「インフラマソーム」の版間の差分

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 インフラマソームの活性化も同様に、無菌的な炎症の関与が示されており、例えば組織傷害によって放出される[[アデノシン3リン酸]]([[ATP]])や[[ミトコンドリア]]DNA、痛風の原因となる[[尿酸]]結晶などがインフラマソームを活性化するトリガーとなりえることが知られている。
 インフラマソームの活性化も同様に、無菌的な炎症の関与が示されており、例えば組織傷害によって放出される[[アデノシン3リン酸]]([[ATP]])や[[ミトコンドリア]]DNA、痛風の原因となる[[尿酸]]結晶などがインフラマソームを活性化するトリガーとなりえることが知られている。


 実際にどのような分子によってインフラマソームが活性化されるかは、インフラマソームを構成するパターン認識受容体によって異なっている。前述したようにNLRsとALRsを含む2つのインフラマソームに大別され、NLR familyに属する[[NLRP1]]、[[NLRP3]]、[[NLRC4]]を含むものは[[NLR inflammasome|NLR (NLRP) inflammasome]]、ALR familyに属する[[AIM2]]、[[IFI16]]を含むものは[[pyrin and HIN200 domain-containing protein inflammasome|pyrin and HIN200 domain-containing protein (PYHIN) inflammasome]]と呼称されている。それぞれのインフラマソームが活性化されるメカニズムについてはhttps://en.wikipedia.org/wiki/Inflammasomeを参照されたい。
 実際にどのような分子によってインフラマソームが活性化されるかは、インフラマソームを構成するパターン認識受容体によって異なっている('''表''')。前述したようにNLRsとALRsを含む2つのインフラマソームに大別され、NLR familyに属する[[NLRP1]]、[[NLRP3]]、[[NLRC4]]を含むものは[[NLR inflammasome|NLR (NLRP) inflammasome]]、ALR familyに属する[[AIM2]]、[[IFI16]]を含むものは[[pyrin and HIN200 domain-containing protein inflammasome|pyrin and HIN200 domain-containing protein (PYHIN) inflammasome]]と呼称されている。


{| class="wikitable"
|+表. インフラマソームの活性化因子
|-
! インフラマソームの種類 !! 活性化因子 !! 関連する神経・精神疾患
|-
| NLRP1 || [[炭疽菌]][[毒素]] || [[けいれん]]、[[アルツハイマー病]]、[[多発性硬化症]]、[[脳梗塞]]、[[脳出血]]、[[クモ膜下出血]]、[[脳挫傷]]、[[脊髄損傷]]
|-
| NLRP3 || [[活性酸素]]種、[[ミトコンドリア]]の機能不全、[[ATP]]、[[尿酸]]血症<br>
[[黄色ブドウ球菌]]、[[肺炎球菌]]、[[腸管出血性大腸菌]]などの[[膜孔形成毒素]]<br>
細胞外K<sup>+</sup>流出、[[カルシウム|Ca<sup>2+</sup>]]流入シグナル
|| けいれん、アルツハイマー病、[[パーキンソン病]]、[[ハンチントン舞踏病]]、[[多系統萎縮症]]、多発性硬化症、[[筋萎縮性側索硬化症]]、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、脳挫傷、脊髄損傷、[[うつ病]]、[[双極性障害]]、[[統合失調症]]、[[脳腫瘍]]
|-
| [[NLRC4]] || [[サルモネラ菌]]、[[レジオネラ菌]]、[[赤痢菌]]由来の[[フラジェリン]]、[[分泌]]装置タンパク質 || アルツハイマー病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脳梗塞、脳挫傷、脳腫瘍
|-
| [[AIM2]] || 細菌由来のDNA|| アルツハイマー病、多発性硬化症、脳挫傷、脳腫瘍
|}
==構成分子==
==構成分子==
 以上に述べたようなパターン認識受容体の活性化が起こると、[[ASC]] ([[apoptosis-associated speck-like protein containing a CARD]])と呼ばれる[[アダプタータンパク質]]と[[カスパーゼ-1前駆体]] ([[プロカスパーゼ-1]])を集合させて7量体を形成し、巨大なタンパク質複合体(インフラマソーム:'''図1''')となる<ref name=Lamkanfi2014><pubmed>24855941</pubmed></ref> 2)。このような複合体が形成されるとプロカスパーゼ-1が自己切断され、活性化型[[カスパーゼ-1]]となる。活性化したカスパーゼ-1は、[[炎症性サイトカイン]]の前駆体である[[プロIL-1&beta;]]や[[プロIL-18]]を切断することにより、活性型の[[IL-1&beta;]]や[[IL-18]]として放出させて炎症を惹起する。さらにカスパーゼ-1は、その基質である[[ガスダーミンD]] (GSDMD)と呼ばれるタンパク質を切断するが、その切断されたN末端側の断片は多量体を形成して[[細胞膜]]に挿入されることにより、大きな孔(ポア)を形成して細胞膜を破壊し、細胞の膨潤や破裂を来たす<ref name=Ding2016><pubmed>27281216</pubmed></ref> 3)。
 以上に述べたようなパターン認識受容体の活性化が起こると、[[ASC]] ([[apoptosis-associated speck-like protein containing a CARD]])と呼ばれる[[アダプタータンパク質]]と[[カスパーゼ-1前駆体]] ([[プロカスパーゼ-1]])を集合させて7量体を形成し、巨大なタンパク質複合体(インフラマソーム:'''図1''')となる<ref name=Lamkanfi2014><pubmed>24855941</pubmed></ref> 2)。このような複合体が形成されるとプロカスパーゼ-1が自己切断され、活性化型[[カスパーゼ-1]]となる。活性化したカスパーゼ-1は、[[炎症性サイトカイン]]の前駆体である[[プロIL-1&beta;]]や[[プロIL-18]]を切断することにより、活性型の[[IL-1&beta;]]や[[IL-18]]として放出させて炎症を惹起する。さらにカスパーゼ-1は、その基質である[[ガスダーミンD]] (GSDMD)と呼ばれるタンパク質を切断するが、その切断されたN末端側の断片は多量体を形成して[[細胞膜]]に挿入されることにより、大きな孔(ポア)を形成して細胞膜を破壊し、細胞の膨潤や破裂を来たす<ref name=Ding2016><pubmed>27281216</pubmed></ref> 3)。

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