「嚥下障害」の版間の差分

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==== 嚥下内視鏡====
==== 嚥下内視鏡====
 鼻腔から細いファイバースコープを挿入し、咽頭部の形や動きの状態を直視下で観察する。食物を嚥下し、咽頭を食物が通過していく状況を観察、咽頭における食物の残留や痰・唾液などの貯留状態を観察する<図2>。被爆を伴わず、ベッドサイドで繰り返し実施できるメリットがある。(文献5)<ビデオ4> 
 鼻腔から細いファイバースコープを挿入し、咽頭部の形や動きの状態を直視下で観察する。食物を嚥下し、咽頭を食物が通過していく状況を観察、咽頭における食物の残留や痰・唾液などの貯留状態を観察する<図2>。被爆を伴わず、ベッドサイドで繰り返し実施できるメリットがある。(文献5)<ビデオ4> 
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==合併症==
==合併症==
 重篤な予後としては誤嚥性肺炎や低栄養による日常生活動作(ADL)低下、窒息による低酸素脳症や意識障害があり、日常生活動作/生活の質 (QOL)が著しく障害される。
 重篤な予後としては誤嚥性肺炎や低栄養による日常生活動作(ADL)低下、窒息による低酸素脳症や意識障害があり、日常生活動作/生活の質 (QOL)が著しく障害される。


==治療==
===リハビリテーションの考え方===
 摂食嚥下機能を評価し、介入プランを構築して実施し、全人的にチーム医療として患者の食生活をささえる。脳神経内科では、進行する疾患や寛解増悪を繰り返す疾患において、特にきめ細やかな介入プランが求められる。それぞれの疾患特性をよく見極め、摂食嚥下機能の廃用を予防し、臨床経過を考慮した食のQOL維持をめざす。
 摂食嚥下機能評価、機能に見合った嚥下調整食、姿勢・食具・環境の調整、嚥下訓練・体操、栄養管理、誤嚥予防、患者の理解・受容へのサポート、介護者への援助などが含まれる。


==治療==
==== 摂食嚥下機能評価 ====
===摂食嚥下障害リハビリテーションの考え方===
 評価については前述したが、リハビリテーション治療の過程で、定期的な再評価によるプランの見直しが必要である
・摂食嚥下リハビリテーションとは、摂食嚥下機能を評価し、介入プランを構築して実施し、全人的にチーム医療として患者の食生活をささえることである。
==== 嚥下調整食 ====
・脳神経内科では、進行する疾患や寛解増悪を繰り返す疾患において、特にきめ細やかな介入プランが求められる。
 その時点での嚥下能力に見合った食事(嚥下調整食)を食べることは、誤嚥などの合併症予防に必要かつ重要である。病病連携・病診連携・介護施設などとの連携において、標準化することが求められるため、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2013が示された(文献6)
・それぞれの疾患特性をよく見極め、摂食嚥下機能の廃用を予防し、臨床経過を考慮した食のQOL維持をめざす。
==== 姿勢・食具・環境の調整 ====
摂食嚥下リハビリテーションには
 脳神経内科疾患では、原疾患による姿勢異常も少なくなく、安楽で安全な摂食姿勢の調整がもとめられる。患者の身体能力・認知能力に見合った環境整備は、安全な摂食嚥下の第一歩である。
1)摂食嚥下機能評価
==== 嚥下訓練 ====
2)機能に見合った嚥下調整食
 食物を用いない基礎訓練(間接訓練)と摂食訓練(直接訓練)がある。表3に訓練を列記する。具体的な方法については (文献7)を参照されたい。摂食嚥下能力を評価して、それぞれの患者に見合った訓練法を選択する。
3)姿勢・食具・環境の調整
{| class="wikitable"
4)嚥下訓練・体操
|+表3. 各種の嚥下訓練
5)栄養管理
|-
6)誤嚥予防、
!style="text-align:left;"| 基礎訓練(間接訓練):食物を用いない訓練
7)患者の理解・受容へのサポート、
|-
8)介護者への援助  などが含まれる。
| 嚥下体操、頸部可動域訓練、開口訓練(舌骨上筋群強化目的)、口唇・舌・頬の訓練、口唇閉鎖訓練、唾液腺のアイスマッサージ、舌抵抗訓練、氷を用いた訓練(氷なめ訓練)、前舌保持嚥下訓練、チューブ嚥下訓練、頭部挙上訓練、バルーン法、ブローイング訓練、呼吸トレーニング、LSVT(Lee Silverman Voice Treatment)、プッシング・プリング訓練、冷圧刺激、のどのアイスマッサージ、体幹機能向上訓練、歯肉マッサージ、バンゲード法(筋刺激訓練法)、過敏除去(脱感作)
|-
!style="text-align:left;"| 基礎訓練および摂食訓練
|-
| 息こらえ嚥下法、顎突出嚥下法、咳・強制呼出手技またはハフィング、舌接触補助床を用いた訓練、前頸皮膚用手刺激による嚥下反射促通手技、電気刺激療法、非侵襲的脳刺激法(rTMS, tDCS)、努力嚥下、軟口蓋挙上装置を用いた訓練、バイオフィードバック、メンデルソン手技、K-point 刺激 
|-
!style="text-align:left;"| 摂食訓練(直接訓練):食物を嚥下するときの訓練
|-
| 嚥下の意識化、頸部回旋、交互嚥下、ストローピペット法、食品調整、スライス型ゼリー丸のみ法、一口量の調整、体幹角度調整、Chin down、健側傾斜姿勢、一側嚥下、鼻つまみ嚥下、複数回嚥下、反復嚥下
|}
 
