「限局性恐怖症」の版間の差分

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 一方、臨床的に治療として用いられる[[認知行動療法]]の一技法である[[曝露療法]]([[exposure therapy]])は、恐怖条件づけが獲得された後でも、条件刺激が毎回のように繰り返し提示され続け、同時にUSが提示されることが全くなければ、恐怖の消去(fear extinction)が起こることを利用している。脳生理学的には、人を含む動物が恐怖を感じる際、重要な役割を担うのは[[扁桃体]]であり<ref name=Knight2004><pubmed>15535167</pubmed></ref>、音のようなきっかけとなる刺激に対する恐怖記憶(cued fear)は、扁桃体に依存する。一方、場所(文脈)に対する恐怖記憶(contextual fear)は、[[海馬]]に依存する。また、[[ネコ]]の[[視床下部]]の電気刺激によって攻撃と逃走を誘発することができることから、視床下部が本能的な攻撃行動につながる怒りや逃走行動につながる不安・恐怖と関係していることも知られている。
 一方、臨床的に治療として用いられる[[認知行動療法]]の一技法である[[曝露療法]]([[exposure therapy]])は、恐怖条件づけが獲得された後でも、条件刺激が毎回のように繰り返し提示され続け、同時にUSが提示されることが全くなければ、恐怖の消去(fear extinction)が起こることを利用している。脳生理学的には、人を含む動物が恐怖を感じる際、重要な役割を担うのは[[扁桃体]]であり<ref name=Knight2004><pubmed>15535167</pubmed></ref>、音のようなきっかけとなる刺激に対する恐怖記憶(cued fear)は、扁桃体に依存する。一方、場所(文脈)に対する恐怖記憶(contextual fear)は、[[海馬]]に依存する。また、[[ネコ]]の[[視床下部]]の電気刺激によって攻撃と逃走を誘発することができることから、視床下部が本能的な攻撃行動につながる怒りや逃走行動につながる不安・恐怖と関係していることも知られている。


 限局性恐怖症の対象となる恐怖はまた、生得的な(生まれながらに備わっている)ものと、経験(学習)によるものがあるとされる<ref name=Garcia2017><pubmed>28814472</pubmed></ref>。神経生物学的には、生得的な病的恐怖の持続のメカニズムについては、[[ノルエピネフリン]]の[[]]作([[鋭敏化]])が[[GABA]]作動性抑制を減少させ、扁桃体の活動[[閾値]]の減少と過剰な興奮性を引きおこすことに加え、恐怖の持続に扁桃体の馴化の減少が関与しているとされる。また、経験による病的恐怖の持続のメカニズムについては、[[グルココルチコイド]]によって引き起こされる扁桃体の[[メタ可塑性]](metaplasticity, 過剰あるいは抑制された[[長期増強]]を引き起こす、神経細胞集団のシナプス可塑性閾値の動的制御)による恐怖獲得が促進されることに加え、恐怖の持続に扁桃体の消去獲得の微小回路における[[セロトニン]]神経系と[[エンドカンナビノイド]]システムの異常が関与しているとされる。
 限局性恐怖症の対象となる恐怖はまた、生得的な(生まれながらに備わっている)ものと、経験(学習)によるものがあるとされる<ref name=Garcia2017><pubmed>28814472</pubmed></ref>。神経生物学的には、生得的な病的恐怖の持続のメカニズムについては、[[ノルエピネフリン]]の[[感作]][[鋭敏化]])が[[GABA]]作動性抑制を減少させ、扁桃体の活動[[閾値]]の減少と過剰な興奮性を引きおこすことに加え、恐怖の持続に扁桃体の馴化の減少が関与しているとされる。また、経験による病的恐怖の持続のメカニズムについては、[[グルココルチコイド]]によって引き起こされる扁桃体の[[メタ可塑性]](metaplasticity, 過剰あるいは抑制された[[長期増強]]を引き起こす、神経細胞集団のシナプス可塑性閾値の動的制御)による恐怖獲得が促進されることに加え、恐怖の持続に扁桃体の消去獲得の微小回路における[[セロトニン]]神経系と[[エンドカンナビノイド]]システムの異常が関与しているとされる。


== 治療 ==
== 治療 ==

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