「胚性幹細胞」の版間の差分

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 マウス ES 細胞はフィーダー細胞上で培養され、一般的には15~20 % 程度の牛胎児血清あるいは血清代替物と、LIF を添加した培地で行われる。近年、ES 細胞の未分化状態維持機構及び分化開始機構の一端が明らかにされるようになり、これに基づいて ERK 及び GSK3beta を遮断する2つの阻害剤(2i)を培地に加えることで、更に均一で安定な培養を行うことが可能になっている。  
 マウス ES 細胞はフィーダー細胞上で培養され、一般的には15~20 % 程度の牛胎児血清あるいは血清代替物と、LIF を添加した培地で行われる。近年、ES 細胞の未分化状態維持機構及び分化開始機構の一端が明らかにされるようになり、これに基づいて ERK 及び GSK3beta を遮断する2つの阻害剤(2i)を培地に加えることで、更に均一で安定な培養を行うことが可能になっている。  
 未分化状態のマウス ES 細胞は、アルカリフォスファターゼ染色に陽性で、表面抗原である SSEA-1 の発現を認める。また、NANOG, OCT3/4, SOX2 といった転写因子が共発現している。分化抑制因子である LIF を除いた培地中で浮遊培養することで、自発的に分化し、胚様体と呼ばれる三胚葉系の細胞からなる構造体を形成する。また、免疫不全マウスに接種すると、奇形腫(テラトーマ)を形成する。8細胞期胚あるいは胚盤胞期胚に注入することで、個体形成に寄与し、キメラマウスを形成することができる(後述)。
 未分化状態のマウス ES 細胞は、アルカリフォスファターゼ染色に陽性で、表面抗原である SSEA-1 の発現を認める。また、NANOG, OCT3/4, SOX2 といった転写因子が共発現している。分化抑制因子である LIF を除いた培地中で浮遊培養することで、自発的に分化し、胚様体と呼ばれる三胚葉系の細胞からなる構造体を形成する。また、免疫不全マウスに接種すると、奇形腫(テラトーマ)を形成する。マウス ES 細胞は、初期胚と凝集させ、あるいは注入して子宮に移植することで、その後の個体発生に寄与してキメラマウスを作成することができる。
 マウス ES 細胞は、初期胚と凝集させ、あるいは注入して子宮に移植することで、その後の個体発生に寄与してキメラマウスを作成することができる。この際、生殖細胞にマウス ES 細胞由来の細胞を持つキメラマウスを得られることがある(Germ line chimera)。このようなキメラマウスを交配し、子孫を得ることで、マウス ES 細胞の遺伝形質を有するマウス個体が得られる。<br> この際、遺伝子改変を施したマウス ES 細胞を用いることで、遺伝子改変マウス個体を作出することができる。特に、相同組換え技術を用いてゲノムの特定部位を改変し(標的遺伝子組換え法、ジーンターゲティング)、任意の遺伝子を欠失させたノックアウト・マウス作成は、マウス個体における遺伝子機能を解析する際の標準的な手技になった。また、疾患モデルマウスの作出など生命科学分野で多岐にわたり利用され、2007 年にはこの技術に関する功績により Mario R. Capecchi, Sir Martin J. Evans, Oliver Smithiesの 3 氏にノーベル医学・生理学賞が授与された。<br> 現在では、単純なノックアウト・マウス作成に加え、Cre や Flp などの部位特異的組換え酵素を応用して、特定の場所及び時期において遺伝子を欠失させる条件付きノックアウト・マウス作成の技術など、遺伝子工学の発達と共に、今なお進展している。  
 この際、生殖細胞にマウス ES 細胞由来の細胞を持つキメラマウスを得られることがある(Germ line chimera)。このようなキメラマウスを交配し、子孫を得ることで、マウス ES 細胞の遺伝形質を有するマウス個体が得られる。<br> この際、遺伝子改変を施したマウス ES 細胞を用いることで、遺伝子改変マウス個体を作出することができる。特に、相同組換え技術を用いてゲノムの特定部位を改変し(標的遺伝子組換え法、ジーンターゲティング)、任意の遺伝子を欠失させたノックアウト・マウス作成は、マウス個体における遺伝子機能を解析する際の標準的な手技になった。また、疾患モデルマウスの作出など生命科学分野で多岐にわたり利用され、2007 年にはこの技術に関する功績により Mario R. Capecchi, Sir Martin J. Evans, Oliver Smithiesの 3 氏にノーベル医学・生理学賞が授与された。<br> 現在では、単純なノックアウト・マウス作成に加え、Cre や Flp などの部位特異的組換え酵素を応用して、特定の場所及び時期において遺伝子を欠失させる条件付きノックアウト・マウス作成の技術など、遺伝子工学の発達と共に、今なお進展している。  


 このような現代の発生工学技術における中心的な貢献と共に、マウス ES 細胞の持つ多分化能は、各種体細胞及び生殖細胞の分化・発生メカニズムを研究するためのツールとしても広く利用されてきた。<br> マウス ES 細胞は LIF を除いた培地中で浮遊培養することで分化し、胚様体と呼ばれる三胚葉系の様々な分化細胞からなる構造体を形成する。この分化は自発的でランダムであるが、培養系を調整することで、目的の細胞系譜へと分化させることも可能である。このような培養系を用いることで、生体内では研究が難しい、初期の胚発生過程における細胞分化を in vitro において再現することができる。この系を用い、細胞の分化過程に関わる遺伝子、必要な成長因子や下流のシグナル伝達などについての詳細な解析が可能になった。  
 このような現代の発生工学技術における中心的な貢献と共に、マウス ES 細胞の持つ多分化能は、各種体細胞及び生殖細胞の分化・発生メカニズムを研究するためのツールとしても広く利用されてきた。<br> マウス ES 細胞は LIF を除いた培地中で浮遊培養することで分化し、胚様体と呼ばれる三胚葉系の様々な分化細胞からなる構造体を形成する。この分化は自発的でランダムであるが、培養系を調整することで、目的の細胞系譜へと分化させることも可能である。このような培養系を用いることで、生体内では研究が難しい、初期の胚発生過程における細胞分化を in vitro において再現することができる。この系を用い、細胞の分化過程に関わる遺伝子、必要な成長因子や下流のシグナル伝達などについての詳細な解析が可能になった。  
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