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[[File:Hanakawa_fMRI_Fig7.png|thumb|right|'''図7. ヒト大脳皮質の領域分画化'''<br>マルチモーダルMRI画像(ミエリンコントラスト、安静時機能的連絡性、課題遂行時活動など)を用いて、皮質表面上で機能構築を位置合わせし、皮質表面上で急激に変化する(傾斜が高い)部位を分画の境界線として設定して作成された<ref name= Glasser2016b><pubmed> 27437579</pubmed></ref>。本分画は一般公開されており誰でも利用できる[https://balsa.wustl.edu/976l8]]] | [[File:Hanakawa_fMRI_Fig7.png|thumb|right|'''図7. ヒト大脳皮質の領域分画化'''<br>マルチモーダルMRI画像(ミエリンコントラスト、安静時機能的連絡性、課題遂行時活動など)を用いて、皮質表面上で機能構築を位置合わせし、皮質表面上で急激に変化する(傾斜が高い)部位を分画の境界線として設定して作成された<ref name= Glasser2016b><pubmed> 27437579</pubmed></ref>。本分画は一般公開されており誰でも利用できる[https://balsa.wustl.edu/976l8]]] | ||
1990年後半からfMRI研究は飛躍的に世界中に広まり多くの成果をあげてきた。その間に基礎となるMRI技術も大きく進展し、質の高いデータが得られるようになった。初期の研究の興味は脳の機能局在・分離の同定にあったが、2010年代以後はネットワークとしての脳の解明に興味がシフトした<ref><pubmed> 22481337</pubmed></ref>。一つの研究が扱うfMRIデータの数も、数10人から数百人、数万人の規模へと拡大し、種としてのヒトの脳機能構築やその複雑性の理解、個体差の理解へと興味が広がった。2010年から2016年まで、米国NIHの支援により大規模研究プロジェクトHuman Connectome Project(HCP)が行われた。このプロジェクトでは、[[wj: | 1990年後半からfMRI研究は飛躍的に世界中に広まり多くの成果をあげてきた。その間に基礎となるMRI技術も大きく進展し、質の高いデータが得られるようになった。初期の研究の興味は脳の機能局在・分離の同定にあったが、2010年代以後はネットワークとしての脳の解明に興味がシフトした<ref><pubmed> 22481337</pubmed></ref>。一つの研究が扱うfMRIデータの数も、数10人から数百人、数万人の規模へと拡大し、種としてのヒトの脳機能構築やその複雑性の理解、個体差の理解へと興味が広がった。2010年から2016年まで、米国NIHの支援により大規模研究プロジェクトHuman Connectome Project(HCP)が行われた。このプロジェクトでは、[[wj:セントルイス・ワシントン大学|ワシントン大学セントルイス医学校]]および[[wj:オックスフォード大学|オックスフォード大学]]が中心となり約1200名の健康な若年成人被験者を対象として、安静時fMRI、標準的な課題を用いた課題fMRI、構造MRI(T1・T2強調画像)、[[拡散強調画像]]を撮像し、脳内の機能的結合と構造的結合について統合的に解析を進めた。このプロジェクトは(1)質が高い画像データを大量に取得する、(2)空間分解能を犠牲にすることなくデータを処理する手法を開発する、(3)FACT、すなわち皮質機能(Function)・連絡性(Connectivity)、構造(Architecture)、位置(Topography)の情報を統合した脳の領域分割(parcellation)を行う、(4)取得した生データ、解析データ、データ解析に必要なプログラム・コードを無料で公開する、といった多くの野心的な目標を達成し、現在も世界のMRI脳科学研究に大きな影響を与え続けている。 | ||
特にFACT法は片側半球を180領域に分割することに成功し<ref name= Glasser2016b><pubmed> 27437579</pubmed></ref>、100年以上続くヒト脳の機能分画の歴史の中で初めて非侵襲手法により生きた個人の脳地図を作成することに成功した('''図7''')。こうした技術をさらに発展・拡張させ、脳の個体差の検出や、疾患の診断技術の開発が期待されており、更に規模の大きな研究プロジェクトが各国で推進されている([[w:UK Biobank|UKバイオバンク]]、[https://www.addictionresearch.nih.gov/abcd-study ABCD Study]など)。また動物モデルへの技術展開も進めることで動物種を超えた脳のシステムの解明や、適切な動物疾患モデルの開発や評価法検証も期待される。 | 特にFACT法は片側半球を180領域に分割することに成功し<ref name= Glasser2016b><pubmed> 27437579</pubmed></ref>、100年以上続くヒト脳の機能分画の歴史の中で初めて非侵襲手法により生きた個人の脳地図を作成することに成功した('''図7''')。こうした技術をさらに発展・拡張させ、脳の個体差の検出や、疾患の診断技術の開発が期待されており、更に規模の大きな研究プロジェクトが各国で推進されている([[w:UK Biobank|UKバイオバンク]]、[https://www.addictionresearch.nih.gov/abcd-study ABCD Study]など)。また動物モデルへの技術展開も進めることで動物種を超えた脳のシステムの解明や、適切な動物疾患モデルの開発や評価法検証も期待される。 |