==== 栄養管理 ====
 栄養管理は摂食嚥下リハビリテーション治療の基礎である。ALSでは、エビデンスとして初期の栄養不良が独立した予後決定因子であることが示されている。
==== 誤嚥予防 ====
 脳卒中後における誤嚥性肺炎の予防としては、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、シロスタゾール、アマンタジン(いずれも保険適用外)について、限定的ながらエビデンスがある。の投与を考慮してもよい(文献8:脳卒中ガイドライン2015) 
 
 一般的には姿勢調整・嚥下調整食・嚥下訓練により、誤嚥を予防できることも少なくないが、重度の嚥下障害でリハビリテーション治療効果が乏しい場合は、外科的に誤嚥防止術を提案する。発声機能を失うことが多く、十分な説明で理解を求めることが必要である。喉頭温存法と喉頭非温存法(喉頭全摘出術)がある
 
 慢性疾患において、嚥下改善が乏しい場合には嚥下機能改善術を選択肢として提示する。誤嚥予防につなげることもできる。咽頭内圧上昇・食道入口部開大・喉頭挙上・喉頭閉鎖の強化の目的で行われる。球麻痺ではボツリヌス毒素注入療法を考慮する場合もある。(文献9)


1)摂食嚥下機能評価
==== 患者の理解・受容へのサポート ====
評価については前述したが、リハビリテーション治療の過程で、定期的な再評価によるプランの見直しが必要である
 脳神経内科疾患では、認知機能障害・うつ症状を合併することもあり、情報を共有してチーム医療として患者家族を支える。
2)嚥下調整食
==== 介護者への援助 ====
その時点での嚥下能力に見合った食事(嚥下調整食)を食べることは、誤嚥などの合併症予防に必要かつ重要である。
 慢性疾患では、調理や食事介助など、食生活を支える介助者への長期間の援助も欠かせない。在宅スタッフと連携してサポートする。
病病連携・病診連携・介護施設などとの連携において、標準化することが求められるため、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2013が示された(文献6)
3)姿勢・食具・環境の調整
脳神経内科疾患では、原疾患による姿勢異常も少なくなく、安楽で安全な摂食姿勢の調整がもとめられる。
患者の身体能力・認知能力に見合った環境整備は、安全な摂食嚥下の第一歩である。
4)嚥下訓練
食物を用いない基礎訓練(間接訓練)と摂食訓練(直接訓練)がある。
以下に訓練を列記する。
具体的な方法については (文献7)を参照されたい。
摂食嚥下能力を評価して、それぞれの患者に見合った訓練法を選択する。
基礎訓練(間接訓練)食物を用いない訓練  
嚥下体操、頸部可動域訓練、開口訓練(舌骨上筋群強化目的) 
口唇・舌・頬の訓練、口唇閉鎖訓練、唾液腺のアイスマッサージ 
舌抵抗訓練、氷を用いた訓練(氷なめ訓練)、 前舌保持嚥下訓練
チューブ嚥下訓練、頭部挙上訓練、バルーン法、ブローイング訓練 
呼吸トレーニング、LSVT(Lee Silverman Voice Treatment、)
プッシング・プリング訓練、冷圧刺激、のどのアイスマッサージ 
体幹機能向上訓練、歯肉マッサージ、バンゲード法(筋刺激訓練法) 
過敏除去(脱感作) 
基礎訓練および摂食訓練
息こらえ嚥下法、顎突出嚥下法、咳・強制呼出手技またはハフィング
舌接触補助床を用いた訓練、前頸皮膚用手刺激による嚥下反射促通手技 
電気刺激療法、非侵襲的脳刺激法(rTMS, tDCS)、努力嚥下
軟口蓋挙上装置を用いた訓練、バイオフィードバック、メンデルソン手技  
K-point 刺激 
摂食訓練(直接訓練) 食物を嚥下するときの訓練
嚥下の意識化、頸部回旋、交互嚥下、ストローピペット法、食品調整 
スライス型ゼリー丸のみ法、一口量の調整、体幹角度調整、Chin down 
健側傾斜姿勢、一側嚥下、鼻つまみ嚥下、複数回嚥下、反復嚥下 
5)栄養管理
栄養管理は摂食嚥下リハビリテーション治療の基礎である。ALSでは、エビデンスとして初期の栄養不良が独立した予後決定因子であることが示されている。
6)誤嚥予防
①薬剤
脳卒中後における誤嚥性肺炎の予防としては、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、シロスタゾール、アマンタジン(いずれも保険適用外)について、限定的ながらエビデンスがある。の投与を考慮してもよい(文献8:脳卒中ガイドライン2015) 
②外科的治療
一般的には姿勢調整・嚥下調整食・嚥下訓練により、誤嚥を予防できることも少なくないが、重度の嚥下障害でリハビリテーション治療効果が乏しい場合は、誤嚥防止術を提案する。発声機能を失うことが多く、十分な説明で理解を求めることが必要である。
慢性疾患において、嚥下改善が乏しい場合には嚥下機能改善術を選択肢として提示する。誤嚥予防につなげることもできる。
・誤嚥防止術
喉頭温存法と喉頭非温存法(喉頭全摘出術)がある
・嚥下機能改善術
咽頭内圧上昇・食道入口部開大・喉頭挙上・喉頭閉鎖の強化の目的で行われる。
球麻痺ではボツリヌス毒素注入療法を考慮する場合もある。
詳細は(文献9)参照
7)患者の理解・受容へのサポート、
脳神経内科疾患では、認知機能障害・うつ症状を合併することもあり、情報を共有してチーム医療として患者家族を支える。
8)介護者への援助 
慢性疾患では、調理や食事介助など、食生活を支える介助者への長期間の援助も欠かせない。在宅スタッフと連携してサポートする。


==脳神経内科疾患の摂食嚥下リハビリテーション治療==
==脳神経内科疾患の摂食嚥下リハビリテーション治療==

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