「慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー」の版間の差分

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 典型的慢性炎症性脱髄性多発神経炎では感覚障害よりも運動障害が前景に立つ場合が多く、自律神経症候は通常みられない<ref name=ガイドライン>慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン 2013.東京, 南光堂 2013</ref> [9]。感覚障害に関しては、四肢のしびれ感を自覚する場合が多いが、痛みを訴えることは少ない。EFNS/PNS診断基準は治療に反応しうる患者を網羅する診断感度への配慮が見られる反面、AAN診断基準に比べて特異度が低く、当初診断基準があてはまっても、後にPOEMS症候群、リンパ腫、家族性アミロイドポリニューロパチーなど、慢性炎症性脱髄性多発神経炎以外の疾患が明らかになる場合もあり注意を要する<ref name=Koike2008><pubmed>18356256</pubmed></ref><ref name=Koike2011><pubmed>21463231</pubmed></ref><ref name=Tomita2013><pubmed>23884813</pubmed></ref>  [10-12]。これらの疾患では痛みを訴えることが多いため、痛みを伴う脱髄性のニューロパチー患者では慢性炎症性脱髄性多発神経炎以外の疾患の可能性も考慮に入れて原因を精査する必要がある。
 典型的慢性炎症性脱髄性多発神経炎では感覚障害よりも運動障害が前景に立つ場合が多く、自律神経症候は通常みられない<ref name=ガイドライン>慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン 2013.東京, 南光堂 2013</ref> [9]。感覚障害に関しては、四肢のしびれ感を自覚する場合が多いが、痛みを訴えることは少ない。EFNS/PNS診断基準は治療に反応しうる患者を網羅する診断感度への配慮が見られる反面、AAN診断基準に比べて特異度が低く、当初診断基準があてはまっても、後にPOEMS症候群、リンパ腫、家族性アミロイドポリニューロパチーなど、慢性炎症性脱髄性多発神経炎以外の疾患が明らかになる場合もあり注意を要する<ref name=Koike2008><pubmed>18356256</pubmed></ref><ref name=Koike2011><pubmed>21463231</pubmed></ref><ref name=Tomita2013><pubmed>23884813</pubmed></ref>  [10-12]。これらの疾患では痛みを訴えることが多いため、痛みを伴う脱髄性のニューロパチー患者では慢性炎症性脱髄性多発神経炎以外の疾患の可能性も考慮に入れて原因を精査する必要がある。
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|+表2. 慢性炎症性脱髄性多発神経炎の臨床診断基準(EFNS/PNS診療ガイドラインから引用)[6]
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! style="text-align:left"| (1) 選択基準
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|'''(a)典型的慢性炎症性脱髄性多発神経炎(typical CIDP)'''<br>
 少なくとも2ヶ月以上かけて慢性・階段状の進行、あるいは再発性の経過を呈する四肢対称性の近位部および遠位部の筋力低下と感覚障害。脳神経が障害されることがある。腱反射は四肢で低下または消失する。<br>
'''(b)非典型的慢性炎症性脱髄性多発神経炎(atypical CIDP)'''<br>
 下記のいずれかを呈するが、他は(a)と同様(腱反射は障害のない部位では正常なことがある)。<br>
  ・遠位部優位型:(distal acquired demyelinating symmetric; DADS)<br>
  ・非対称、すなわち多巣性感覚運動型:(multifocal acquired demyelinating sensory and motor neuropathy; MADSAM、Lewis-Sumner症候群)<br>
  ・局所型(1側の腕神経叢や腰仙神経叢、または1側上肢や下肢の1本かそれ以上の神経の障害など):(focal)<br>
  ・純粋運動型:(pure sensory)<br>
  ・純粋感覚型:(pure motor)<br>
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! style="text-align:left"| (2) 除外基準
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|  ・ボレリア感染症(ライム病)、ジフテリア、末梢神経障害をきたしうる薬物や毒物への暴露<br>
  ・遺伝性脱髄性ニューロパチー<br>
  ・著明な括約筋(排尿・排便)障害<br>
  ・多巣性運動ニューロパチー <br>
  ・高力価の抗髄鞘関連糖蛋白(MAG)抗体を伴う単クローン性IgM-M蛋白血症<br>
  ・POEMS症候群、骨硬化性骨髄腫、糖尿病性・非糖尿病性腰仙部神経根叢ニューロパチーなどの脱髄性ニューロパチーをきたすその他の原因。リンパ腫、アミロイドーシスは脱髄所見を呈することがある。<br>
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== 病態生理 ==
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