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γセクレターゼ複合体の会合過程において、まずニカストリンがAPH-1と結合してヘテロ二量体を作る。次いで順次、プレセニリン、PEN-2が編入することによって活性型複合体が完成する。APH-1との結合には、膜貫通ドメインのN末端側領域が必須であり<ref name=Capell2003><pubmed>14602727</pubmed></ref> 、さらに細胞外の膜近傍にあるSer632とTrp648が複合体編入に寄与する<ref name=Walker2006><pubmed>16805816</pubmed></ref> 。一方、APH-1 側では第4および第5膜貫通ドメインのGly126とHis171 (残基番号はAPH-1aSによる)が結合に欠かせない。この結合に対し、Rer1はAPH-1と競合し複合体形成を阻害するとされる。ニカストリンはプレセニリンC末端とも直接結合するとされ、ニカストリンを欠く複合体は安定性を失う。活性型γセクレターゼ複合体会合は、トランス-ゴルジ-ネットワークにおいて完成する。 | γセクレターゼ複合体の会合過程において、まずニカストリンがAPH-1と結合してヘテロ二量体を作る。次いで順次、プレセニリン、PEN-2が編入することによって活性型複合体が完成する。APH-1との結合には、膜貫通ドメインのN末端側領域が必須であり<ref name=Capell2003><pubmed>14602727</pubmed></ref> 、さらに細胞外の膜近傍にあるSer632とTrp648が複合体編入に寄与する<ref name=Walker2006><pubmed>16805816</pubmed></ref> 。一方、APH-1 側では第4および第5膜貫通ドメインのGly126とHis171 (残基番号はAPH-1aSによる)が結合に欠かせない。この結合に対し、Rer1はAPH-1と競合し複合体形成を阻害するとされる。ニカストリンはプレセニリンC末端とも直接結合するとされ、ニカストリンを欠く複合体は安定性を失う。活性型γセクレターゼ複合体会合は、トランス-ゴルジ-ネットワークにおいて完成する。 | ||
[[ファイル:Nishimura nicastrin Fig2.png|thumb|'''図2. γセクレターゼ複合体の立体構造'''<br>ニカストリンを赤で示す。文献<ref name=Bai2015 />より。]] | |||
=== 立体構造 === | === 立体構造 === | ||
タマホコリカビ属の細胞性粘菌''Dictyostelium purpureum''の相同分子を用いたX線結晶構造解析によると、ニカストリンの細胞外には大小2つの葉状構造(lobe)があり、大きい葉状構造は内部に荷電アミノ酸や極性アミノ酸が配置するポケットをもち、小さい葉状構造から延びる"ふた(lid)"で覆われている<ref name=Xie2014><pubmed>25197054</pubmed></ref> 。続くクライオ電顕によるヒトγセクレターゼ複合体の結晶解析からは、上記に加え、ポケット構造の内部に4つのArgを含む荷電アミノ酸と極性アミノ酸が配置し、基質結合に与るとされるGlu333とTyr337もこの内部にあることが示された<ref name=Bai2015><pubmed>26280335</pubmed></ref><ref name=Lu2014><pubmed>25043039</pubmed></ref> 。基質結合に際して、大きい葉状構造がPhe287を軸に回転し"ふた"が開くと推測されている。この"ふた"自体は活性には必要ない<ref name=Zhang2016><pubmed>26887941</pubmed></ref> 。NMR解析からは、αヘリクス構造をとる膜貫通部に親水性パッチがあり、ここが膜貫通ドメイン同士の相互作用に関与する可能性や、構造をとらない細胞内ドメインのVal697からAla702は膜と結合することが指摘されている<ref name=Li2016><pubmed>26776682</pubmed></ref> 。 | タマホコリカビ属の細胞性粘菌''Dictyostelium purpureum''の相同分子を用いたX線結晶構造解析によると、ニカストリンの細胞外には大小2つの葉状構造(lobe)があり、大きい葉状構造は内部に荷電アミノ酸や極性アミノ酸が配置するポケットをもち、小さい葉状構造から延びる"ふた(lid)"で覆われている<ref name=Xie2014><pubmed>25197054</pubmed></ref> 。続くクライオ電顕によるヒトγセクレターゼ複合体の結晶解析からは、上記に加え、ポケット構造の内部に4つのArgを含む荷電アミノ酸と極性アミノ酸が配置し、基質結合に与るとされるGlu333とTyr337もこの内部にあることが示された('''図2''')<ref name=Bai2015><pubmed>26280335</pubmed></ref><ref name=Lu2014><pubmed>25043039</pubmed></ref> 。基質結合に際して、大きい葉状構造がPhe287を軸に回転し"ふた"が開くと推測されている。この"ふた"自体は活性には必要ない<ref name=Zhang2016><pubmed>26887941</pubmed></ref> 。NMR解析からは、αヘリクス構造をとる膜貫通部に親水性パッチがあり、ここが膜貫通ドメイン同士の相互作用に関与する可能性や、構造をとらない細胞内ドメインのVal697からAla702は膜と結合することが指摘されている<ref name=Li2016><pubmed>26776682</pubmed></ref> 。 | ||
基質(APP-C83またはNotch-100)と結合したγセクレターゼ複合体の結晶構造解析では、ニカストリンはAPP-C83のN末端にあるLeu688/Val689と直接相互作用するとされ、Notch-100のN末端にある短いαヘリクスはニカストリンの親水性ポケットに入り込み、Gln1722がニカストリン側のTrp653インドール環に接するという<ref name=Zhou2019><pubmed>30630874</pubmed></ref><ref name=Yang2019><pubmed>30598546</pubmed></ref> 。しかし、いずれの基質もプレセニリンとの相互作用が主である。 | 基質(APP-C83またはNotch-100)と結合したγセクレターゼ複合体の結晶構造解析では、ニカストリンはAPP-C83のN末端にあるLeu688/Val689と直接相互作用するとされ、Notch-100のN末端にある短いαヘリクスはニカストリンの親水性ポケットに入り込み、Gln1722がニカストリン側のTrp653インドール環に接するという<ref name=Zhou2019><pubmed>30630874</pubmed></ref><ref name=Yang2019><pubmed>30598546</pubmed></ref> 。しかし、いずれの基質もプレセニリンとの相互作用が主である。 |