「脆弱X症候群」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
6行目: 6行目:
<font size="+1">[https://researchmap.jp/read0015465 難波栄二]</font><br>
<font size="+1">[https://researchmap.jp/read0015465 難波栄二]</font><br>
''鳥取大学 研究推進機構 研究戦略室''
''鳥取大学 研究推進機構 研究戦略室''
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2017年7月14日 原稿完成日:2020年1月21日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2020年11月16日 原稿完成日:2020年XX月XX日<br>
担当編集委員:[https://researchmap.jp/hayashi-takagi/?lang=japanese 林(高木)朗子](国立研究開発法人理化学研究所 脳神経科学研究センター)<br>
担当編集委員:[https://researchmap.jp/hayashi-takagi/?lang=japanese 林(高木)朗子](国立研究開発法人理化学研究所 脳神経科学研究センター)<br>
</div>
</div>
24行目: 24行目:
== 疫学 ==
== 疫学 ==
 FMR1遺伝子のCGG繰り返し配列数伸長について、一般人口での調査が各国で行われているが、その頻度は報告によりばらつきがある。2014年に報告された各国の情報をもとにしたメタ解析の報告によれば、脆弱X症候群(全変異)の出現頻度は男性では7,143人、女性では11,111人に1人とされている<ref name=Hunter2014><pubmed>24700618</pubmed></ref> 。これまでの調査からFMR1遺伝子のCGGリピート数伸長の頻度には人種差があり、アジアよりも欧米でやや多いと考えられている。日本国内で実施した調査(平成21~23年度難治性疾患克服研究事業)では、男性10,000人に1人の頻度と推定される<ref name=難波2015></ref>。これは、知的障害が人口の2.5%とすると、知的障害をもつ男性では250人に1人の頻度で、これは日本での検討結果<ref name=Nanba1995><pubmed>8579216</pubmed></ref>ともほぼ一致する。
 FMR1遺伝子のCGG繰り返し配列数伸長について、一般人口での調査が各国で行われているが、その頻度は報告によりばらつきがある。2014年に報告された各国の情報をもとにしたメタ解析の報告によれば、脆弱X症候群(全変異)の出現頻度は男性では7,143人、女性では11,111人に1人とされている<ref name=Hunter2014><pubmed>24700618</pubmed></ref> 。これまでの調査からFMR1遺伝子のCGGリピート数伸長の頻度には人種差があり、アジアよりも欧米でやや多いと考えられている。日本国内で実施した調査(平成21~23年度難治性疾患克服研究事業)では、男性10,000人に1人の頻度と推定される<ref name=難波2015></ref>。これは、知的障害が人口の2.5%とすると、知的障害をもつ男性では250人に1人の頻度で、これは日本での検討結果<ref name=Nanba1995><pubmed>8579216</pubmed></ref>ともほぼ一致する。
 
[[ファイル:Okazaki Fragile X syndrom Fig.png|サムネイル|'''図. FMR1遺伝子のCGGリピートの伸長と発症様式''']]
== 遺伝 ==
== 遺伝 ==
 原因遺伝子であるFMR1遺伝子の5’非翻訳領域(エクソン1内)にあるCGG繰り返し配列の繰り返し回数は、正常では6から44回、intermediate(中間型)では45から54回、premutation(前変異)では55回から200回、full mutation(全変異)では201回以上を呈し、脆弱X症候群症例は全変異である(図)。現時点では、正常範囲の回数の親から、こどものCGG繰り返し回数が全変異にまで伸長することはないとされ、中間型の回数を有する親からこどもが前変異の回数に、前変異の回数を有する親からこどもが全変異の回数への伸長が生じうると考えられている(表現促進現象)。そのためFMR1遺伝子の解析で全変異が見つかった場合には、母が前変異あるいは全変異を有している。一方、父が前変異を有する場合にも伸長することがあるが、こどもが全変異となる程は伸長しないとされている<ref>[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1384/ FMR1-Related Disorders - GeneReviews® - NCBI Bookshelf.] 15th May, 2017.</ref>。
 原因遺伝子であるFMR1遺伝子の5’非翻訳領域(エクソン1内)にあるCGG繰り返し配列の繰り返し回数は、正常では6から44回、intermediate(中間型)では45から54回、premutation(前変異)では55回から200回、full mutation(全変異)では201回以上を呈し、脆弱X症候群症例は全変異である('''図''')。現時点では、正常範囲の回数の親から、こどものCGG繰り返し回数が全変異にまで伸長することはないとされ、中間型の回数を有する親からこどもが前変異の回数に、前変異の回数を有する親からこどもが全変異の回数への伸長が生じうると考えられている(表現促進現象)。そのためFMR1遺伝子の解析で全変異が見つかった場合には、母が前変異あるいは全変異を有している。一方、父が前変異を有する場合にも伸長することがあるが、こどもが全変異となる程は伸長しないとされている<ref>[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1384/ FMR1-Related Disorders - GeneReviews® - NCBI Bookshelf.] 15th May, 2017.</ref>。


 なお、FMR1遺伝子のCGG繰り返し配列中には所々AGG配列があり、このAGG配列の出現頻度が少ない場合に、CGGリピートが伸長しやすいことが知られている<ref name=Eichler1994><pubmed>7987398</pubmed></ref><ref name=Nolin2011><pubmed>21717484</pubmed></ref> 。ただし、AGG配列出現頻度によるこどもの繰り返し回数の伸長予測方法としての臨床応用はまだされていない。
 なお、FMR1遺伝子のCGG繰り返し配列中には所々AGG配列があり、このAGG配列の出現頻度が少ない場合に、CGGリピートが伸長しやすいことが知られている<ref name=Eichler1994><pubmed>7987398</pubmed></ref><ref name=Nolin2011><pubmed>21717484</pubmed></ref> 。ただし、AGG配列出現頻度によるこどもの繰り返し回数の伸長予測方法としての臨床応用はまだされていない。

案内メニュー