「眼瞼痙攣」の版間の差分

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 局所性ジストニアであり、ジストニアの特徴である定型性、課題特異性、[[感覚トリック]]、[[オーバーフロー現象]]、[[早朝効果]]、[[フリップフロップ現象]]のうちいくつかを持つ場合には診断に役立つ。まれに片側に発症するが、必ず両側性となる。なお「痙攣」と表記するのは慣習によるもので、正しくは攣縮 (spasm)であることから、日本神経学会では正式用語を眼瞼攣縮としている。
 局所性ジストニアであり、ジストニアの特徴である定型性、課題特異性、[[感覚トリック]]、[[オーバーフロー現象]]、[[早朝効果]]、[[フリップフロップ現象]]のうちいくつかを持つ場合には診断に役立つ。まれに片側に発症するが、必ず両側性となる。なお「痙攣」と表記するのは慣習によるもので、正しくは攣縮 (spasm)であることから、日本神経学会では正式用語を眼瞼攣縮としている。


 実際には眼輪筋に留まらず、周囲の筋の不随意収縮を伴う例が多い。[[鼻筋]]、[[鼻根筋]]、[[皺眉筋]]のほか、より広く顔面表情筋全体が収縮する例もある([[顔面ジストニア]])。開瞼障害が重度になると機能的には盲目となる。発症後しばらくは悪化するが数年で重症度が固定し、その後は大きく変化しない例が多い。一部で他部位のジストニアを合併する。症状の変化と広がりについては個人差が大きいが、海外の報告は眼部以外への広がりが半数以上に生じるとしており<ref name=Berman2020><pubmed>31848221</pubmed></ref><ref name=Grandas1988><pubmed>3404184</pubmed></ref><ref name=Svetel2015><pubmed>25764999</pubmed></ref> 7)-9)、[[ボツリヌス毒素]]療法を行なっている自験例での印象よりも高頻度である。とりわけ古い文献ではしばしば口部の運動異常症について[[ジスキネジア]]とジストニアとの区別がなされていないので注意を要する。口部(および舌)ジスキネジアはかつて眼瞼痙攣にしばしば認めたが、近年では減少している印象があり、[[抗コリン薬]]の使用頻度が減ったこととの関連を筆者は疑っている。
 実際には眼輪筋に留まらず、周囲の筋の不随意収縮を伴う例が多い。[[鼻筋]]、[[鼻根筋]]、[[皺眉筋]]のほか、より広く顔面表情筋全体が収縮する例もある([[顔面ジストニア]])。開瞼障害が重度になると機能的には盲目となる。発症後しばらくは悪化するが数年で重症度が固定し、その後は大きく変化しない例が多い。一部で他部位のジストニアを合併する。症状の変化と広がりについては個人差が大きいが、海外の報告は眼部以外への広がりが半数以上に生じるとしており<ref name=Grandas1988><pubmed>3404184</pubmed></ref><ref name=Svetel2015><pubmed>25764999</pubmed></ref><ref name=Berman2020><pubmed>31848221</pubmed></ref> 7)-9)、[[ボツリヌス毒素]]療法を行なっている自験例での印象よりも高頻度である。とりわけ古い文献ではしばしば口部の運動異常症について[[ジスキネジア]]とジストニアとの区別がなされていないので注意を要する。口部(および舌)ジスキネジアはかつて眼瞼痙攣にしばしば認めたが、近年では減少している印象があり、[[抗コリン薬]]の使用頻度が減ったこととの関連を筆者は疑っている。


 鑑別すべき疾患には、神経系の疾患として[[開瞼失行]]([[開眼失行]])、[[眼瞼ミオキミア]]、[[片側顔面痙攣]]([[片側顔面攣縮]])、[[チック]]、[[舞踏症]]、[[特発性瞬目増多]]、[[眼瞼下垂]]、[[心因性開瞼困難]]などが<ref>'''目崎高広 in press'''<br>脳神経内科の立場から. 形成外科</ref>10)、また眼疾患として[[ドライアイ]]、[[前部ぶどう膜炎]]、[[後嚢下白内障]]、眼表面の刺激などがある<ref name=眼瞼痙攣診療ガイドライン委員会 />6)。難治性のドライアイと診断されていた患者の57%がMeige症候群であったとの報告がある<ref name=Tsubota1997><pubmed>9274405</pubmed></ref> 11)。また開瞼失行は[[上眼瞼挙筋]]の駆動不全による開瞼障害であり、眼瞼痙攣とさまざまな程度に合併することから、これも眼瞼痙攣と同じく眼部の局所性ジストニアとされている。しかしジストニアに必須とされる骨格筋の不随意収縮がないのにジストニアと考える矛盾は論じられていない。これについての私見は他で論じた<ref name=Mezaki2017><pubmed>28735649</pubmed></ref> 12)。
 鑑別すべき疾患には、神経系の疾患として[[開瞼失行]]([[開眼失行]])、[[眼瞼ミオキミア]]、[[片側顔面痙攣]]([[片側顔面攣縮]])、[[チック]]、[[舞踏症]]、[[特発性瞬目増多]]、[[眼瞼下垂]]、[[心因性開瞼困難]]などが<ref>'''目崎高広 in press'''<br>脳神経内科の立場から. 形成外科</ref>10)、また眼疾患として[[ドライアイ]]、[[前部ぶどう膜炎]]、[[後嚢下白内障]]、眼表面の刺激などがある<ref name=眼瞼痙攣診療ガイドライン委員会 />6)。難治性のドライアイと診断されていた患者の57%がMeige症候群であったとの報告がある<ref name=Tsubota1997><pubmed>9274405</pubmed></ref> 11)。また開瞼失行は[[上眼瞼挙筋]]の駆動不全による開瞼障害であり、眼瞼痙攣とさまざまな程度に合併することから、これも眼瞼痙攣と同じく眼部の局所性ジストニアとされている。しかしジストニアに必須とされる骨格筋の不随意収縮がないのにジストニアと考える矛盾は論じられていない。これについての私見は他で論じた<ref name=Mezaki2017><pubmed>28735649</pubmed></ref> 12)。

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