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(ページの作成:「 人見 健文 京都大学大学院医学研究科臨床神経学 (脳神経内科) 京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学 (検査部)…」) |
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=== 皮質性ミオクローヌス === | === 皮質性ミオクローヌス === | ||
各種抗てんかん薬が有効で、多剤併用療法がより効果的である。クロナゼパムやバルプロ酸が広く使用されている。抗てんかん薬のプリミドン、ゾニサミド、新規抗てんかん薬としてはレベチラセタムや抗ミオクローヌス薬であるピラセタムも皮質性ミオクローヌスに有効である。また新規抗てんかん薬であるペランパネルもてんかんおよびも皮質性ミオクローヌスに有効であることが最近報告された<ref name=Oi2019><pubmed>31401489</pubmed></ref>13)。なお持続性部分てんかんと考えられる場合にはてんかん重積状態として治療を行う。 | |||
皮質下性ミオクローヌス | 抗てんかん薬のフェニトインは皮質性ミオクローヌスに有効だが、長期的には進行性ミオクローヌスてんかんの1つであるウンフェルリヒト・ルンドボルグ病において平均寿命を短縮し認知機能低下を来たすことが報告されており長期使用には慎重を要する<ref name=Eldridge1983><pubmed>6137660</pubmed></ref>14)。カルバマゼピンも一般に皮質性ミオクローヌス有効だが、増悪例も報告されている。ガバペンチンもBAFMEの増悪例が報告されている<ref name=Striano2007><pubmed>17645541</pubmed></ref>15)。 | ||
=== 皮質下性ミオクローヌス === | |||
クロナゼパム、バルプロ酸、ピラセタム、プリミドンなどの有効性も一部の皮質下性ミオクローヌスで報告されている. | クロナゼパム、バルプロ酸、ピラセタム、プリミドンなどの有効性も一部の皮質下性ミオクローヌスで報告されている. | ||
=== 脊髄性ミオクローヌス === | |||
クロナゼパム、カルバマゼピン、バクロフェンなどが有効である.一般に原疾患の治療が基本となる. | クロナゼパム、カルバマゼピン、バクロフェンなどが有効である.一般に原疾患の治療が基本となる. | ||
病態生理 | == 病態生理 == | ||
ミオクローヌスの分類には、病態生理による分類が比較的よく用いられる(表4)。大脳皮質の異常によるものは皮質性ミオクローヌス、基底核や脳幹部などの異常によるものを皮質下性ミオクローヌス、脊髄由来のものを脊髄性ミオクローヌスと分類する。実際には,皮質性ミオクローヌスと皮質下性ミオクローヌスは共存することが多い。また,器質性の疾患を伴わない心因性ミオクローヌスも存在する<ref name=Terada1995><pubmed>7608681</pubmed></ref>16). | ミオクローヌスの分類には、病態生理による分類が比較的よく用いられる(表4)。大脳皮質の異常によるものは皮質性ミオクローヌス、基底核や脳幹部などの異常によるものを皮質下性ミオクローヌス、脊髄由来のものを脊髄性ミオクローヌスと分類する。実際には,皮質性ミオクローヌスと皮質下性ミオクローヌスは共存することが多い。また,器質性の疾患を伴わない心因性ミオクローヌスも存在する<ref name=Terada1995><pubmed>7608681</pubmed></ref>16). | ||
=== 皮質性ミオクローヌス === | |||
大脳皮質一次感覚運動野の神経細胞の異常により生じる。非常に持続時間の短い不規則な筋収縮で、姿勢時や運動時に出現しやすく,しばしば刺激過敏性を認める。“てんかん性ミオクローヌス”と病態生理的に考えられ、てんかん発作をともなうものも多い。 | |||
皮質性ミオクローヌスはさらに3種類の亜型に分類される。刺激過敏性があり、体性感覚、聴覚、視覚刺激などで誘発される場合は皮質反射性ミオクローヌス、刺激に無関係に自発的に生じているものを自発性皮質性ミオクローヌス、自発性であっても身体の一部に限局し、持続性にミオクローヌスが生じている場合には持続性部分てんかんと分類している。皮質性ミオクローヌスをきたす疾患としては、進行性ミオクローヌスてんかん、BAFME、Creutzfeldt-Jakob病、無酸素脳症後のミオクローヌス(Lance-Adams症候群)、皮質基底核変性症などの各種変性疾患、各種代謝性脳症などがある(表2)。このうちCreutzfeldt-Jakob病、Lance-Adams症候群などでは皮質下性ミオクローヌスも呈する。 | |||
=== 皮質下性ミオクローヌス === | |||
大脳皮質より下位、脊髄より上位の中枢神経系の異常により生じる。刺激過敏性が有るものも無いものも存在する。安静時に多く、時に規則的、周期的に認める。皮質下性ミオクローヌスのなかで、病態が比較的明らかなものとしては、脳幹部起源で刺激に誘発されるものとして、網様体反射性ミオクローヌスがある。しかし,皮質下性ミオクローヌスには病態不明なものが多く、その概念は整理されているとはいいがたい。皮質下性ミオクローヌスをきたす疾患としては、Creutzfeldt-Jakob病、亜急性硬化性全脳炎、Lance-Adams症候群、脳幹梗塞などがある。 | |||
=== 脊髄性ミオクローヌス === | |||
脊髄の異常により生じる。刺激過敏性は認めないことが多い。脊髄の分節に一致して生じ、周期性が存在することが多い。脊髄性ミオクローヌスは、炎症、腫瘍、外傷などの各種の脊髄病変で認められる。 | |||
=== 心因性ミオクローヌス === | |||
ミオクローヌスと同様の不随意運動は心因性にも生じる.器質的疾患が除外された際には,心因性ミオクローヌスを考慮する必要がある。 | |||
== 疫学 == | |||
ミオクローヌスの頻度に関する研究はその原因の多様性によるためかほとんどないのが現状である。米国の特定地域における持続する病的なミオクローヌスの生涯発症率は、人口10万人あたり8.6人という報告がある<ref name=Caviness1999><pubmed>10377930</pubmed></ref>17)が、過小評価である可能性がある。また本邦で報告されている高齢者の一過性羽ばたき振戦ミオクローヌスなど一過性のミオクローヌスを来たす病態<ref name=Hitomi2011><pubmed>22001455</pubmed></ref>18)も含めると、脳神経疾患を扱う施設においては比較的遭遇することの多い不随意運動と考えられる。 | |||
参考文献 | == 参考文献 == | ||
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