという報告がなされている<ref><pubmed> 19525941 </pubmed></ref>。
 その他、[[脳由来神経栄養因子|BDNF]]が神経細胞に作用することが軸索の分岐や[[軸索]]の伸長に重要であるが、BDNF刺激によって神経細胞内で[[脱リン酸化酵素]]である[[MKP-1]]の発現が誘導され、そのMKP-1によってJNKが脱リン酸化により不活性化される。この結果、JNKの基質である[[スタスミン]]がリン酸化できずに[[微小管]]の安定性が低下して[[軸索分岐]]や伸長が引き起こされることが、MKP-1のノックアウトマウス由来の神経細胞を用いた実験によって明らかになっている<ref><pubmed> 20935641 </pubmed></ref>。線虫における神経損傷後において、成長因子であるSVH-1がその受容体であるSVH-2に作用することで神経再生が起こるが、その過程でJNKが活性化されることの重要性が示唆されている<ref><pubmed> 22388962 </pubmed></ref>。神経変性疾患とJNKの関連も報告があり、[[ハンチントン病]]の病原因子である変異[[ハンチントン]]タンパク質 (Htt) は速い軸索輸送を阻害することでハンチントン病を引き起こすという仮説が立てられているが、このHttが神経細胞軸索のJNK3を特異的に活性化し、JNK3の基質である[[キネシン|キネシン1]]のモータードメインがリン酸化されることでキネシン1が微小管に結合するのが阻害され、速い[[軸索輸送]]が阻害されているという報告がなされている<ref><pubmed> 19525941 </pubmed></ref>。


==神経細胞におけるMAPKの相互作用==
==神経細胞におけるMAPKの相互作用==

案内メニュー