「機能的磁気共鳴画像法」の版間の差分

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 またEPI画像法には、生体との干渉により生じる静磁場(B0)の空間的不均一性により画像の歪み・位置ずれが生じる。そこで静磁場不均一性の空間分布を示す画像を別に撮像し、この情報を用いてfMRI画像の歪みを補正することで本来の位置を復元する('''図4''')<ref><pubmed> 14568458</pubmed></ref>。撮像条件にもよるが、この空間的位置ずれは数mm~数10 mm程度発生し、fMRI画像を解剖画像に位置合わせする際に誤差を引き起こす。皮質厚が平均2.6 mm程度しかないことを考えると、正確な機能マッピングを行うためには位置ずれ補正が重要である。
 またEPI画像法には、生体との干渉により生じる静磁場(B0)の空間的不均一性により画像の歪み・位置ずれが生じる。そこで静磁場不均一性の空間分布を示す画像を別に撮像し、この情報を用いてfMRI画像の歪みを補正することで本来の位置を復元する('''図4''')<ref><pubmed> 14568458</pubmed></ref>。撮像条件にもよるが、この空間的位置ずれは数mm~数10 mm程度発生し、fMRI画像を解剖画像に位置合わせする際に誤差を引き起こす。皮質厚が平均2.6 mm程度しかないことを考えると、正確な機能マッピングを行うためには位置ずれ補正が重要である。


 また個人間の脳の形や大きさの違いによらない機能マッピングを行うため、3次元位置合わせ法を適用することで脳形状の標準化が行われる。脳の3次元アトラス空間の国際標準として、モントリオール神経研究所(Montreal Neurological Institute, MNI)が作成した座標系が一般的に使われ、MNI標準I空間内の座標位置(x, y, z)上に脳活動を位置同定(マッピング)することで脳の機能構築の解明が進んできた。これまでの膨大なfMRI研究の成果は、MNI座標での機能マッピングデータベースとして構築され<ref><pubmed> 21706013</pubmed></ref>、web上の視覚ツールも公開されている([[[https://neurosynth.org neurosynth.org]]])。
 また個人間の脳の形や大きさの違いによらない機能マッピングを行うため、3次元位置合わせ法を適用することで脳形状の標準化が行われる。脳の3次元アトラス空間の国際標準として、モントリオール神経研究所(Montreal Neurological Institute, MNI)が作成した座標系が一般的に使われ、MNI標準I空間内の座標位置(x, y, z)上に脳活動を位置同定(マッピング)することで脳の機能構築の解明が進んできた。これまでの膨大なfMRI研究の成果は、MNI座標での機能マッピングデータベースとして構築され<ref><pubmed> 21706013</pubmed></ref>、web上の視覚ツールも公開されている([https://neurosynth.org neurosynth.org])。


 MNI座標系のような3次元空間での位置合わせ技術も、高次元の非線形法が進歩したことで精度が向上している。しかし複雑な脳回のパターンを保ったまま3次元位置合わせを行うことは原理的に困難である。そこで、大脳皮質が2次元のシートが折れ曲がった構造をしていることに注目した皮質表面解析法が生まれた<ref><pubmed> 9448242</pubmed></ref><ref><pubmed> 22248573</pubmed></ref>。構造MRI画像から皮質を分画化し、その外表面(皮質と脳軟膜境界)と内表面(白質・皮質境界)を抽出し「皮質表面」を得る。そしてこの皮質表面上で脳回のパターン(曲率や深度)を位置合わせする手法(surface registration)が提案され<ref><pubmed> 10619420</pubmed></ref>、個人間の皮質機能構築を2次元座標上で標準化できるようになった。また皮質表面の2次元座標系と、皮質下構造の3次元MNI座標系を組み合わせた新しい座標(灰白質座標)と専用フォーマットCIFTIも設計された。正確な皮質表面の抽出には、高解像度・高画質の脳構造画像が必要であり、得られた表面境界とfMRI画像との正確な位置合わせを行うことで<ref><pubmed> 19573611</pubmed></ref>、fMRI画像を灰白質画像に正確に重ね合わせ、個人間解析を高い位置精度で行うことが可能になってきている。さらに、脳回情報だけでなく機能や構造に関わる値(RSNやミエリンマップ等)を複数組み合わせた、さらに高い精度の表面位置合わせ法も開発され、応用も進んでいる<ref><pubmed> 29100940</pubmed></ref>。
 MNI座標系のような3次元空間での位置合わせ技術も、高次元の非線形法が進歩したことで精度が向上している。しかし複雑な脳回のパターンを保ったまま3次元位置合わせを行うことは原理的に困難である。そこで、大脳皮質が2次元のシートが折れ曲がった構造をしていることに注目した皮質表面解析法が生まれた<ref><pubmed> 9448242</pubmed></ref><ref><pubmed> 22248573</pubmed></ref>。構造MRI画像から皮質を分画化し、その外表面(皮質と脳軟膜境界)と内表面(白質・皮質境界)を抽出し「皮質表面」を得る。そしてこの皮質表面上で脳回のパターン(曲率や深度)を位置合わせする手法(surface registration)が提案され<ref><pubmed> 10619420</pubmed></ref>、個人間の皮質機能構築を2次元座標上で標準化できるようになった。また皮質表面の2次元座標系と、皮質下構造の3次元MNI座標系を組み合わせた新しい座標(灰白質座標)と専用フォーマットCIFTIも設計された。正確な皮質表面の抽出には、高解像度・高画質の脳構造画像が必要であり、得られた表面境界とfMRI画像との正確な位置合わせを行うことで<ref><pubmed> 19573611</pubmed></ref>、fMRI画像を灰白質画像に正確に重ね合わせ、個人間解析を高い位置精度で行うことが可能になってきている。さらに、脳回情報だけでなく機能や構造に関わる値(RSNやミエリンマップ等)を複数組み合わせた、さらに高い精度の表面位置合わせ法も開発され、応用も進んでいる<ref><pubmed> 29100940</pubmed></ref>。

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