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根本的治療薬はない。対症療法に関しては、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(selective serotonin reuptake inhibitor)が脱抑制などの行動異常に有効であったとの報告があり、2017年の認知症疾患診療ガイドライン<ref name=Hodges2010><pubmed>19805492</pubmed></ref>[36]では推奨されている(保険適応外使用)。 | 根本的治療薬はない。対症療法に関しては、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(selective serotonin reuptake inhibitor)が脱抑制などの行動異常に有効であったとの報告があり、2017年の認知症疾患診療ガイドライン<ref name=Hodges2010><pubmed>19805492</pubmed></ref>[36]では推奨されている(保険適応外使用)。 | ||
非薬物的治療介入としては、エピソード記憶、手続き記憶、視空間認知機能が保たれることを利用した介入<ref name=日本神経学会2017 | 非薬物的治療介入としては、エピソード記憶、手続き記憶、視空間認知機能が保たれることを利用した介入<ref name=日本神経学会2017>認知症疾患診療ガイドライン2017。監修:日本神経学会。編集:認知症疾患診療ガイドライン作成委員会。医学書院2017年</ref>[37]、行動療法的な介入<ref name=池田学1995>池田 学、田邊敬貴、堀野 敬、小森憲治郎、平尾一幸、山田典史、橋本 衛、数井裕光、森 隆志。Pick病のケア:保たれている手続き記憶を用いて。精神神経誌 1995; 97: 179-192.</ref>[38]、社会的に問題になる行動を別の行動に置き換える介入<ref name=池田学1996>池田 学、 今村 徹、 池尻義隆、下村辰雄、博野信次、中川賀嗣、森 悦朗。Pick 病患者の短期入院による在宅介護の支援。精神経誌 1996; 98: 822-829.</ref>[39]の有効性が報告されている。介護の取り組みとして個別性の高い少人数ケアを行う事で精神症状、行動障害、生活の質が改善する可能性も報告されている<ref name=Yokota2006><pubmed>16765875</pubmed></ref>[40]。比較的病初期から取りくんだ活動性は進行期にもルーチンとして保たれる場合が多く、福祉サービスの利用時に役立つ場合も少なくない<ref name=Tanabe1999><pubmed>10436341</pubmed></ref><ref name=小森憲治郎2018>小森憲治郎、柴 球美、谷向 知。原発性進行性失語のケア. 日本認知症ケア学会誌。 2018; 17: 546−553.</ref>[41][42]。SD例が好む個別の活動では、ジグソーパズルや数独などがあげられ、特異な方法で高い習熟を示す<ref name=Green2009><pubmed>19014960</pubmed></ref>[43]。塗り絵などにも熱心な関心を示す例があり、言語機能が衰退した進行期にも、新たな創造性発現の可能性を秘めている<ref name=小森憲治郎2019 /><ref name=Green2009><pubmed>19014960</pubmed></ref>[16][44]。 | ||
SDは平成27年から指定難病の一つとなり、65歳未満の発症で重症度分類が3以上であるといった条件を満たした場合に医療助成が受けられるようになった。 | SDは平成27年から指定難病の一つとなり、65歳未満の発症で重症度分類が3以上であるといった条件を満たした場合に医療助成が受けられるようになった。 | ||
SDの生命予後に関しては、平均死亡時年齢が69.7±5。8歳、50%生存期間は12.8年であったとの報告がある<ref name=Hodges2010></ref>[35]。 | |||
== 疫学 == | == 疫学 == | ||
臨床診断SD100例の検討では、男女比は6:4、平均発症年齢が60.3±7.01歳、平均診断時年齢が64.24±7. | 臨床診断SD100例の検討では、男女比は6:4、平均発症年齢が60.3±7.01歳、平均診断時年齢が64.24±7.1歳、平均施設入所時年齢が66.9±6.5歳であったとの報告がある<ref name=Hodges2010></ref> [35]。発症年齢については46%が65歳以上で診断され、7例は75歳以上で診断されていたとされる<ref name=Hodges2010></ref>[35]。ただし、SDの代表的な病理であるFTLD-TDPの本邦の剖検シリーズの検討では、88.9%が65歳未満で発症しているため<ref name=横田修2015></ref>[26]、高齢発症のSDではFTLD-TDP以外の病理背景の頻度が高い可能性がある。萎縮の左右差がSDでは認められやすく、左優位萎縮例:右優位萎縮例が70:24であったとの報告があるが<ref name=Hodges2010></ref>[35]、右優位例が多いシリーズの報告もある<ref name=Miki2016><pubmed>26969837</pubmed></ref>[45]。左優位萎縮例では失語を呈しやすいので脳神経内科を受診しやすく、右優位例は精神症状や行動異常が目立つ傾向があるため<ref name=Hodges2010></ref>[35]、精神科を受診しやすいといった施設バイアスが生じやすいと推測され、左右差のデータの解釈には注意を要する<ref name=Ikeda2004><pubmed>15178933</pubmed></ref>[11]。 | ||
欧米ではFTLDについて家族歴ある例が多く10~60%と高い頻度が報告される<ref name=Miki2016><pubmed>26969837</pubmed></ref>[46]。SD100連続例において2~7%の家族歴が推定されている<ref name=Hodges2010 / > [35]。一方、日本ではFTLDの家族例は極めて稀である<ref name=Ikeda2004><pubmed>15178933</pubmed></ref>[47]。 | 欧米ではFTLDについて家族歴ある例が多く10~60%と高い頻度が報告される<ref name=Miki2016><pubmed>26969837</pubmed></ref>[46]。SD100連続例において2~7%の家族歴が推定されている<ref name=Hodges2010></ref>[35]。一方、日本ではFTLDの家族例は極めて稀である<ref name=Ikeda2004><pubmed>15178933</pubmed></ref>[47]。 | ||
== 関連項目 == | == 関連項目 == |